邂逅
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フェリクス達はラングレーの基地を後にし、敵集結予測地点とされた場所を次々と偵察していた。
「また空振りか……これで三つ目」
車両に揺られながらガルシアが顔をしかめて呟く。
「まぁ仕方ない。向こうも警戒してるだろうから、そう簡単には見つからんだろ」
笑ってフェリクスがそう語りかけた時だった。
運転していたキャスパーが叫ぶ。
「掴まって下さい!敵だ!」
キャスパーが叫ぶとほぼ同時に銃弾と氷の礫が車両を襲う。
激しく揺れる車内で、フェリクス達は必死に体勢を整える。
「敵は!?」
「三時方向、森の中から攻撃を受けてます」
フェリクスの問いにキャスパーが即座に答える。
「車両を盾にして、反対から脱出!総員退避だ」
フェリクスが声を張り上げると、隊員達は次々と車両から脱出していく。
最後に運転していたキャスパーが飛び出して来ると、全員が岩陰に身を隠した。
「まずいです。敵はこちらが岩陰に入ったのは見えてたはず。逆にこちらは敵の数も位置も把握出来てません」
ガルシアが汗を拭いながら報告すると、フェリクスはむしろ笑みを浮かべた。
「最近はリオの索敵に頼ってばかりだったからツケがきたな。まぁ本来はこんなもんだ……俺が飛び出す。お前達は敵が何処から攻撃してくるか観察し、攻撃に移れ」
「いや、ちょっと待って下さい。少佐を囮にしたなんてばれたらヴェルザード大尉に殺されます!」
キャスパーが慌ててフェリクスを止めようとしたが、フェリクスは既に岩陰から飛び出していた。
「ばれなきゃいいんだよ」
そう言ってフェリクスはバトルスーツで顔まで覆うと、生い茂る森の中へと突入して行った。
「何?向かって来ただと?」
森に潜伏していたセントラルボーデン兵が驚きの声を上げるが、フェリクスは既に眼前まで迫り、剣を振り上げていた。
「残念だが、そういう事だ」
フェリクスが冷たく言い放ち剣を振り下ろす。
だが振り下ろした剣は高い金属音を響かせ弾かれた。
「この男は私が。貴方は引きなさい」
剣を構えたクリスがセントラルボーデン兵に言うと、兵士は即座に森の闇へと姿を消した。
「黒い死神……まさかこんな所で出会うなんて」
クリスは薄い笑みを浮かべて腰を落とす。
左手に剣を構え、右手は腰にある銃のホルダーに添え、その凛とした大きな瞳でじっとフェリクスを睨んでいた。
栗色の長い髪を風になびかせ、微かに笑みを浮かべて立つ姿は美しく、戦場にはやや似つかわしくないようにも思えた。
フェリクスも剣を握り締めるとやや腰を落とし、半身になり構える。
「こんな美人に知っててもらえるのは嬉しいが、戦場なのが残念だ」
フェリクスが言い終わる頃に、クリスは間合いを詰め剣を振り抜く。
だがフェリクスはクリスの剣を自身の剣で簡単に受けると、振り払う様に剣を薙いだ。
振り払われたクリスだったが、ひらりと着地すると即座に横に飛び銃を構えた。
距離を詰めようと次はフェリクスが飛びかかる。
クリスは構えた銃の引き金を引きながら、距離を取る様に後ろに飛び退いて行く。
それを追うフェリクス。
しかし離れた所から聞こえる銃声を聞き、フェリクスが足を止めた。
「ちっ、はまったか?」
舌打ちするフェリクスに対し、クリスはニヤリと口角を上げた。
「あら気付いた?貴方とお仲間分断させてもらったわよ」
「あまり女性に夢中になるもんじゃないな」
軽口を叩きながらフェリクスは周りに気を向ける。
なんだ?待ち伏せじゃないのか――?
他の気配を感じずに、フェリクスが困惑しているとクリスが笑う。
「ふふ、申し訳ないけど何もお出迎えの準備は出来てないの。残念だけど、ここからは貴方と私、一対一で正々堂々といきましょう。私みたいな美人と二人きりなんて嬉しいでしょ?」
「ああ、泣きそうなぐらいだな」
二人、ゆっくりと構えると、風もおさまり不気味な程静寂が訪れる。




