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代償


 セシルは大きく息を吐き、ゆっくりと立ち上がり前を向くと、拾ったネックレスをポケットにしまった。


「ふぅ、とりあえず私達は勝った。でもまだ終わりじゃない」


 セシルはどこか釈然としない気持ちを振り払うかのように呟き、ゆっくりと歩き出す。


 そのまま進んで行くと、やがてジョシュアやカストロ達が集まっているのが目につき、笑顔を作るとゆっくりと歩み寄った。


 周辺では隊員達がカルト教団の信者達を拘束し、制圧していた。

 しかしジョシュアとカストロは眉根を寄せて険しい顔で何かやり取りしているのを見てセシルは首を傾げる、


「何か深刻そうね。まだ何か問題が?」


 ジョシュアやカストロの表情を見てセシルが尋ねると、振り向いたカストロがゆっくりと頷く。


「ああ、セシル少尉、君は大丈夫なのか?」


「ええ、私は大丈夫です。ちょっと疲れたのと少し腕を痛めたぐらいですよ」


 そう言って笑顔を見せるセシルに、カストロは小さく頷く。


「そうか、なら良かった。こっちではボーラ軍曹が少しまずい事になっててな。今は治療中なんだが、意識がまだ戻らないんだ」


 カストロから衝撃の報告を聞かされ、セシルの顔色も変わる。


「そんな……ボーラは今どうなってるんですか?」


 カストロに詰め寄る勢いでセシルが尋ねると、カストロが小さなテントを指さす。


「彼女は今、出血が酷く、あそこで治療を受けてる。弾の当たり所が悪かったようだ」


 カストロが指をさしたテントの横ではバスケスが膝をつき祈るような仕草を見せていた。


 唇を噛み、言葉を失うセシルの隣にジョシュアが静かに立つ。


「それだけじゃない。控えてるはずの本隊と連絡が取れてない」


 ジョシュアの言葉に、セシルは怪訝な表情を浮かべる。


「本隊と?嘘でしょ、なんで?」


 セシルが疑問を持つのも無理なかった。

 作戦では自分達カストロ中隊が街に潜入し、カルト教団とテロリスト達との繋がりを探る。

 そしてゲルト少佐率いる本隊は、自分達からの連絡を受け、カルト教団やテロリスト達を攻撃する算段だった。


 しかし連絡が繋がらなければ作戦としては機能しない。

 実際今、教団を制圧しているのはカストロ中隊の隊員達であり、本隊からの援軍ではなかった。


 セシルが険しい表情を浮かべていると、カストロがゆっくりと口を開く。


「ひとまず戦闘可能な隊員を引き連れて俺達は本隊が待機している場所まで戻る事にした。セシル少尉はそこのテントで治療を受けるんだ」


「いえ、私は大丈夫です。私も一緒に行きます」


 力強く言い切るセシルの肩にジョシュアがゆっくり手を置く。


「無理すんなって。ひとまず治療受けてこいよ。そしてゆっくり休んどけって。何かあったら連絡するからさ」


「……ふん、私がいなくても本当に大丈夫かしら?まっ、あんた達が窮地になったら颯爽と助けてあげるからね」


 そう言ってセシルが笑うと、ジョシュアも口角を上げた。


「ああ、じゃあそん時は頼むぜ」


 ジョシュアは力強い笑みを浮かべると、カストロ達と共に本隊が待機している場所へ向かって出発して行く。


 セシルはジョシュア達を見送ると、急いでテントの中へと入っていく。


「救護班、私の腕早く治して」


 テントに入るなり、やや高圧的にものを言うセシルに、救護隊員が穏やかな笑みを浮かべて歩み寄る。


「少尉お疲れ様です。私の治療魔法は、当人の治癒能力を高めて治療するものです。平たく言いますと、少尉の代謝を急激に高めて治療します。つまり、治療を早めようとすれば、それだけ少尉の腕の老化が進みますが、よろしいですか?」


 にこやかに問いかける隊員を見つめ、セシルは顔を引きつらせる。


「あ、いや、腕は少し動かせればいいです」


 セシルの言葉を聞き、隊員は笑みを浮かべながらゆっくりと治療を始める。

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