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動き出す運命③


 大破した車両は諦め、隊員を二台に振り分けたフェリクス達は予定より少し遅れたがラングレーに無事到着する事が出来た。

 これまで転戦してきた前線の荒廃した街とは違い、建物も道路も綺麗に区画された大きな地方都市。

 街には人々が行き交い、笑顔も見える。穏やかな雰囲気が街を包んでいた。


「ようやく着いたか。さっきの戦闘で死傷者が出なかったのは救いだな」


 フェリクスが車両を降りるなり、横にいたヴェルザードに話しかける。

 

「はい、本当にその通りです」


 ヴェルザードは相変わらず静かに頷いていた。

 そこにエルザが笑顔で割り込む。


「少佐、さっきの戦闘だけじゃなくて、リオが加わってからのこの二ヶ月、戦死者ゼロですよ。リオの鷹の目(ビジョンズ)って本当に凄いですよね」


「確かにそうだな。リオには特別報酬でも出すか」


 フェリクスが笑うとエルザも笑みを浮かべて頷いていた。

 実際最前戦等を転戦していたフェリクス達がこれだけ戦死者を出さないのは異常でもあり、ここまで戦ってこれたのはリオの鷹の目(ビジョンズ)の功績が大きかった。


「まぁ確かにそれぐらいの働きはしていますかね」


 傍らに立つヴェルザードが静かに言って頷くと、フェリクスは笑みを浮かべた。


「なんだ、ようやく認める気になったか?」


 少し意地が悪いように問いかけるが、ヴェルザードは表情を変える事なく遠くにいるリオを見つめた。


「自分はリオの力は本物であると、初めから言ってます。ただ彼女の性格や言動、生い立ちに問題が――」


 そこでフェリクスはヴェルザードの肩に軽く手を乗せる。


「言いたい事はわかるが生い立ちは言ってやるな。そこは彼女の責任じゃない」


「失礼しました」


 ヴェルザードが敬礼をして謝罪すると、フェリクスは静かに頷き歩き出す。


「ひとまずここの司令官に挨拶に行こうか」


「はい、マーベリック大佐が司令室でお待ちのようです」


 ヴェルザードを連れてフェリクスはエレベーターに乗り込み、司令室へと向かう。


 司令室を前にし、フェリクスが扉をノックすると中から静かな声が返ってくる。


「誰だ?」


「フェリクス・シーガー少佐です」


「……ああ、少佐か。入ってくれ」


 まるで感情がないような落ち着いた口調に少し違和感も感じながらフェリクスとヴェルザードは中に入る。


 室内に入ると正面に座るマーベリックと目が合う。

 フェリクスはすぐに背筋を伸ばし敬礼をする。


「フェリクス・シーガー以下第十四独立機動隊、只今到着しました」


 フェリクスの報告をマーベリックは椅子に座り、前にある机に肘をつきながら静かに聞いていた。


「ふむ、ご苦労少佐。疲れたろう、ひとまずゆっくり休め」


 思いもよらない言葉にフェリクスは一瞬戸惑う。

 目の前のマーベリックは丁寧な口調ではあるが、値踏みするような視線を向けてくる。

 そして労う言葉も空虚で、まるで関心がなく、むしろ相手にされていないような雰囲気さえ感じた。


「ありがとうございます。しかしこの基地に向けてセントラルボーデンの大規模な奪還作戦があるような話もあります。我々はどのように動けばよろしいでしょうか?」


「……作戦はある。貴様らは休んでおればいい。必要があれば声をかける」


 そう言うとマーベリックはフェリクス達を放置し机にあるパソコンを触りだした。

 フェリクス達は仕方なく部屋を後にするとゆっくりと歩き出す。


「少佐、マーベリック大佐の言う作戦とはなんなんでしょう?」


 横を歩きながらヴェルザードが問いかけるが、フェリクスは苦笑するしかなかった。


「わからん。聞いた所で答えてくれる雰囲気じゃなかっただろ?仕方ない。休めと言われたんだ、ゆっくり休ませてもらおう。あいつらも疲れてるだろう」


「そうですね。喜ぶと思います。何人かはこの街に来れる事を楽しみにしてる者もいましたが」


 そう言って顔をしかめるヴェルザードだったがフェリクスが彼の肩を軽く叩く。


「まぁいいだろ。ずっと荒れた街ばかりだったんだ。大きな地方都市でたまにはあいつらにも息抜きをしてもらおう」


 そう言って二人は隊員達の元へと急いだ。


 フェリクスから休みを言い渡された第十四独立機動隊の隊員達は喜び街に繰り出して行く者もいた。

 フェリクスはそんな光景を見つめる。そして踵を返し傍らに立つヴェルザードに静かに語りかける。


「お前も休めよヴェルザード」


「はい、ありがとうございます」


 フェリクスは柔らかな笑みを浮かべ、一人基地内へと戻って行く。


 激しく凄惨な戦いが続く中、ひと時の安らぐ時間が訪れる。

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