補給基地②
補給基地に突入して行くライデル隊を確認するとリオは無線機を手にした。
「フェリクス少佐。聞こえるかい?反対側からお仲間達、ライデル隊だったか?基地に突入し始めたぜ。挟撃は成功しそうだな。悪いけど、ここいらであたいはあたいの戦いに入らせてもらう」
少しの間が空き、フェリクスが応答する。
「リオここまでありがとう。感謝する。気を付けろ、敵は狼狽えているが、それでも軍隊だ。油断するなよ」
「わかってるさ。それはあんたらもだろ。あんたらに死なれたらさすがに気分が悪い。死なないでくれよ」
「了解した。リオも気をつけろよ。お前が死んだら俺だって目覚めが悪い」
「はは、じゃあな隊長さん」
リオは通信を終えると徐に立ち上がり補給基地を見つめた。そして踏み出そうとした時、後ろから声がかかる。
「リオ!」
振り返るとエルザが岩陰に隠れながら見つめていた。
「リオ、今度女同士でゆっくり紅茶でも飲みながら話さない?」
そう言って笑顔を見せるエルザを見つめ、リオも微かに笑った。
「静かすぎる小綺麗な店とかはあたい苦手だからな」
「じゃあむしろ、飲み屋にでも行く?」
「へへ、いいな」
リオは拳を突き出し笑みを浮かべると、エルザも離れた所で拳を合わせるように突き出していた。
エルザと視線を合わせると、リオは振り向き走り出す。
マシュー待ってろ、今行く――。
リオはまだ飛び交う銃弾を縫うようにして基地内へと突入して行く。
扉を蹴破り中に入ると、セントラルボーデンの兵士達が慌てふためき、駆けずり回っていた。
「敵の数は?」
「わかるかよ!既に防衛線は突破され、基地内に侵入されている!早く退避だ」
セントラルボーデン兵が言い合っていると、一人の兵士の背後からナイフが貫く。
「……ぐっ」
「ああ、早く退避した方がいいぜ。もう間に合わないけどな」
背後に詰めたリオが冷たく告げると、兵士はリオを睨みながら血に伏せる。
「くそっ!こんな所にも!」
もう一人の兵士が銃を向けると、引き金を引いた。
だがリオは同時に向けられた銃口を即座に片手でいなし、銃弾は明後日の方向へと発射された。
至近距離から簡単にいなされ、敵兵は目を見開く。
リオはすぐにナイフの刃を敵兵の首に当てた。
「あたいは優しいから一度だけチャンスをやるよ。昨日この基地に連行されて来たゲリラの少年はどこにいる?」
凍りつくような冷たい眼差しを向け、低い声で問いかけるリオに、セントラルボーデン兵は小さく震え、唾を飲み込む。
「そ、そいつは昨夜上からの命令で処刑された。昨日基地の裏に埋められたはずだ」
兵士の言葉を聞き、ナイフを握る手にも力が入る。
リオは擦り切れる程に奥歯を噛み締める。
「……そうか、ありがとよ」
リオは兵士の首に当てていたナイフを振り抜き、踵を返す。兵士は喉から溢れ出す血を止めようと傷口を必死に抑えながらリオを恨めしく見つめていた。
「悪いが時間切れだよ」
リオは血溜まりに沈んでいく兵士を冷たく見つめ呟いた。
そのままリオは駆け出し、基地を飛び出す。
外に出るとすかさず鷹の目を使いマシューが埋められたと言われた基地の裏側を見つめる。
すると一箇所、土の色が変わっている箇所を発見する。
リオはすぐに走り出し、そこを目指した。
覚悟はしていた。
マシューがさらわれてから時間が経ち、近くまで来てもマシューからのテレパシーは感じられなかったから。
それでも一縷の望みに賭けていた。ひょっとしたら間に合うんじゃないかと。助けられるんじゃないかと。
だが現実は違った。
リオが土を掘り返すと、冷たくなり無造作に横たわったマシューが姿を現した。
土埃に血のような錆びた匂いが混じる。
「……マシュー、すまない……ごめん」
うなだれながら呟くリオの言葉に、マシューからの返事は返ってこなかった。




