激戦終えて
バレスタ掃討作戦から帰還した兵士達は各々の所属に帰り報告を済ますと、数日間の特別休暇を与えられた。
ジョシュアも兵舎で荷物をまとめていると、カストロから声をかけられた。
「ジョシュア少尉。今回の作戦ではお前の功績は素晴らしかった。胸を張れよ」
俯き、晴れない表情のジョシュアにカストロは明るく声をかけ、ジョシュアの胸を軽く叩く。
「いや、その実際、俺達は勝ったんでしょうか?ボーラは傷付き、ゲルト少佐も重傷を負った。本隊はほぼ壊滅に近いし、セシルも気丈に振る舞ってはいますが、魔力の消費は相当な筈。回復するのにかなりかかると聞きました」
沈んだ表情のまま、珍しく暗く小さな声で尋ねるジョシュアに、カストロは小さなため息をつき柔和な笑みを見せる。
「いいかジョシュア少尉。誰も傷付かない戦いなんかない。必ず犠牲は出るんだ。それでも俺達は戦い続けなきゃならない。お前の戦う理由はなんだ?」
「……テロリストや侵略者からこの国や大切な人を守る為です」
「立派だな。今回、犠牲は出たがテロリストどもにもダメージは与えた。アナベルには逃げられたが、作戦は成功だ。誰が勝って、誰が負けたかはまだこの後だ。この平和が守り抜かれた時、その時が本当の勝利の時だ。今は次に備えてゆっくり休むんだ。俺も今回の作戦の報告書をまとめたら、久しぶりにゆっくりさせてもらうからな」
そう言ってカストロはジョシュアの肩を軽く叩くと、部屋をゆっくりと出て行った。
その後ろ姿を敬礼をしながら見送ったジョシュアの心は幾分か軽くなったような気がした。
ジョシュアはそのまま支度を済ませると、シエラの自宅を訪ねる。
シエラは訪れたジョシュアを笑顔で迎えるとそのまま抱きついた。
「おかえりなさい」
優しく言うシエラをジョシュアはそっと抱きしめる。
「ただいま」
交わす言葉は短かったが、互いの想いが詰まった言葉だった。
満面の笑みを浮かべるシエラを抱き締めながら、この笑顔を守る事がいつしかジョシュアの一番の戦う理由になっていた。
――
同じ頃。
セントラルボーデンにある軍基地の一室に再び三人の将軍が集い静かに言葉を交わしていた。
「結局今回はアナベルとかいう首謀者には逃げられたが、ウチの政治家達を襲撃した獣人は始末出来た訳だし作戦としては成功という所かな。まぁ今回は魔法兵団と共にクリスタル内蔵の新型バトルスーツを装備したウチの部隊が活躍したそうだし、私が有事を見越して開発させた甲斐があったようだな」
ジョン・ハワード将軍が得意げな笑みを浮かべて言うと、ウー・フェイウォン将軍は眉根を寄せた。
「その開発に関しては機密事項が多すぎて報告が曖昧すぎる。それにテロリストの首謀者を逃がしておいて成功はなかろう。また奴らは潜伏し、いつ襲ってくるかもわからんのだぞ」
「まぁ確かにそうかもしれんが、敵の戦力は削いだんだ。それにその獣人はあのサウロの生き残りとかいう噂ではないか。サウロの亡霊は消え、あの悲劇を蒸し返される事もなくなっただけでも十分ではないか?」
ウー将軍の苦言にジョン将軍が勝ち誇ったような笑みを浮かべて返すと、ウー将軍は歯噛みしながら口を閉ざした。
するとそれまで静かに見守っていたルーシェル・ハイトマン将軍がゆっくりと口を開く。
「サウロの件についてはそうかもしれんな。まぁその事についてはこれぐらいにしておこう。過去の闇については触れない事だ。それよりそろそろ行かねばならんだろう」
ルーシェル将軍がそう言って促し席を立つと、残りの二人もゆっくりと立ち上がる。
「そうだな。老人達を待たすとうるさいからな」
そう言ってジョン将軍は先頭をきって歩き出した。
三人の将軍はセントラルボーデンの頂点に立つ長老達に呼び出されていたのだ。
先頭を歩くジョン将軍は口角を釣り上げ、薄ら笑いをずっと浮かべていた。
ふん、既に後ろ盾も支援者も失っているウーが何を言おうが取るに足らん。それに今回のテロリストどもの討伐には私が推し進めた新型バトルスーツが大いに活躍したのは事実だ。サウロの事実を知る獣人を消す事も出来た。私の実績も確固たる物になった。遂にトップに立つ時が来たのだ――。
まもなくセントラルボーデン軍という巨大な力を一人の男が握ろうとしていた。




