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第一章エピローグ


 バレスタ掃討作戦から帰還して数日後。

 治療を受けていたセシルの耳に飛び込んで来たのは、ジョン・ハワード将軍の失脚とカストロ中隊長拘束という衝撃のニュースだった。


 いても立ってもいられなくなったセシルは、治療を途中で中断すると、カストロ中隊の兵舎へと駆け込んだ。


「ちょっとどうなってんのよ!?」


 扉を蹴破るような勢いでセシルが兵舎を訪れると、そこにはジョシュアやマーカス数人の隊員と憲兵達がいた。


 静まり返った部屋で全員の視線がセシルに注がれると、流石のセシルもややトーンダウンさせて苦笑いを浮かべる。


「ははは、失礼しました」


 セシルは苦笑しながらジョシュアの横へ、静かに歩み寄った。


「ちょっとジョシュア。まだ休暇中かもしれないけど貴方達だけ?」


 隊長が拘束され、隊員達が集まっていると思っていたセシルが尋ねる。

 確かにセシルの言う通り、集まっていたのはジョシュアやマーカスに数人の隊員達だけで大半の隊員達の姿は見えなかった。


「俺達カストロ中隊には解散命令が出ている。今ここにいる連中は俺も含めて荷物の整理に来ただけだ」


 ジョシュアが静かに告げるが、セシルは目を丸くさせ、更に掴みかかる。


「解散命令?何どういう事よ?」


 狼狽し、高ぶるセシルに憲兵の一人がゆっくりと歩み寄る。


「セシル少尉。貴女は魔法兵団所属ですので対象には含まれておりませんが、カストロ中隊は解散し、隊員達は暫く軍の監視下に置かれる事になりました」


「は?どういう事?」


 眉根を寄せ、訝しむセシルだったが、憲兵も毅然とした対応を見せる。


「軍の決定事項です。これ以上はお話出来ません」


「ちっ」


 セシルが軽く舌打ちすると、部屋には不穏な空気が漂った。

 しかし次の瞬間、その空気を切り裂く声が響く。


「セシル、こんな所で何をしている?」


 凛とした女性の声に驚き振り返ると、そこには部屋の外から腕を組んだままじっと見つめるアイリーンの姿がそこにはあった。


「アイリーン大佐。あの、この前の作戦で共に戦ったカストロ中隊長が拘束されたと聞き、思わず駆けつけました」


 少し言葉を詰まらせながらも報告するセシルをアイリーンは微かな笑みを浮かべて見つめていた。


「なるほどな。事情は私が話してやるついて来い」


 アイリーンはそう言うとすぐに踵を返し歩き出した。

 セシルは戸惑いながらも後を追う。

 しかしアイリーンはすぐに足を止め、顔だけ振り返ると、その強い眼差しを憲兵に向ける。


「憲兵、セシルは連れて行く。異論はないな?」


「は、はい。もちろんであります」


 顔を強ばらせて憲兵が答えると、アイリーンは微かに口端を上げ再び歩き出した。


 セシルはそのままアイリーンに付き従い魔法兵団にある兵舎まで戻ると、ようやく一息を入れ口を開いた。


「あの、アイリーン大佐。先程は申し訳ありません」


 顔を強ばらせて謝罪を口にするセシルを見つめ、アイリーンは小さく笑った。


「ふっ、気にするな。お前も座れ」


 アイリーンが椅子に腰掛け、セシルを促すと、セシルは軽く会釈しゆっくりと腰を下ろした。


 二人きりの静かな部屋で、アイリーンがゆっくりと語り出す。


「ジョン・ハワード将軍の失脚は知っているな?その配下でもあったカストロ大尉は嫌疑をかけられ今拘束されている。そしてカストロ中隊も解散させられた」


「ちょっと待って下さい。カストロ中隊は私達と共にテロリスト達と戦いました。一緒に戦った者として彼らが裏切りを働くなんて事は考えられません」


 身を乗り出し、カストロ中隊の潔白を訴えるセシルを見て、アイリーンは微かに笑った。


「なるほど、まぁお前の気持ちもわかるぞセシル。だがカストロ中隊の解散は既に軍が決めた事だ、今更どうする事も出来ん」


「……そんな……」


 言葉を失うセシルを見つめ、アイリーンが静かに声をかける。


「とりあえずお前は治療に専念しろ。今のお前に出来る事は休んで次に備える事だ」


 アイリーンの言葉を聞き、セシルは静かに頷くとゆっくりと部屋を後にした。


 部屋に一人残ったアイリーンは暫し考え込むと、微かに口角を上げた。


「……誰かが裏で糸を引いているな。面白い。他人のはかりごとだが、配役は悪くない。あえて踊ってみるか」


 アイリーンの朗らかな声が静かな部屋に溶けて消えた。

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