新たな門出
「――まぁそういう事で、今日からリオが民兵として正式に仲間に加わってくれる。リオから何かあるか?」
フェリクスがリオに視線を向けるとリオは苦笑いを浮かべ、一歩前に出る。
「自己紹介なんか別に大丈夫だよな?あたいの力も皆わかってると思うから、ひとまずよろしく」
短い挨拶を終え、軽く頭を下げると隊員達からは拍手が巻き起こる。
「じゃあエルザ、リオの世話頼めるか?」
フェリクスがエルザに問いかけると、エルザは満面の笑みで返す。
「はい、了解しました。リオよろしく。じゃあとりあえず服もう一着ぐらいは用意しなきゃね」
エルザがリオの手を引き歩き出すと、すぐにジェーンが後ろから声をかけた。
「私の服でよかったら譲ろうか?エルザより私の方が身長は近いだろ」
「確かにジェーンの方が近いね」
エルザも笑って返す。
リオ程ではないが、確かにジェーンも平均よりは背も高く、小柄なエルザに比べれば体型はリオに近かった。
女性三人が姿を消すと、静かな時が訪れる。
静かになった空間でヴェルザードがフェリクスの背後につく。
「少佐。リオの力は本物ですが、元は我々を裏切ったゲリラの仲間ですよ。いいんですか?」
目線を合わせず問いかけるヴェルザードに、フェリクスは笑みを浮かべた。
「大丈夫だろ。まぁ俺の直感だけどな。それにあいつもそのゲリラに裏切られたんだ。あとあいつの鷹の目は強力だ」
「力は認めます。確かにリオの鷹の目は私が見た中でも断トツです。ですが信頼するにはまだ時期尚早だと思います。正直に言ってリオは危ういと思っています……私は少佐に従いますが、それでも警戒はさせてもらいます」
静かに頭を下げるヴェルザードを見つめ、フェリクスは苦笑いを浮かべた。
「お前らしいよ。まぁそれぐらいの方がバランスが取れて丁度いいかもな」
フェリクスが笑い、ヴェルザードは静かに頭を下げていた。
そんな時、後ろから凛々しく張りのある声が響いた。
フェリクス達が振り返るとそこには二十代なかばと思われる青年が綺麗な敬礼をして立っていた。
金色の短髪に青い瞳。上背はフェリクスより若干高く、百八十センチは超えているように思えた。
がっちりとした肉付きでいかにも女性受けしそうな甘いマスク。
フェリクスはゆっくりと歩み寄ると、綺麗な敬礼で返した。
「ライデル大尉だな。ライデル隊の動きはさすがだった。おかげでこちらの損害は殆ど出なかったよ。ラフィン軍きってのエリート部隊という噂は本物だな」
フェリクスが落ち着いた声で、声をかけると、ライデルは屈託のない笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。しかしフェリクス少佐の第十四独立機動隊もさすがでした。おかげでこちらもよどみなく作戦を遂行出来ました」
胸を張り笑みを浮かべるライデルに近付くと、フェリクスは手を差し出す。ライデルも応えるように手を握り返し握手を交わす。
「少佐、ご存じですか?少佐の事セントラルボーデンの奴らは『黒い死神』とか言って恐れてるらしいですよ」
「はは、物騒な名前をつけられたものだな」
フェリクスがそう言って笑うと、ライデルは手にしていたアタッシュケースのような物を差し出す。
「少佐、本部からこれを貴方に渡すよう言われてます」
渡されたアタッシュケースを手に取り、開けてみると、中から光り輝くクリスタルのような物が現れた。
美しく輝くクリスタルだったが、中で何か脈動しているようにも感じられた。
「なんだこれ?」
「すみません。自分は少佐に渡すように言われただけで内容までは……」
申し訳なさそうに笑い頭を搔くライデルを見て、フェリクスも笑みを浮かべる。
フェリクスはそのままクリスタルを手に取り観察するとケースの中に手紙のような物が入っている事に気付いた。
フェリクスは手紙を手にし、中身を確認する。
『フェリクス少佐。
我々は今、特殊なクリスタルを使い、ソルジャーでもウィザードのように魔法が使えないか実験を重ねている。
その最中、そのクリスタルが発見された。そのクリスタルは他のクリスタルと違って既に魔力を帯びており、魔力を補充する必要がない。ぜひ君の方で、そのクリスタルを使った実験をしてもらいたい。良い報告を待っている。』
フェリクスは手紙を読み終えると、手紙を握り締めため息をついた。
「ふぅ、要はこのクリスタルを使って俺にも実験台になれって事か」
フェリクスが苦笑いしながら呟くと、同時に後ろからリオが声をかける。
「少佐、なんだいそれ?」
振り返ると眉をひそめ、怪訝な顔をしたリオが立っていた。
「本部から送られて来たオプションパーツみたいな物かな」
「……なんか嫌な感じがするな、それ」
クリスタルを見つめ少し嫌悪感をあらわにするリオだったが、すぐにライデルが歩み寄って行く。
「えっ、ちょっと、こんなに綺麗な子達がいるのかよ」
ライデルがリオやエルザ達に笑みを浮かべながら近寄る。
だがリオは凍りつくように冷たい眼差しを向け、敵意をむき出しにする。
「何だ?それ以上近寄ったら蹴り上げるぜ色男」
「な?俺は上官だぞ」
「知るかよ。正当防衛だ。いいだろ少佐?」
近寄っただけで正当防衛と言われ、困惑するライデルをフェリクスは苦笑しながら見つめていた。




