新兵器②
新兵器②
ジョシュアとセシルは並んでアデルの部屋の前に立ち、軽くノックした。
「アデル。俺だ、ジョシュアだ」
「ああ、開いてるから入ってくれ」
中に入ると、二人は思わず言葉を失う。床には数式の書かれた紙が散乱し、テーブルの上には飲み終えた空き缶が無秩序に積まれている。部屋の奥では、背を向け前傾姿勢でうずくまりアデルが作業に没頭していた。
「ちょっとアデル、せめて顔ぐらいこっち向けなさいよ。連れて来いって言ったのはあんたでしょ」
「ああ、セシルも来たんだな。今ちょっと手が離せないんだ。そこら辺に座っとけ」
背を向けたままのアデルに、セシルは眉根を寄せ、苛立ちを隠せずにいた。
「来ちゃ悪いかしら!? ソファも椅子も、脱ぎ散らかした服や荷物で溢れてるのに、座れる所なんてないんだけど!」
苛立つセシルの前にジョシュアが割って入る。
「落ち着けって。アデルも忙しいんだ。ほら、そこらへんの服寄せれば座れそうじゃないか」
イライラが募るセシルを、ジョシュアはやんわりと制しながら座らせた。しばらくの間、二人は大人しく待つ。
やがてアデルが作業を終え、ようやく身体を二人に向けた。
「悪いな、わざわざ来てもらって。今微調整してたんだ。さあ、この改造バトルスーツ、試してみてくれ」
アデルから渡されたバトルスーツを手に、ジョシュアとセシルは顔を見合わせ首を傾げる。三人は部屋を出て、屋外の演習場へと向かって歩き出した。
演習場に着くと風に混じって火薬の匂いが鼻につく。遠くでは銃声や爆発音も聞こえていた。
「ちょっとアデル、勝手に演習場使っていいの? 怒られない?」
「ああ、許可取ってある。端っこの方なら問題ないってさ。さあジョシュア、早速着てみろ」
アデルから渡されたスーツは、普通のものにリュックのような装置が背中に取り付けられた構造だった。
「背中のリュックは何だ? それに少し重くないか?」
「試作品だからな。背中のクリスタルに魔力を流し込むんだ。つまりソルジャーでも魔法が使えるって訳だ」
ジョシュアとセシルは顔を見合わせ、目を大きく見開く。
「……え、俺が魔法を!?」
ジョシュアの驚く様子を見て、アデルがニヤリと笑う。
「そう。上級魔法は無理だけど、試すには十分だ。セシル、手伝ってくれ」
アデルの呼びかけにセシルが応じるように歩み寄った。スーツに近づくと、アデルは笑みを浮かべる。
「ここをこうすると開く。これに魔力を込めてくれないか?」
リュックを開けると、水晶のようなクリスタルが姿を現した。
「何これ? クリスタル? これに魔力を?」
「そう、特殊なクリスタルの力を応用してる。元々ラフィン共和国の技術で、戦争末期には実用化されていたんだ」
「なるほど……だから戦争末期にラフィン側にウィザードが多かったのか」
セシルは作業を続けながら会話を重ねる。やがて魔力の注入は完了し、準備は整った。
「よし、ジョシュア。セシルは風系魔法の得意だから、お前も風系になるはずだ。さっそく試してみろ」
「ちょっと待てよ、魔法ってどうやって使うんだ? いきなり言われても、何すればいいかわからない」
ジョシュアは戸惑いを隠せない。元々魔法を使えない彼にとって、説明もなく「使え」と言われても戸惑うのは当然だった。




