新兵器⑤
ゲルト少佐の説明によれば、長髪のブロンドで端正な顔立ちの男がシャーン少尉、水属性の魔法を得意とするという。
もう一人、黒髪を腰まで伸ばした長身の女性がボーラ軍曹。精悍な顔立ちで、炎の魔法を専門にしているらしい。
「加えて、もう一人。私の直属ではないが、もともと協力しているセシル少尉にも声をかけておいた。本人及び所属部隊にも優先してそちらに回るよう伝えてある。我々の兵を使う以上、成果はしっかり出してもらいたいものだね」
ゲルト少佐の声は終始柔らかいが、笑顔の下に冷たいものが見え隠れしていた。
「ありがとうございます。では早速、実験に移ってもよろしいですか」
カストロが一礼し、二人のウィザードを促した。わざわざ“実験”と言い直したのは、少しでも意地を通したかったからかもしれない。
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移動した実演場で互いに顔を合わす。
「命令だから協力はするけど、正直なんで私が選ばれたのか分からないな」
「この前の作戦で遅れを取ったのは俺とボーラだろ。そのせいじゃないか?」
「……はぁ、最悪。本気でやればよかった」
シャーンとボーラのやり取りは率直すぎて、場の空気は自然と重苦しくなる。
「あ、あの……これに魔力を込めてもらっていいですか?」
気を使いながらジョシュアが声を掛けると、二人は意外にも文句を言わず、無言で魔力を注ぎ込んでいった。
「これ、少尉が使うの?」
ボーラの問い掛けにジョシュアが笑顔を作り、軽く首を振った。
「いや、俺は以前のスーツがある。これは他の隊員が――」
「ふぅん。じゃあ……あの子がいいかな」
ボーラが迷わず指さしたのは、端に立つ小柄な伍長だった。
場に一瞬ざわめきが走る。
「彼はバスケス伍長だ。試作型を試すのは予定では彼ではなかったはずだが……理由は?」
二人のやり取りを見ていたカストロが声を掛ける。
「理由?直感。まぁ感覚的な事、大事なのよ。ただ勘違いしないで、好みとかじゃないから」
平然とした口ぶりに隊員たちは顔を見合わせたが、結局カストロはボーラの直感を受け入れることにした。
「そういえば……ジョシュアの同期のセシル少尉はまだ来ないのか?」
カストロが問い掛けると、ジョシュアは苦笑しながら軽く頭を振る。
「すみません。伝えてるんですが……セシルは時間を守る事の方が少なくて……」
言いかけた瞬間、背後から甲高い声が飛んだ。
「ちょっと!いきなり呼び出した上にその言い草は何?私の評判落としたいわけ?」
振り返ると、腕を組んで仁王立ちするセシルの姿があった。
美しいブロンドの髪をなびかせて、気の強そうな美貌は、どこか芸能の舞台に立つ女優のようですらあった。
ジョシュアが慌てて苦笑いして歩み寄る。
「おや、いつもより早いじゃないか」
「今まではあんたとアデルに付き合ってあげてただけよ。今回は軍命令。協力するのは当然でしょ」
気迫に押されて言葉を失うジョシュアを見て、セシルは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「おいジョシュア!お前、こんな美人といつも訓練してたのか!?」
一人の兵が冗談めかして詰め寄り、場の空気がどっと沸いた。
だがジョシュアは皆の目がセシルの美貌に行き、気性の激しさが伝わっていない事に一抹の不安を覚える。




