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動き出す運命④


 隊員達が街に繰り出して行く中、フェリクスは一人基地内に用意された部屋に入ると軍本部へと連絡を入れる。


「――将軍。先程ラングレーには到着しました。その前に少し襲撃を受けたのですが、その時クリスタルを使い、結果を出す事は出来ました」


「おお、本当か?素晴らしい」


 フェリクスの報告を受け、将軍が喜びの声を上げるが、フェリクスは静かに続ける。


「クリスタルのおかげで魔法は使用できました。しかし、不可解な現象も起きました。突然意識が別の所に持っていかれたというか、突然誰かの記憶か意識が割り込んできたんです。あのクリスタルは何なんですか?」


 冷静な口調で問いかけるフェリクスだったが、将軍は暫く無言になり、そしてゆっくりと口を開く。


「……なるほど。初めての症例だ。そのクリスタルはこっちでも何人かが試したのだが、誰一人として使える者はいなかった。ただウィザードの中にはそのクリスタルを見ただけで嫌悪感を示す者もいたのだ」


「そんな不気味な物、寄越さないで下さいよ」


 フェリクスが少し笑って言うと、通信機の向こうでも将軍が笑ったような気がした。


「すまんな。しかし貴様が開発しているバトルスーツは脳波を読み込む物だ。ひょっとしたらそのクリスタルも上手く解析して宿った魔力を使えるのではないかと思ってな」


「なるほど。ひとまずもう少し試行錯誤しながら様子を見ます」


「ああ、頼んだ」


 通信を終え、クリスタルを内蔵させたバトルスーツに目を移す。


 なんだったんだあれは?魔法が使えたのはいいが、妙な高揚感もあった。魔法を使うとウィザードもあんな感じになるのか――?


 静かに横たわるバトルスーツを見つめフェリクスは大きく息をついた。


――

 三日後。

 

 フェリクス達がラングレーに到着して既に三日が経つが、それでも依然としてフェリクス達には何の命令もなく、ただ待機が命じられているだけだった。


「ヴェルザード、セントラルボーデン軍の動きは?」


「はい。どうやら奪還作戦は本当のようです。大規模な部隊の動きも確認されています」


 ヴェルザードの報告を受け、フェリクスは思慮を巡らせる。


 セントラルボーデンが各地から集結して来ているのはもはや間違いない。マーベリック大佐は作戦があるとは言うが――。


 フェリクスは小さく息を吐くと静かに歩き出した。

 その背後をヴェルザードが着いて歩いて行く。


「少佐どちらへ?」


「マーベリック大佐の所だ。セントラルボーデンの攻撃から受け身になるのは性にあわない」


 そう言ってマーベリック大佐の部屋の前に立つと、強めのノックをする。

 すると相変わらず抑揚のない声が返ってきた。


「誰だ?」


「フェリクスです」


「……入れ」


 一礼して部屋に入ると、フェリクスはマーベリックの前に立つ。


「マーベリック大佐。セントラルボーデン軍がこのラングレーに攻撃を仕掛けるのは間違いありません」


「ああ、そのようだな。だが秘策がある。お前達は余計な事をするな」


 冷たく言い放つマーベリックだったが、フェリクスは引かずに食い下がる。

 

「しかし我々はラングレーを守れと命令されて来てます。せめて偵察ぐらいには出撃させてもらいたいのですが?」


 フェリクスの言葉を聞いたマーベリックは口端を僅かに上げ、蔑むような笑みを見せた。


「偵察?ああかまわんよ。君達は独立機動隊だ。軍からも自由を許された部隊。偵察でも特攻でも好きにするがいい」


 嘲笑するようなマーベリックにフェリクスは一礼すると踵を返した。


「では偵察に向かいます。失礼しました」


 部屋を出た所でヴェルザードが歩み寄る。


「少佐。あまり言いたくはありませんが、自分はあの人――」


 ヴェルザードがそこまで言いかけた時、フェリクスが遮る。


「みなまで言うな。たぶん誰もが同じ意見だ。それより隊を集めろ」


「はい!」


 ヴェルザードがすぐに部隊を集めると、フェリクスは皆の前に立つ。


「今から俺は偵察に出る。ガルシア、ジェーン、キャスパー、ブレイド着いて来い。残りは暫くここで待機だ」


 フェリクスが全員に告げるとリオが詰め寄る。


「ちょっと少佐、あたいも連れてってくれよ。偵察ならあたいの鷹の目(ビジョンズ)が最適だろ?」


 必死に詰め寄るリオにフェリクスは柔らかな笑みを向ける。

 確かに広範囲が見渡せる鷹の目(ビジョンズ)は偵察にうってつけだった。

 しかしフェリクスはリオの肩に軽く手を添え、静かに語りかける。


「確かにそうだが、リオには別に頼みたい事がある」


 そう言ってリオの耳元で囁いた。


「――本当にか?」


「ああ頼む。残ってヴェルザードと協力してくれ」


 フェリクスが笑みを浮かべて頼むと、リオは眉根を寄せて静かに佇むヴェルザードに視線を向けた。


「まじか……」


 憂鬱な顔をして呟いたリオを見つめフェリクスは笑顔でリオの肩を軽く叩いた。


――

 ラングレーから離れたジャングルをセントラルボーデンの小隊が歩いていた。


「街での戦闘は出来れば避けたいですね」


 女性兵士が小さく呟く。


「それはラフィンの奴ら次第だろうな。しかしラングレーにはあの黒い死神が到着したとも聞いている。腕がなるんじゃないかクリス少尉?」


 先頭を歩く隊長らしき男が問いかける。クリスは背中まで伸びるまっすぐな栗色の髪をなびかせて首を振った。


「ひとを戦闘狂みたいに言わないで下さい。私はただ戦争を早く終わらせたいだけです」


 凛とした瞳でまっすぐ見つめるクリスの言葉を聞いても男はただ笑っていた。

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