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第一章エピローグ②

第一章エピローグ②


 部屋に残ったアイリーンは静かに通信機を手にすると手早く操作する。

 するとすぐに通信は繋がり、通信機の向こうから落ち着いた女性の声が響く。


「珍しいですねアイリーン大佐。どんなご要件ですか?」


「マリオン・グラッチか。ルーシェル将軍にカストロ中隊の件で話があったんだが」


 一拍の沈黙の後、マリオンは落ち着いて答える。


「アイリーン大佐。ルーシェル元帥です、お間違いなく。元帥は今お忙しいので私がお聞きしますが?」


 事務的に答えるマリオンにアイリーンは軽く鼻で笑うと楽しそうに口を開いた。


「なるほど、そうか。まぁしかしまだ就任式も終わってないのだから許せ。カストロ中隊は解散らしいな?全員私の配下に置かしてもおうか」


「ほほう、少し横暴にも聞こえますがその真意は?」


「なぁに簡単だ。奴らの新型バトルスーツはウィザードの魔力が必要な筈。だったら我々の下にいた方が奴らもやり易いだろう。それに借り物の魔力でどれ程の力を得るのか見てみたいと思うだろ?」


「……なるほど、わかりました。ルーシェル元帥にはそのままお伝えします」


「ふっ、ちゃんと伝えろよ」


 通信を切るとアイリーンは一人静かに笑みを浮かべる。


「マリオン・グラッチ。優秀な秘書官だな」


 アイリーンの楽しそうな声が静かな部屋にこだましていた。


――

 通信を終えたマリオンはゆっくりと振り返り、後ろで鎮座するルーシェルに一礼する。


「アイリーンは何と言っていた?」


 ルーシェルの静かな問いに、マリオンは微かな笑みを浮かべる。


「カストロ中隊を自分の配下に置かせろと。どうされますか?」


「ふっ、珍しいな。何か感じ取ったか?まぁいい、アイリーンの好きにさせろ。寧ろアイリーンが監視するなら奴らも変な行動は出来まい」


「はい、確かに。ではそのように手配します」


 マリオンは深く一礼するとゆっくりと部屋を後にした。


「さてと、記念式典までにはしっかと準備せねばな」


 広く静かな部屋に愉悦を含んだルーシェルの言葉だけが響き渡っていた。


――

 数日後。


 軍基地内にあるカフェでセシルはアデルと紅茶を飲みながら談笑していた。


「まぁアデルも大変だったみたいね」


「あぁ、俺もあの新型バトルスーツの開発には携わっていたしな」


「結構頑張ったんだけどなぁ、私達も」

 

 セシルは空を見つめながらそう嘆き、手にしていたカップをそっと置いた。


「まぁ確かにな……それで頼まれてたコレ返しとくぞ」


 そう言ってアデルはシルバーのクロスチェーンを取り出し机の上に置くと、すっとセシルの方へと指で滑らせる。


「ああ、ありがとう。もっとかかるかと思ったけど案外早かったのね」


 セシルは机の上のクロスチェーンを素早く手に握るとすぐにポケットへとしまい込んだ。


「急げって言ったの誰だよ?実際一人で調べるからもっと苦戦するかと思ったけどホログラフィーの中に写真屋の名前があったから助かったよ。場所は中立国のルカニード共和国だ。隣国とはいえ、ここからは大分遠いけどどうするんだ?」


「今は休むしか出来ないし、特別に長めの休暇貰えたからさ、暇だから行ってみようかなってね。私がコレ持ってても仕方ないし」


 そう言ってセシルはどこか寂しげな笑顔を見せると席を立った。


「まぁ、ありがとうね。お礼にここは奢っとくわね」


「ふん、足らねぇよ」


 伝票を手に取り笑顔を見せたセシルに対してアデルが憎まれ口を叩いたが、セシルは振り返る事なく片手を上げてその場を去って行った。


 翌日。

 セシルは高速鉄道に揺られながら外の景色を眺めていた。高速鉄道はセントラルボーデン国内外を網羅しており、最も代表的な移動手段の一つだ。普段自分達が暮らす中心都市付近は背の高い建物も多く、離れるにつれその景色は緑の木々が溢れる自然豊かな森林となり、そこから更に離れれば次は砂漠や荒野が続く少し寂しげな景色へと変わっていった。


 さすがにこれぐらいまで来ると一人旅感が出てきたなぁ――。


 そう思いながらも、胸の奥ではわずかに不安が揺れていた。


 やがて国境を越え、ようやく目的の駅へと到着する。

 折れた右腕をかばいながら左手で荷物をサッと持ち、目的の街に降り立つ。

 街は夕日で赤く染まり、乾いた風が頬を撫でる。


 さてと、ここからが大変かな――。


 そう思いながら街で聞き込みを開始する。

「シュタットさんという女性、ご存知ないですか?」

「ミアさんという女性、ご存知ないですか?」


 何軒か回るうち、古びた雑貨屋の主人が眉を上げた。


「……?ミア・シュタットかい?それなら一本裏の筋を右にずっと奥まで行った所で喫茶店をやっているよ。味は良いんだがちょっと気性が荒いから気を付けた方いいかもな」


 聞いた情報の通り裏の筋に入るとまだ夕方だというのにシャッターが閉まったままの店や人が住まなくなって数年は経つと思われる建物が立ち並んでいた。その間をゆっくりとセシルは歩いて行く。


 一本裏に入るだけで廃れた感が増すなぁ。外れの小さな街だとそんなもんなのかな――?


 そんな事を考えながら歩いていると突き当たりまで辿り着いた。

 そこには喫茶店があり、その店先には綺麗な花が飾られている。それまでが寂しい風景だったせいか、その一画だけは華やいで見えた。


 少し店の前で立ち止まり一瞬躊躇したが、意を決したかのようにセシルは店のドアを開け店内へと入って行く。

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