激突
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遺跡跡では、セシルが人狼のガルフと人虎のバロンと対峙していた。少し離れた場所では、マーカスとリザードマンが互いに距離を取り構えている。
「ねぇ、ガルフだったっけ?貴方達、何が目的なの?人の所に乗り込んで暴れ回ったかと思えば、こんな所で待ち伏せしたり」
セシルが挑発的に問いかける。
「はっはっは、大して目的なんかねぇよ。あえて言うなら……勝てたら教えてやる」
ガルフも笑いながら、まともに答えようとはしない。
「じゃあ、殺さないように気をつけなきゃ。アナベルがどこにいるのか、ちゃんと答えてもらわないと」
「はっはっは、もし今降伏するなら、ベッドの中でなら教えてやってもいいぜ」
「ははは……本当ストレス溜まるわ」
互いに見下すような口調で軽口を叩く。だがセシルの目つきは次第に鋭くなり、足元では不自然に風が舞い始める。
『風の刃に切り刻まれよ切り裂く風』
セシルが唱えると、風刃が地を這い砂煙を上げてガルフとバロンを襲った。咄嗟に腕を交差させて、防御した二人の身体を風の刃が切り刻む。
その隙に、セシルは二人から素早く距離を取った。
「はっはっは、この前兵隊が使った魔法と同じなのに、姉ちゃんの方が鋭いな」
防御した腕から血を滴らせ、ガルフは笑いながらセシルを睨む。
「ふん、そりゃこっちが本家なんだからね」
セシルは移動しながらハンドガンを手に取り、ガルフに向かって引き金を幾度も引く。
放たれた弾丸は確実に命中するが、ガルフの強靭な肉体には傷一つ付けられなかった。
「玩具みたいなハンドガンで俺様に挑むとは無謀だろ」
ガルフは爪を大きく振りかぶり、一気に距離を詰めてくる。
だがセシルはニヤリと笑う。
「やだ、近寄らないでよこの変態」
セシルが腕を下から上に振り上げると、竜巻が巻き起こり、飛びかかるガルフを一気に包み込んだ。
竜巻に飲まれたガルフは空高く舞い上がり、十数メートル先まで吹き飛ばされる。
直後、セシルの背後に忍び寄ったバロンが右腕を振り抜く。
不意を突かれたかと思われたが、セシルは素早くしゃがんで躱すと、迎撃体勢を整えていた。
背後からの攻撃。しかもガルフとの挟撃なら確実に捉えたと思ったバロンはその一瞬、動きに空白が産まれる。
「近寄らないでって言ってるでしょ!!」
セシルの右掌に風が集まり、凝縮される。
「暴風衝破!!」
凝縮された風の塊を胸に受け、バロンは吹き飛ばされると、遺跡の壁に激突した。
「強えな姉ちゃん。俺とバロン、二対一でも全く引けを取らねえとは」
ガルフが立ち上がり、セシルを睨む。先ほどまでの余裕の笑みは消えていた。
瓦礫に埋もれたバロンも立ち上がり、胸を押さえてセシルを睨んでいた。
「ふふふ、今頃気付いたの?謝ったらもう少し優しく躾てあげるけど?」
セシルは強気な姿勢を崩さず、不敵な笑みを浮かべていた。
だが、いくらセシルがウィザードとして突出した能力を有していても、生身の身体で獣人二人を相手にする事の危険は明白だった。
もし一撃でもまともに受ければ、華奢なセシルはひとたまりもなく形勢は逆転する。
ふん、一撃も許されないなんて……何なのこの不公平なハンディキャップは――。
心中で呟きながらも、セシルは強気な仮面を崩すことはなかった。




