初陣②
セシル達、魔法兵団、特別遊撃隊に続き歴戦のソルジャーから成る実戦部隊もリバットとジュランテルに向けて次々と出撃して行った。
「くそ……俺達はまだ待機か」
ジョシュアが兵舎の壁を叩きながら悔しそうに呟く。
「まぁ、そんな焦んなって。俺達は新兵器開発が主な任務なんだ。そうそう前線に行く事なんてないんだから。そのうちお前も初陣が来るさ」
マーカスが近付き声をかけるが、ジョシュアはそれでも尚、歯噛みし苦い顔を見せていた。
――
同時刻。
セントラルボーデン首都にある屋敷では政治家達によるパーティーが開催されていた。
百人にも及ぶパーティーを二階の吹き抜け部からシャーンが見下ろしながらため息を漏らす。
「ふぅ、本当についてないな」
「どうしました?少尉」
横にいた警備兵が尋ねると、シャーンは苦笑を浮かべながら話し出す。
「新兵器開発よりもこっちの警備の方が出世に繋がると思って立候補したら、そんな時に限ってテロが起きやがった。ここの警備がなければ、俺は今頃戦地で手柄をあげてたかもしれないんだ。愚痴ぐらいこぼれるさ」
実際テロの一報が入った時、シャーンはすぐに手を挙げた。
しかし政治家達の警備を疎かには出来ないとし、シャーンの申し出は却下されたのだ。
シャーンが愚痴をこぼしている中、パーティー会場の外に数台の車が荒っぽく停車する。
入口にいた警備兵が怪訝な表情で見つめる中、車から十数人の男達が降りてくる。
男達は全員が黒いスーツに黒のネクタイという特異な出で立ちだった。先頭を歩く大柄な男はサングラスをかけ、嘲るような笑みを浮かべている。
男達が入口に近付くと、警備兵はすぐに行く手を遮るように立ちはだかった。
「失礼ですが、何用でしょう。招待状はお持ちですか?」
「なんだ、遠路はるばるやって来たのに入れてくれねぇのかよ?わざわざ正装までしてきたんだぜ」
先頭の男が笑いながら言うと、警備兵も冷笑を浮かべる。
「正装?失礼ながら、その身なりはまるで葬式のようでは――」
警備兵がそこまで言った瞬間、彼の胸を男の右腕が貫いた。
己の胸を貫いた男の腕を掴み、警備兵は男の顔を見上げ声にならない声をあげながら事切れる。
近くにいた警備兵も虚をつかれ、一瞬動きが遅れてしまう。
そしてその一瞬が命取りとなってしまった。
周囲の警備兵も瞬時に他の男達によって首を跳ねられ、胸を裂かれて地面に転がった。
「はっはっは、これから人が沢山死ぬんだ。これほど合った正装はないだろうが」
先頭に立つ男は警備兵の胸から腕を引き抜くと、力なく倒れる警備兵を掴み投げ捨てた。
男はそのまま入口の扉を蹴破ると、控えていた男達が一気に会場へとなだれ込む。
ざわめきが広がり、ただならぬ雰囲気が漂う中、大柄な男が声を張り上げる。
「レディース、アーンドジェントルマン。パーティーを楽しんでるお前達に自己紹介しとくぜ。俺はガルフ・シュタット。お前達に消された男だ。お前達には礎になってもらうぜ」
ガルフの宣言と同時に男達が会場内いた人々を襲い始める。
会場内は次々と血の海に染まり、阿鼻叫喚が響き渡る。
警備についていた兵士達も応戦を始めると、会場内はさながら戦場のように血と硝煙の匂いが鼻につき、叫びと銃声がこだましていた。




