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激突③


 マーカスとリザードマンの戦いは互いに決定打を欠き、長期戦の様相を呈していた。


 それも当然のこと。近接戦闘を得意とするリザードマンに対し、マーカスは一定の距離を保ち、決して近づこうとはしなかったのだ。


「てめぇ、やる気あんのか!?」

 

 ガルフ達と比べると、それほどスピードもないリザードマンは距離を詰めれば逃げるマーカスに苛立っていた。


「なんでお前の距離に付き合わなきゃならねぇんだよ。何と言われようと俺はこの距離でやらせてもらうぜ」

 

 マーカスは手にした銃を構え、引き金を引く。弾丸は確実にリザードマンに命中するが、硬い鱗に阻まれ、ダメージを受けているような様子はなかった。


「だから効かねぇっつってんだろが!」

 

 リザードマンは弾丸など意に介さず、突進してくる。だがマーカスは再び距離を取り、攻撃をしのいでいた。


 このやり取りが延々と続いていたのだ。


「完全に泥仕合ね……イライラして、思わずトカゲの応援しそうになったわ」

 

 セシルは腕を組み、呆れたように呟く。


「セシルちゃん!大丈夫だったか!?」

 

 マーカスの呼びかけに、セシルは軽く微笑みかける。


「なんだ?あの人狼ども、しくじったのか?」

 

 マーカスが嬉々とした表情を浮かべる一方、リザードマンは困惑した顔で状況を見ていた。


「マーカス!クリスタルの魔力は?」

「駄目だ!とっくに尽きてる」

 

 自信満々に答えるマーカスに、セシルは眉を寄せて苦笑した。


「なんだ小娘、お前も距離を置くタイプか?」

 

「ははは、私さぁ、まだるっこしいのは嫌いなのよ。とっとと終わらせて戻らないと、向こうも心配でね」

 

 リザードマンが気だるそうに尋ねると、セシルは剣を手に取り、不敵な笑みを浮かべる。


「俺は気が立ってるんだ。手加減はできねぇからな。恨むんならその男を恨めよ」

 

「なんで今夜はこんなのにばっかりモテるのよ?マーカス、今日のディナーはトカゲの丸焼きにしてみたら?」

 

 セシルはマーカスをチラリと見て微笑む。マーカスは驚愕した表情で首を横に振っていた。


「さっきからトカゲ、トカゲと……俺の名はサミュエルだ!!」

 

 そう叫ぶと、リザードマン=サミュエルがセシルに飛びかかる。


 距離を詰めてくるサミュエルに対し、セシルは動かずその場で体勢を低くし鋭い視線で剣を構える。


「見た目と名前が合ってないのよ!」

 

 セシルはサミュエルに向かって飛び出すと、カウンターで剣を合わせた。思わぬ攻撃にサミュエルは身を捻って交わすが、セシルの切っ先が微かに掠める。


「……お前、ウィザードじゃねぇのか?なんで剣で接近戦やってやがる……ハイブリッドか?」

 

 本来、ウィザードはソルジャーより身体能力が低く、剣を片手に人型獣人と接近戦を繰り広げるなど考えられないことだった。


「さて、何ででしょうね?私が何でも出来ちゃうくらい強いのか?それとも貴方達がウィザードに接近戦で敗れるくらい弱いのか?」

 

 セシルは片手に剣を持ち、不敵な笑みを浮かべた。


 私がハイブリッド?ま、無駄に警戒してくれた方が楽だけど……ただあの鱗、相当硬いわね。もう一度近付いて、あのバロンに決めた剣と魔法の合わせ技を打ち込むしかないかな――。

 

 セシルは先程のカウンターも踏まえ、冷静に戦況を分析する。


 その様子を距離を置いて見守るマーカスは、若干の疎外感を感じていた。「俺、蚊帳の外じゃないか……」と思わず呟いた。

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