激突⑤
「ジョシュア! 大丈夫か!?」
マーカスが到着すると、ジョシュアとガルフが互いに息を切らしながら対峙していた。
「マーカスか、セシルは?」
肩で息をしながらガルフと対峙したままジョシュアが尋ねる。
「セシルちゃんはちょいと休憩中だ。代わりに俺が援護するから安心しな」
「……それはなんとも心強い」
マーカスが親指を立て爽やかな笑顔を見せると、ジョシュアは苦笑いを浮かべた。
「なんだ、嬢ちゃんはリタイアか?へへへ、まぁ楽しむのはこの後でいいか」
「お前に〝この後〟はねぇよ!」
ジョシュアは一気に距離を詰める。
ガルフは爪を立て右腕を振るが、ジョシュアは身をかがめて躱し、手にしたダガーを突き立てる。ガルフは左手でそれを受け止め、勢いそのまま回転し回し蹴りを放つ。ジョシュアは吹き飛ばされながらもこれをギリギリでガードした。
目まぐるしく変わる攻防。超接近戦が続くも、互いに決定打は決められない。
「おい、ジョシュアだったか?この俺と肉弾戦で互角とはやるじゃねぇか」
少し距離を取ったガルフが語りかける。
「へへ、そりゃどうも」
苦笑いのジョシュアの頬を汗が一筋流れた。
静かな緊張が訪れる。
「やべぇ。入る隙がねぇぞ」
マーカスは離れた位置から二人を見つめ、参戦のタイミングを見計らっていたが、これ程の接近戦では銃も魔法も使えなかった。
「アイツよくあんな化け物と接近戦繰り広げられるな……なら、今だ」
マーカスは一人何かに決意し頷くと、ガルフに向かって駆け出し銃を乱射する。
「なんだ?モブキャラは大人しくしとけよ」
ガルフはガードを固めつつ突進して行く。
マーカスの弾丸はガルフに命中するも、ガードに阻まれダメージはほとんどあたえられていない。
一気に迫るガルフの右手が鋭利な手刀となり突きかかる。マーカスはギリギリで躱すも頬を掠め血が滴った。
さらにガルフの左手でなぎ払う攻撃。マーカスはバランスを崩しつつ後方に跳び、これもなんとか回避する。
「なんだ?飛び込んできたかと思えば逃げまわりやがって」
苛立ち、怒気を帯びたガルフの声が低く響く。
ははは……ジョシュアもセシルちゃんもよくあんな化け物の懐に飛び込むよな――。
マーカスは心中で思わず笑っていた。
「……だが許されないよな。『風の刃に刻まれよ切り裂く風』」
マーカスが右手を振り上げると、三筋のカマイタチが土埃を巻き上げガルフに向かう。
しかしガルフは右腕を振り下ろし、なんと腕力で迫るカマイタチを叩き潰した。
「……!!ま、まじかよ、力技にも程があるだろ……」
驚愕の表情を浮かべるマーカス。
「この魔法はもう何度も見てる。慣れちまったよ」
ガルフはその大きな口から舌を出し、不敵な笑みを浮かべていた。
だが次の瞬間、背後からジョシュアがダガーを頭上に振りかざし飛びかかった。
振り返るガルフの顔面を、ジョシュアのダガーがとらえた。
「ぐおぉぉぉ」
ガルフが顔面を押さえ悶絶する。
「俺のことも忘れんなよ」
マーカスはマグナムを構える。象すら倒せる威力を至近距離で放つと、銃声と共にガルフの背中から血飛沫が舞う。
反動で体勢を崩しながら更に構えようとするマーカス。しかし怒りの形相で睨むガルフと目が合い、背筋が凍りついた。次の瞬間凄まじい衝撃と共にマーカスは宙を舞う。
十数メートル先まで吹き飛ばされ、転がるマーカスはそこで蹴りを受けたのだと気付く。
「マーカス!!」
ジョシュアが地を転がるマーカスに駆け寄る。
「はっはっは、ちょいとムカついたぜ、兵隊ども」
ガルフは血が流れる左目を押さえ、笑っていた。




