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ガルフ・シュタット③


――

 現代、バレスタ遺跡――。

 

「はぁ……はぁ……剣を風の魔法に乗せやがったな……」


 ガルフは跪き、肩口から胸に突き刺さった大剣を睨みつける。

 両手を失い、致命傷を負った今、彼にできることはただ睨むことだけだった。


「もう終わりだな、ガルフ」


 ジョシュアが歩み寄り冷たい声で語りかけた。


「こっちも無事みたいね」


 少し離れた場所から右手を押さえ立つセシルの声が聞こえジョシュアが振り向く。しかしその瞬間、ガルフの顎がジョシュアの胴を襲った。

 慌てて後退するジョシュアだが、僅かに反応が遅れ、腰にあった手投げ弾を奪われてしまう。


「クソっ……まだ力が残っていたか」


「……はは……こうなっちまったら……少し早く死のうが……別に構やしねぇな……口惜しいがお前らの勝ちだ……」


 ガルフは血に濡れた体で足の指を使い、器用に手投げ弾のピンを抜く。

 そのまま手投げ弾を咥えジョシュアを見てニヤリと笑った。数秒後、爆音と共に爆風が辺りを飲み込み、煙と血が混ざり合った地獄絵図が広がる。


 煙が晴れると、胸から上が吹き飛んだガルフの遺体が浮かび上がった。

 

「最後は自爆か……なぜだ?」


 ジョシュアが唖然と呟いていた。


「一体なんのつもり?」


 少し離れた所でセシルが不満そうに呟き、ジョシュアの方へと歩み寄ろうとする。その時〝カン!〟と高い音を立てて何か金属片が足先に当たった気がした。

 気になり足元に目をやると、そこにはシルバーのクロスネックレスが落ちていた。

 

 セシルは拾い上げクロスネックレスを観察すると小さなボタンがある事に気付く。

 セシルが徐にボタンを押すと、3Dホログラムが浮かぶ――女性と子供、そして次に赤ちゃんを抱えた女性とかたわらに照れくさそうに立つ男性の姿が浮かび上がった。

 

 セシルの心が密かにザワつく。


 一枚目と二枚目の女性は明らかに別人だった。着ていた服装からも二枚の写真の間に、長い年月と何らかの断絶があることがわかる。

 そして二枚目に写っていた男性は恐らく人の姿のガルフだと思われる。その上、一枚目に写っていた子供の面影が見て取れた。


「ちょっと待ってよ……」

 

 セシルは静かにため息をつく。

 

「セシル、どうした?大丈夫か?」


 晴れない表情のセシルにジョシュアが声を掛ける。


「え?う、うん、大丈夫よ。ちょっと疲れただけ。それより早く他の皆も集めて状況を確認しましょう。あちこちから銃声も聞こえるし、他のチームも気になるでしょ」


 セシルは気丈に振る舞いジョシュアとマーカスにそう促すと、二人も頷き早速行動に移そうとする。


「ん? どうしたセシル? 来ないのか?」


「ああ、先に行っててよ。私は少し休憩したら行くから。女の子なんだからあんた達みたいに体力有り余ってる訳じゃないのよ」


 そう言ってジョシュア達を先に行かせた。マーカスは逆に心配だからと、残ろうとしたがそれでも上手くかわして先に行ってもらう。


 一人になったセシルは再びホログラムのボタンを押した。

 

 二枚共恐らく家族写真だろう。そして一枚目の子供と二枚目の男性は恐らくガルフだと思われる。となると一枚目の女性は母親だろう。問題は二枚目だ。ガルフには妻と子供がいた――?


「ふぅぅ……」


 セシルが大きなため息をつき目を伏せた。


「あんたさぁ……最後までちゃんと悪役でいなさいよ。じゃなきゃ私の心がもたないじゃない……」

 

 夜空を見上げ、木に身体を預けるセシル。勝利の余韻よりも心は重くなり、寧ろやるせなさが満ちていた。

 セシルは夜空を見上げ、身体を預けていた木を軽く殴った。

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