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新兵器⑥


「さぁてと、ではそろそろ始めますか」


 セシルが満面の笑みを浮かべ、皆に問い掛けた。

 一番最後に来たくせに、しれっと仕切りだす。

 ジョシュアは思わず皮肉を口にしかけたが、寸前で飲み込んだ。

 言えばどうなるか。容易に想像が出来るから。


「じゃあ、とりあえずクリスタルに魔力の供給を頼むわ」


 ジョシュアが気を取り直し、いつものようにバトルスーツをセシルへ差し出す。だがセシルは眉を八の字にして、少し困ったような笑みを浮かべた。


「まぁ私がやってあげてもいいんだけどさ……ジョシュア、今まで一緒に訓練してて思ったんだけどあんた一回水属性試してみたら?私達ウィザードと違ってクリスタル使えば色々な属性が試せるのって利点だと思うの。シャーン少尉に一度お願いするべきよ」


 確かにウィザードには個人の得意な属性があり、火と水のような反対とも言える属性を両方使えるウィザードは皆無だった。

 その点、クリスタルを使い魔法を使おうとすると、慣れていれば魔力を補充する属性を作戦毎に変える事も出来る。

 もちろん、上級魔法は使えないかもしれないが、それでも様々な状況に合わせて魔法が使えればかなりのメリットになり得た。


「なるほど……じゃあ今日からはシャーン少尉に頼むことにするよ。ありがとうな」


「ただ、水や氷の魔法って、風以上に繊細さが求められるの。気をつけなさいよ」


 素直に礼を言うジョシュアに、セシルは軽く釘を刺す。


「いや、ちょっと待て」


 そこへ、話を聞いていたシャーンが口を挟んだ。


「俺はさっき、あっちのバトルスーツにも魔力を込めたんだぞ?こっちにもやれってのか?」


 もっともな不満だった。一人だけが負担を背負うのは不公平に見える。


「まぁ仕方ないじゃないですか。あっちのクリスタルの魔力が切れたら、次は私が補充します。っていう事で先輩は私とペアですね」


「うぉおっ!?マジか、セシルちゃん!?」


 セシルが当然のように歩み寄ると、先ほどジョシュアに詰め寄っていたマーカスが歓喜の声を上げた。

 結局、バスケスとボーラ、ジョシュアとシャーン、そしてセシルとマーカスという組み合わせでひとまず行く事になった。

 

――訓練開始から五日後。


 それぞれの組で成果が見え始めていた。


 中でも目を見張る成長を遂げていたのはバスケスだった。片手で火球を練り上げ、的となる木に放てば、瞬く間に炎が走り、黒炭と化す。


「流石ね。次は魔力のコントロールを覚えなさい。今は満タンで五発撃てるってところかしら?ちゃんと調整できるようになれば、八発はいけるはずよ」


 ボーラが手を叩き、笑みを浮かべながら歩み寄る。なんだかんだ言いながらも、教え子の成長は嬉しい様子だ。

 その様子を見ていたセシルはため息をつきながらマーカスを見つめる。


「こっちの二人は……バスケス伍長ほどの成果が出ないのよねぇ。私の教え方が悪いの?マーカス?」


 セシルが首を傾げ、目を潤ませてマーカスを見上げる。


「い、いや!俺の力不足だ。だけどもう少しで掴めそうなんだ。だから……もうちょっと見ててくれ!」


「そっか。じゃあ期待してるわね」


 無邪気な笑顔を向けられ、マーカスは息を整え、再び集中しはじめた。

 

 完全に手玉に取られてるな――。

 

 ジョシュアはそのやり取りを眺めながら、呆れ混じりのため息をついた。


「そう言えばジョシュア少尉」

 

 少し離れた場所にいたシャーンが声をかける。

 

「明日、別任務があってな。魔力供給は代わりにセシルかボーラに頼んでくれないか?」


「わかりました。そういう事情なら仕方ないですね。明日は二人に頼んでみます」


 結局、ジョシュアとシャーンの関係だけは、互いに深入りすることもなく、淡々としたままだった。

 

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