補給基地
フェリクスとリオが隊員達の元に戻り息を潜めて身を隠す。
リオは目を閉じ、小さく息を吐き集中力を高める。
「お仲間の部隊、上手いこと身を隠しながら二手に分かれて準備万端って所だ。ただ相手も警戒を強めてる。明らかに見張りの数がさっきより増えてやがる」
声を落とし、問い掛けるリオを見て、フェリクスは微かに口角を上げる。
「さすがだな。それだけ分かれば十分だ。俺達は予定通り、時間になれば行動に移す」
「そうかい。せっかくここまで来た仲だし、あんたらが突入するぐらいまではサポートしてやるよ。ただ、その後あたいは自分の為に動かさせてもらう」
リオは目的の補給基地を見つめながら静かに告げる。それはどこか、覚悟を決めたかのようにも聞こえ、まるで自分自身に言い聞かせてるようにも感じた。
フェリクスはそんなリオを見つめ、補給基地へと視線を移す。
「ああ、問題ない。助かるよ」
フェリクスの言葉にリオは何も返さず、ただじっと補給基地を見つめていた。
数分後、フェリクスは時計を確認すると茂みから飛び出し、補給基地へ向かって駆け出して行く。
「全員、作戦開始だ。補給基地を制圧する。ライデル隊も仕掛ける筈だ。歩調を合わせろ」
無線越しにフェリクスが命令を下すと、一斉に隊員達も迅速に行動に移した。
フェリクスに続き、ガルシアやキャスパー達、実働部隊が飛び出し、ヴェルザードやエルザ達が後方に控えて指示を出していた。
「エルザ、あんたらの隊長はせっかちだな。いつも一人先頭をきりやがる」
エルザの横に腰を下ろしたリオが呆れ加減で声を掛ける。エルザはそんなリオに微笑み返した。
「今頃気付いた?少佐は自分で動く方が楽なんでしょうね。そしてそれが出来るだけの実力もある」
「ああそうだろうな。いい加減あたいも慣れてきたよ」
呆れたような笑みを浮かべ、リオが無線機を手に取る。
「フェリクス少佐、相手も気付いたよ。三方から狙われてる。一人は火球を練ってやがるウィザードだ」
「かわしてみせるさ。別働隊のライデル隊はどうだ?」
こんな時でもフェリクスの声は明るかった。リオは微かに口角を上げて、意識を別に移した。
鷹の目を使うリオの目には、反対側から同じく突入するもう一つの部隊が映っていた。
隊長と思われる男を先頭に隊員達が続き、敵を制圧していく。
フェリクス隊と違うのは、隊長が先頭に立ち、隊全体を指揮しながら部隊で動いていた。
リオは再びフェリクスに目を向ける。
「しかしこっちの隊長は……」
リオは戦場を一人駆けるフェリクスを見つめ口角を上げた。
「……向こうも動き出した。補給基地の奴ら慌ててやがる。奴ら、別働隊の動きは予想外だったようだぜ。おい!避けろって、来るぞ!」
リオの叫びと共に火球と銃弾が同時にフェリクスを襲う。轟音を立て、焼き尽くそうと迫る火球。空気を切り裂き迫る弾丸。
だがフェリクスは身をひるがえし。簡単にその全てをかわし、気がつくと火球を放ったウィザードの前に立っていた。
「なっ……化け物か!?」
敵ウィザードは驚き、慌てて腕に炎を灯したが、次の瞬間にはフェリクスが剣を振り抜き背後に立つ。
「遅いな。まぁウィザードじゃ仕方ないか」
フェリクスが冷たくそう言うと、ウィザードの首筋から血飛沫が舞い、そのまま血溜まりに倒れた。
フェリクスの一連の動きを鷹の目で見ていたリオは思わず顔を引きつらせた。
……強い。だがそれだけじゃない。あの容赦の無さ。普段のフェリクス少佐を見ているからこそ寒気さえ感じる――。
リオは苦笑しながらエルザやヴェルザードにも目を向ける。
二人は戦況を確認しながら淡々と他の隊員に指示を出していた。
そんな中、リオの視線に気付いたエルザが声を掛ける。
「リオ、鷹の目で見えた情報を教えて」
「ああ、わかった」
少し戸惑いながらリオが頷く。
ジャングルや洞窟で見せたゲリラ戦ではなく、敵の拠点を襲撃するような本来のフェリクス達の戦いを見てリオは苦笑いを浮かべていた。
慣れてやがる。フェリクス少佐だけじゃない。この隊全員がプロだ。いや、これが軍隊か――
僅かな驚きを胸に秘め、リオも戦いの中に身を投じていく。




