共闘
リオと並び立ったフェリクスは、周囲を囲む兵の数をざっと目に入れる。
セントラルボーデンの兵が六、ゲリラが十……まだ潜んでいる気配もある。正面突破は分が悪い。ならば――。
フェリクスはさりげなくリオのそばへとにじり寄り、声を落とした。
「リオ。一旦後方に下がる。俺が動く間、敵の様子を見て伝えてくれ」
怪訝な目で睨むリオ。
「……回りくどいな。サポートって、要するに何やりゃいいんだよ」
「見たままを伝えてくれ。それで十分だ」
言い捨てると同時に、フェリクスは音もなく茂みに身を投げ、リオもそれに続いた。
敵兵たちはフェリクス達の動きを見て嘲笑を漏らす。
「逃げやがったか?」
「手柄を譲ってくれるらしい!」
先頭の一人が嘲り笑い追いすがった瞬間、草陰から閃光が走り、喉を裂かれた。悲鳴すらあげられず地面に沈む。
続けざまにもう一人。慌てる敵兵達だったがフェリクスは深追いせず、再び闇に姿を消した。
「ヒットアンドアウェイ、か……やるね、隊長さん」
リオが小さく吐き捨てるように言うと、無線越しに鼻で笑う声が返ってくる。
「敵が舐めてるうちは稼げる。落ち着かれたら厄介だがな」
言った矢先に、ドレフォンが怒声を張り上げる。
「慌てるな!いつも俺達がやってるただのゲリラ戦法だ、背中を合わせろ!」
兵たちは円を組み、互いの隙を消した。森に静寂が戻り、張り詰めた空気が漂う。
「……嫌な感じだな。もう隙はねぇぞ」
リオの低い声。
「構わん。お前は隠れて索敵を続けろ。俺はリオを信じる事にする」
その一言に、リオの胸が微かにざわつく。
(信じる?まだ会って間もないあたいを?)
答えを出す前に、フェリクスは飛び出していた。銃声が静寂を裂き。火花と氷片が弾ける。
だが弾丸を剣で弾き、空気を切り裂く程の速さで懐に踏み込むと、ゲリラの首が赤い弧を描いて飛んだ。
続けざまに別の兵の胴を横薙ぎに裂く。倒れ伏すゲリラ達を踏み越え、さらに刃が閃く。
その瞬間、無線から怒声が響いた。
「跳べ、少佐! 後ろだ!」
反射で身を翻す。直後、氷の礫と銃弾が降り注ぎ、フェリクスのいた場所を穴だらけにした。
そこにいた敵兵は逃げ遅れ、無惨な姿で倒れ込む。
「……危なかった。さすがだな、リオ」
肩で息をつき、フェリクスが無線越しにリオに語りかける。
「無茶しやがって。いつから気付いてた?あたいが鷹の目を使える事に」
「確信はなかった。だが今朝の洞窟ではマシューと連絡が取れてない割には潜伏する敵を正確にとらえていた。だからリオも鷹の目が使えるんじゃないかってな」
「はぁ!?もし使えなかったらどうすんだよ!」
怒鳴るリオに、フェリクスは笑い声を返すだけ。
「その時は……俺の見る目が無かったってことだな」
呆れと苛立ちがないまぜになりながらも、リオは息をつき、無線に声を落とした。
「残りは九。あそこに立って偉そうにしてる馬鹿二人も含めてだ」
「さすが助かる」
フェリクスは淡々と応じ、大剣を握り直した。
数の差は依然として歴然だった。
だが不思議と、絶望感は感じない。




