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新兵器④


 クリスタル内蔵式バトルスーツの開発が正式な任務となって二週間、ジョシュアのいるカストロ中隊は司令部へと招集されていた。


 待機室に並ぶ隊員たちの顔には、緊張の色が濃い。

 普段なら軽口を叩き合う場面でも、誰一人として声を発さない。

 理由は明白だった。彼らを呼び出したのは、軍上層部の中でも三指に入る大物、ジョン・ハワード将軍だからだ。


 将軍は穏やかな笑みを浮かべながら隊員達を見渡す。

 

「ご苦労。普段から任務には全力で取り組んでくれているとは思うが、ところで新型のクリスタル内蔵バトルスーツ……まだ実戦投入はできていないようだね?どうだね、少尉。使い物になりそうか?」


「あ、いえ……その、はい。なんとか実戦で運用できるよう調整を進めてはいますが……」


 突然、軍のトップ直々に問われ、ジョシュアは言葉を詰まらせる。


「ふむ……私は未来ある兵士に託したつもりだったがね。そろそろ成果を見せてもらいたいところだ」


 柔らかな口調に聞こえる。だがその裏に潜む圧力は、場にいる全員が感じ取っていた。


 ジョシュアが答えに窮していると、将軍の視線がゆっくりと隊を率いるカストロ中隊長へ移る。


「まあ、新兵にすべてを背負わせるのも酷か。そこでだ、試作品の改造バトルスーツをさらに二つ用意した。魔法兵団にも話は通してある。既存の一つと合わせ、三つ体制で結果を出してもらいたい」


「ありがとうございます。必ずやご期待に添えるよう努力いたします」


 カストロは即座に答えた。だがその直後、将軍の口からさらりと放たれた言葉に、場が凍り付く。


「一週間後には報告してもらおう。楽しみにしているよ」


「……一週間、ですか?」


 思わず聞き返すカストロに、将軍の目が細くなる。


「ん?不服かね?」


 短い問いかけに潜む威圧。

 その鋭い眼光にカストロは即座に背筋を伸ばした。


「いえ! 必ずや結果を出してみせます」


「そうか。ならばいい」


 最後は再び柔和な笑みを見せ、将軍は彼らを下がらせた。


 司令部を出た瞬間、緊張の糸が切れる。


「どうするんですか大尉、あんな一週間なんて無茶な……!」

「断れるわけないだろう!……もう、やるしかない」


 カストロは隊員たちに向けて短く言い切った。

 その声には、覚悟が滲んでいた。


 数日後、技術開発局から新たに渡されたバトルスーツを手に、カストロ中隊は魔法兵団の兵舎を訪れる。


「技術開発局所属、カストロ大尉だ。将軍の方から話は通っているはずだが……」


 門に立つ衛兵は、口元にわずかな嘲りを浮かべながら答える。

 

「少しお待ちを」


 その態度に隊員の一人が小声で漏らす。

 

「感じ悪いな……」

「魔法兵団なんてこんなもんだろ」


 魔法を扱える者。ウィザードは、この世界でも数少ない貴重な存在だ。

 彼らだけで構成された魔法兵団の中には、己を特権階級と勘違いしている者も少なくない。


 やがて案内された中隊が通されたのは、絢爛な装飾が施された一室だった。

 並ぶ調度品の豪華さは、自分たちの兵舎とは雲泥の差だ。

 ジョシュアはそれらを見つめ思わず眉をひそめた。


「ようこそ、カストロ中隊の皆さん」


 部屋の奥で、立派な机に腰掛けていた男がゆったりと立ち上がる。

 

「私はゲルト少佐だ。将軍から話は伺っている。皆さんの()()には、こちらの二人――シャーンとボーラが協力する」


 紹介された二人は机の両脇に立ち、無言のまま手を組んでいた。

 シャーンは鋭い目つきで中隊を値踏みするように見下ろしている。

 一方、ボーラは視線を正面に向けたままだったが、ジョシュアが一瞬だけ目をやると、彼女は一瞬目を伏せたがすぐに表情を引き締め直した。


 歓迎されてはいないか。だが、全てが敵意というわけでもなさそうだ――。

 

 ジョシュアは、場の空気の微妙な揺らぎを感じ取っていた。

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