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潜入⑥


 ボーラを抱えながら走るバスケスは、ようやく地上へ出る階段の手前まで辿り着いた。


「ボーラ、大丈夫か?俺の身長がもう少しあれば、もうちょっと楽に運べたんだけど」

 

 バスケスは苦笑いしながら自虐めいた言葉を投げかける。


「ふふ、本当ね。貴方に身長があれば文句は無いけど……まぁ、今更どうしようもないわ。無い物ねだりしても仕方ないし」

 

 ボーラは力ない笑みを浮かべた。


 この階段さえ上り切れば地上に出て手当が受けられる。だが、迫る追手の銃撃はますます激しくなり、二人は岩陰に身を潜めるので精一杯だった。


「……バスケス、もう貴方だけでも行きなさい。貴方一人なら地上までなんとかなるでしょう」

 

「何を言ってる!?置いて行けるわけがないだろ。今回ばかりは聞かないぞ」

 

「ここにいてくれるのは嬉しいけど、このままじゃ二人共助からないわ」


 ボーラの言う通りだった。追手の数は増え、銃撃は激しさを増す。素人同然の相手とはいえ、多勢に無勢は明らかだ。しかも、手持ちの残弾は僅か。ボーラの体力も限界に近い。


「……ボーラ、最後に俺のバトルスーツに魔力を込めてくれないか?」


 バスケスはぎこちない満面の笑みで問い掛ける。

 

「ええ、いいわよ……でももうあまり入れられそうにないけど……あと、もう少し上手く笑いなさいよ。まぁそれが貴方らしいけどね」


 ボーラは微笑みながら、バトルスーツのクリスタルに手をかざし魔力を注入する。


「満タンとはいかないけど、火球三、四発は放てるくらいには溜まったわ」


 血の気が引いた青白い顔に荒い呼吸。医療知識がなくとも、ボーラが限界であることは誰の目にも明らかだった。


「ありがとう、ボーラ……数秒でも稼げればいい」

 

 バスケスは手持ちの爆薬と手投げ弾を追手に向かって投げ放つ。


 閃光と同時に爆音が鳴り響き、粉塵が舞い視界を遮る。バスケスは意識を集中させていた。

 ボーラが訓練中に教えてくれた魔法『もうワンランク上のやつ』を使うときが来たのだ。


「ここで訓練の成果を出さなきゃ、いつ出すんだ」

 

 バスケスは自らを鼓舞し、天井に向かって手をかざす。


「出来るはずだ!爆裂弾(バーニングショット)!」


 バスケスの掌に光球が現れ、バスケスはそれを天井目掛けて放つ。光球は天井に着弾し、轟音と共に爆発が起こった。瓦礫が崩れ、下敷きになった信者達の悲鳴が洞窟内に響き渡る。


「後は祈るだけだ!」

 

 バスケスはボーラを抱き上げ、一気に階段を駆け上って行く。


 幸運が重なった。手投げ弾で視界を遮られた素人同然の信者達は混乱していた。あれが手馴れた兵であれば狙撃していたかもしれない場面でもあった。さらに、訓練中は一度も成功しなかったバーニングショットが決まったことも、二人の日々の努力の賜物だった。


 階段を駆け上がり、長椅子を蹴飛ばして地上に出ると、バスケスは腹の底から声を張り上げた。


「救護班!重傷者だ!!至急来てくれ!!」


 叫ぶバスケスの腕の中で、ボーラは既に意識を失いぐったりとしていた。

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