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激突②


「いいか、バロン!挟み撃ちにするぜ、合わせろ」

 

 ガルフとバロンが飛びかかり、再び前後から挟むように二人がセシルに迫る。


 身構えるセシルの前では一陣の風が吹き、ガルフ達の視界を僅かに遮った。


「はっは、今更目眩かよ、姉ちゃん」

 

 ガルフは吹き荒れる風や砂埃など気にもせず腕を振り抜く。背後のバロンも同時に右腕を振り下ろした。


 確実に捉えた――。


 そう確信した二人だったが、二人の腕は虚しく空を切るだけで、手応えなど無く、セシルの姿はどこにもなかった。


「な!?どういう事だ?何処に消えやがった……」

 

 ガルフが周囲を見渡すが、完全にセシルの姿を見失っていた。


 セシルは寸前まで砂塵で視界を遮り、飛んだ事を悟られないようにしていたのだ。自らに風の魔法をかけ、一瞬にして上空へ高々と舞い上がっていた。


「吹き荒れよ暴風、我に代わりて敵を討て──『荒れ狂う暴風(ウィンドストーム)』!」

 

 セシルが詠唱を唱えると、突如凄まじい暴風が巻き起こり、岩や遺跡の欠片も巻き込みながらガルフを包み込む。


「クソ!また風かよ!」

 

 踏ん張ろうとするガルフも、吹き荒れる暴風に抗えず、上空へ舞い上げられ、十数メートル先まで吹き飛ばされた。


 セシルの狙いは二つ。

 一つはガルフを吹き飛ばしてバロンとの距離を離すこと。

 二つ目は、バロンの視界を遮ることだった。


 チャンスは一度。ここで確実に仕留める――!

 

 上空から降り立ったセシルは一気にバロンの懐へ飛び込み、腰の剣を抜いた。


 少しでも打撃を受ければ致命傷になりかねない相手の懐に飛び込むのは並大抵の覚悟ではない。だが、ここで手をこまねいていては勝機は消える。

 セシルは強気な態度の裏で冷静に戦場を分析し、決死の覚悟をもって突入した。


「剣よ、風を纏え。風よ、我が剣に力を授けたまえ!」

 

 剣に竜巻のような風がまとわりつく。


 ウィンドストームの暴風と、飛び散る岩や遺跡の欠片から身を守りつつ、セシルは一気にバロンの胸へ魔力を纏った剣を突き刺した。


「がはっ……!?」

 

 竜巻を纏った剣はバロンの胸を貫き、バロンは何が起こったか理解できずに一瞬凍りつく。


「……おのれ」

 

 己の胸を貫いた剣を掴もうと手を伸ばすが、竜巻を纏った剣は触れることさえできない。


「終わりよ──切り裂く風(ウィンドカッター)!」

 

 剣に纏った竜巻が風の刃となり、バロンを内側から容赦なく切り裂く。ワータイガーといえども身体の中からの攻撃には耐えきれず、四散した。


「……私としたことが、こんな所で……」

 

 首だけとなったバロンは、なおもセシルを睨みつけていた。


「呆れた生命力ね。そんな状態でもまだ息があるなんて。私、しつこい男は嫌いなの」

 

 セシルは首だけのバロンに目を丸くした。


「バロンを殺りやがったのか。さすがにもう許さねえぞ!」

 

 怒りに震えるガルフが立ち上がる。


「こっちだって散々殺られてんのよ。非戦闘員である議員達を襲っておいて何被害者ヅラしてんの?」

 

 挑発に笑みを浮かべていたセシルだが、その瞳は怒りに満ち溢れていた。


「はっ、奴らにはその責任があるんだよ」


 ガルフが苦々しい表情で吐き捨てると、後ろから声が響いた。


「おいセシル!大丈夫か!?」

 

 聞き慣れた声に振り返ると、そこにはジョシュアが立っていた。


「ちょっと遅いんじゃない?」

 

 セシルは一瞥し、呟く。


「いや、あっちでも色々大変だったんだよ。それより、やっぱりガルフてめぇか」

 

 ジョシュアはガルフを睨み、銃を構える。


「へへへ、遅かったな兵隊。いいぜ、二人まとめてかかって来いよ。第二ラウンドだ」

 

 ガルフは舌を出し両手を広げ、構える。


「いや、貴様とはサシでやらせてもらおうか。セシル、下がっててくれないか?」

 

 セシルは悪戯っぽく微笑むとウィンクし、後方に下がる。


「大丈夫なの?まぁ向こうのマーカスが心配だったから丁度良かったけど。あんまり無理しないでねジョシュア。やばくなったら『助けて~』って叫べば駆け付けてあげるから」


「はは、そりゃどうも……」

 

 ジョシュアは苦笑いし、再びガルフに向き直る。


「へへへ、後悔するなよ、兵隊」

「俺はお前を後悔させてやる、ガルフ」


 二人の間に張り詰めた緊張が広がる。

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