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結成


 N.G0197年四月

 依然として戦争を優位に進めるラフィン共和国だったが、フェリクスは軍本部へ呼び出されていた。


「フェリクス・シーガー少佐、ただいま戻りました」


「よく来てくれた少佐。実は部隊再編に伴い、君に部隊を一つ任せたい。引き受けてくれるかね?」


 これまでフェリクスは研究室や前線での試作バトルスーツ実験に明け暮れていた。

 所詮技術士官としての任務が大半で、前線での指揮は経験がない。


「自分は技術士官です。部隊を率いるなんて……何をすればいいのですか?」


 困惑するフェリクスを前に、将軍はニヤリと笑った。


「君は技術士官として優秀だが、同時に卓越したソルジャーでもある。補給基地での戦果も聞いている。それに君の開発したバトルスーツは特殊ゆえ、生みの親である君が一番使いこなせるだろう。君の部隊は独立した部隊だ。軍の命令がない時は君の判断で自由に動かせる」


 圧倒的な権限を餌に将軍は既に確信したかのような笑みを浮かべていた。それを見て察したフェリクスは覚悟を決めざるを得なかった。


「……しかし自分には経験が不足しています。せめて作戦立案や指揮をサポートしてくれる人材が一人は欲しいのですが」


「安心せよ。君に部隊を預ける案が出た時に、真っ先に手を挙げた男がいる。そやつが君の右腕となり隊を纏めてくれる筈だ」


 将軍の言葉に、フェリクスの頭に一人の男が浮かぶ。


「さぁ君の部隊は既に君の到着を待っているぞ」

 

 フェリクスは静かに敬礼をすると一礼して部屋を後にする。そして指定された部屋の前に着くと、フェリクスは少し足を止めた。

 

 静かすぎる……間違いじゃないだろうな――?


 フェリクスが戸惑いながら扉を開ける。


「全員!敬礼!!」


 突然怒号のような掛け声が響き渡った。フェリクスが戸惑い部屋を見渡すと、隊員全員が直立不動で立っていた。

 その光景に圧倒され、フェリクスも思わず敬礼を返す。

 

 これは……まさか、俺が来るのをずっと立ったまま待っていたのか?威厳を示すべきか? いや無理だ。とにかく座らせるしかない――。


「皆ご苦労。ひとまず座れ。このままじゃ話がし辛い」


 フェリクスが笑顔で語りかけると、一部の者は座ったが、ほとんどは緊張した表情を浮かべていた。

 部屋の端で最も熱心に敬礼しているヴェルザードの視線が、その硬さの理由であることは明白だった。


「ヴェルザード、君も座れ」

「いえ、自分はここで大丈夫です」


 彼はそっとしとくか――。

 

 直立不動のまま返すヴェルザードを、フェリクスはひとまず放置することにした。


 その時、扉が勢いよく開く。


「す、すいません!遅れてしまいました!」


 小柄な女性兵士が顔を覗かせる。彼女は可憐な笑顔を向けてやり過ごそうとしたが、部屋の雰囲気を察しすぐにそれが通用しないと気付き気圧される。


 憤怒の表情を浮かべてヴェルザードがにじり寄る。


「貴様、名前と所属を言え!」


 ヴェルザードの怒声が部屋に響き渡った。


「ひっ、エルザ・アンダーソンです。しょ、所属はその……」


 怒号に体を震わせ、女性は言葉を詰まらせる。

 すると、一連の流れを見ていたフェリクスがやんわりと口を挟んだ。


「所属は……ウチだろ。ヴェルザード大尉、落ち着け」


 フェリクスが優しく声をかけると、緊張は少し緩み、ヴェルザードも納得する。


「しかし初回から遅刻だ。示しをつけるため、今日はエルザ、君もヴェルザードの隣に立っていてもらおうか」


「はい、了解しました!」


 二人は並び、敬礼を続ける。


「さて、ようやく始めようか。皆お疲れ様。俺がこの隊を率いるフェリクス・シーガー少佐だ」


 こうして、ラフィン共和国第十四独立機動隊はこの日、ドタバタしながらも結成された。

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