動き出す運命②
一夜明け、フェリクス達はラングレーに向けて車を走らせていた。
「順調に行けばあと一時間程ですかね」
ヴェルザードが静かに問いかけるとフェリクスも頷いていた。
そんな時、リオが突然叫んだ。
「まずい!待ち伏せだ!」
「……!?回避運動!」
フェリクスが叫ぶと連なっていた三台の車両は散開し岩陰へと入る。
その直後、風を切り裂き、先頭を走っていた車両の後方にロケット弾が炸裂する。
耳をつんざくような轟音が鳴り響き、爆風と共に砂塵が舞う。
車両が吹き飛び横転するが、中に人影は見当たらなかった。
「状況は?」
フェリクスが声を張り上げて尋ねる。
「乗っていたジェーン達は全員間一髪逃げられたみたいだ。だけど敵は迫って来てる。そろそろ魔法の射程に入るぜ」
リオが鷹の目を使い伝え終わる頃にはフェリクスは車両を飛び出していた。
「ヴェルザード、前の車両で負傷した者を回収したらリオを連れて後方に下がれ!俺が敵の足を止める。全員態勢を整えろ」
「いい加減あたいも前線につかせろって!」
叫ぶリオをエルザが抱きとめていた。
リオの叫びを無線から聞きながらフェリクスは速力を上げる。
今や隊にとって欠かせない存在のお前をわざわざ危険にさらす訳ないだろ――。
フェリクスは内心思いながら笑みを浮かべる。
次の瞬間、砂埃を上げ、地を裂くように三筋の疾風がフェリクスに迫る。
フェリクスは横に飛び跳ねて躱すが、次の瞬間、銃声が鳴り響いた。
フェリクスが顔を上げると弾丸と火球までもが眼前に迫っていた。
「ちっ!」
思わず舌打ちすると、銃弾が耳元を掠める。フェリクスは転がりながら迫るそれらを躱すとそのまま岩陰に転がり込んだ。
「ちょっと突っ込み過ぎたか?」
フェリクスが自虐的に呟き薄い笑みを浮かべる。
すると耳に着けたインカムからリオの声が響いた。
「だから先行し過ぎだって。敵は五、六人で一つの小隊になり三つに別れてる。そのうちの一つが今少佐の元に行こうとしたジェーン達と交戦になってる」
「て事は俺が一人で二小隊相手にする訳か。リオ敵の位置を教えろ」
フェリクスの指示にリオは言葉を詰まらせる。
「は?一人で二小隊はいくらなんでも無茶だって。援護行くまで待って――」
「無茶は承知。それに例のクリスタルここで試しておきたい。リオ早く」
「くそっ」
フェリクスの無茶は止めたいリオだったが、これ以上の押し問答は逆にフェリクスを危険にさらす事にもなりかねないと思い、鷹の目を使い索敵する。
「……少佐から二時方向に五人。少佐の動き出しを狙ってやがる。更に六人が少佐の左九時方向に回り込んでるよ。奴らは仕掛けてくる気だ」
「だったらそっちからだな。距離は?」
「五十!更に詰めて来てる」
フェリクスは岩陰から飛び出し、左からの敵に向かう。
自分達はフェリクスの死角に回り込んだと思い込んでいた敵兵達は、向かって来るフェリクスに驚き一瞬対応が遅れた。
その一瞬の遅れが戦場では命取りとなる。銃声が響くと先頭にいた兵はフェリクスが放った銃弾に撃ち抜かれ地面に倒れた。
慌てて銃を構える兵士にフェリクスは地を蹴り距離を詰めると容赦なく剣を振り抜く。
両断された兵は叫ぶ間もなく地に落ちた。
態勢を整え、剣を握り銃を構える兵士達だったが、フェリクスの速さについてこれず、瞬く間に三人が地に伏せた。
「くそ、化け物が!」
残った一人が火球を繰り出す。フェリクスは剣を構えて相手の懐に飛び込もうとした時、インカムからリオが叫び声が聞こえた。
「少佐、後ろから来る!横に飛んで!」
リオの声を聞き、確認する事もなく横に飛び退くと、直後銃声が鳴り響き、銃弾と風の刃がフェリクスが元いた場所に降り注いだ。
逃げ遅れた敵兵は味方からの銃弾と魔法を受け、無惨な姿となり転がる。
「くそっ、しくじったぞ!」
「一気に詰めろ」
もう一つの小隊が一気に迫る。
だがフェリクスは一瞬目を閉じ、集中を高めた。
ぶっつけでやれるか?いや、やるしかないか――。
フェリクスが自分に言い聞かせ、右手を掲げると青白い三つの光球が現れる。
それを見た敵兵達が一瞬戸惑う。
「何?魔法だと?」
「そんな?奴はソルジャーのはず」
「最近ウィザードも始めてな『光熱矢』」
光球は放たれ、光の矢となり敵を捉える。
その鋭さに敵は防御も出来ず撃ち抜かれ、一瞬にして三人が地に伏せた。
「馬鹿な?」
驚く敵にフェリクスが一気に詰め寄ろうと踏み出す。
「馬鹿はお前だ、動きが止まってるぜ」
だがその瞬間、突然フェリクスの脳裏に別の光景がよぎる。
――
荒廃した街で目の前に対峙する兵士達。街のあちこちからは煙が上がり、炎が上がっていた。
飛びかかって来る兵士達だったが炎を灯した腕で薙ぎ払うと、兵士達は炎に飲まれ倒れる。
「くくく……」
笑いが込み上げ片手を掲げると巨大な光球が現れる。
その光球を放つと、街は巨大な爆発に巻き込まれた。人々は吹き飛ばされ、泣き叫んでいた。
――
次の瞬間、体に衝撃を受け、気が付くと地面に倒れ込んでいた。
「少佐!おい、しっかりしろ!」
目の前ではリオが必死に叫んでいた。
どうやらリオに引き倒された事は理解した。
「リオ?なんだ?どうした?」
訳がわからず問いかけるが、リオも困惑したように首を傾げる。
「こっちが聞きたいって。あたいが鷹の目で見てた時、少佐が敵を追い詰めたと思ったら突然止まって。敵は少佐にびびって逃げ出してたから良かったようなもんだけど。おかしいと思ったから今駆けつけのに、あんたはそれさえもわかってなかったんだろ?」
リオの説明を聞いても、フェリクスは何が起こったのか理解出来なかった。
「ジェーン達は?敵はどうなった?」
「ジェーン達は敵を退けたよ。少佐が打ち漏らした奴らだけが敗走して行った」
「……そうか。ひとまず全員一箇所に纏まろうか」
不可解な現象に襲われたが、フェリクス達は危機を脱する事が出来た。




