激突⑥
「クソっ……油断したぜ」
マーカスは胸を押さえながら上体を起こし、顔をしかめた。
「マーカス、動けるか?」
ジョシュアが駆け寄り問いかける。
「結構やべぇな。まぁ動くぐらいは出来そうだ……それよりあいつ怒ってるぞ」
マーカスは苦笑いしつつも、まだ軽口を叩ける余裕はあった。しかし、マーカスの状態を確認すると、二人で再び接近戦を仕掛ける事が困難なのは明白だった。
「まぁ離れて後輩の応援でもしといてくれたら、きっちり仇は取ってくるんで」
ジョシュアは軽く笑い、再びガルフに身体を向けた。
「ふん、仇って。俺はまだ死んでねぇよ」
苦笑いしながらもマーカスは、中途半端な場所にいると足手まといになると察して離れて距離を取る。
再び、ジョシュアとガルフの死闘が始まる。
ダガーを振るい、至近距離から銃を放つジョシュア。しかしガルフは躱し、爪や牙で反撃してくる。
魔法に集中する隙を与えないガルフに、ジョシュアは再びダガーと銃で応戦するしかなかった。
「タイマン勝負でそう簡単に魔法使わせると思ったか?」
「ははは、まぁそうだよな。だったらコイツで仕留めてやる」
ジョシュアは腰に携えた大剣を抜く。セシルの剣よりも長く、分厚い刀身は重厚感に満ちており、振るうだけでも相当な鍛錬が必要な代物だった。
「へへへ、攻撃力はありそうだな。でも、そんな物で俺のスピードについてこれると思ってんのかよ!?」
ガルフは右腕を振りかぶり、一気に距離を詰める。
ジョシュアも現状打破のため、大剣に賭けるしかなかった。
振り下ろすジョシュアの大剣。ガルフは躱しつつ右腕で突く。鋭い爪が迫るが、ジョシュアは上体を反らし回避した。
しかし体勢が崩れた隙を突かれ、左腕から振り下ろされた爪が胸をかすめる。
「はぁ、はぁ……ふぅ」
呼吸を整え、大剣を握るジョシュアの胸から血が滴る。
「ははは、刻んでやるぜ兵隊」
血の付いた爪を振り笑うガルフ。
ジョシュアはセシルの言葉を思い出していた。
『どう?コツを掴めばこうやって小さな魔力を安定して使う事も出来るようになるわよ』
そう言って掌の上で小さな竜巻を作るセシルの姿が脳裏に浮かぶ。
「やってみるか……」
剣を握り締め、ジョシュアは再び前を向いた。
ガルフが両手を広げ突進してくる。ジョシュアは下方に構えた剣であえて呼び込み、射程圏内で一気に振り上げた。
しかしガルフは予測し身を翻し躱す。振り上げた勢いで伸び上がったジョシュアの体にガルフが右腕を振り抜く。
ジョシュアは伸び上がった勢いのまま横に飛び退き、回転しつつ大剣をガルフの胴に横一閃凪いだ。だがガルフは軽く後ろに飛んで躱し、ジョシュアの大剣は空を切る。
「終わりだ兵隊!!」
ガルフが笑いながら踏み込み、鋭い爪を振るう。ジョシュアは勢い余って大剣を振り切って体勢を崩しており、右手が離れ左手一本で大剣を握った状態だった。
通常なら左手一本で大剣を振るうのは無理な体勢。
それでも――。
「まだだよ!!」
左手一本とは思えない勢いで大剣を振り上げ、ガルフの右腕をカウンター気味に捉えた。血飛沫が飛び、ガルフの右腕が宙を舞う。ジョシュアの通常なら有り得ない動きに、ガルフは驚愕し反応が遅れる。ジョシュアは振り上げた勢いそのまま、両手で握り直し一気に振り下ろした。
「終わりだガルフ!」
ジョシュアが叫ぶ。
咄嗟に左腕でガードしたガルフの腕は切り落とされ、肩口から胸まで大剣が突き刺さる。
「ごふっ……ば、馬鹿な……」
両腕を失い、肩口から胸まで裂かれたガルフは血を吐き、膝をついた。




