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新兵器


 N.G.0200年


 セントラルボーデン国家の首都、朝の街は柔らかな日差しに包まれていた。

 舗道を行き交う人々は、それぞれの目的地へと足早に歩きながらも、時折笑みを交わす余裕を持っている。

 空を見上げれば、数機の小型飛行艇が優雅に滑空しており、その下を隊列を組んだソルジャー達がパトロールしていた。


「おはようございます、大尉」


 街角の訓練施設前で軽く頭を下げる兵士たち。

 彼らの足取りは軽く、背筋はピンと伸びており、平穏な日常の中にも規律の厳しさが漂っていた。


 広場のカフェでは、人々が魔法で作った軽食を楽しむ様子も見受けられる。

 小さな子どもが、指先からふわりと風を吹かせて遊んでおり、周囲の人々は微笑ましく見守っていた。


 街の喧騒の中で、ジョシュア・ゼフは一人、軍本部へ向かって歩いていた。

 彼の足取りは軽やかでありながら、目は街の光景を注意深く追っていた。

 この春、士官学校を卒業し、晴れて正規の軍人となったジョシュアの日常は平穏そのものだが、彼の心にはいつも、訓練や任務への責任が影を落としている。

 

 ジョシュアはセントラルボーデン国家軍本部に入ると一人、食堂へ向かって歩いていた。


「あら、ジョシュア小隊長殿。どちらにお向かいですか?」


 明るい声。小柄な女性、セシル・ローリエが笑みを浮かべながら声を掛けてきた。

 言葉は丁寧だが、どこか冷やかしを含む響きだ。


「セシル。お前、からかってるだろ?」


 ジョシュアは振り返り、呆れた様子で問い掛ける。


「あら、同期が編入されたばかりの部隊で、いきなり小隊長に抜擢されたんですもの。尊敬の念を込めて声を掛けたのに、気に入らなかったかしら?」


 赤い軍服に身を包み、長いブロンドの髪を片手でかき上げるセシル。

 その笑みは不敵で、軽く挑発するような雰囲気を漂わせていた。


「ふん。俺の小隊、部下は3人しかいないし、2人は俺と同じ新卒だ。しかも実戦部隊でもなく、新兵器をテストする技術開発局の部隊だぜ。片やお前は魔法兵団特別遊撃隊入りだろ? そんなお世辞にしか聞こえないぞ」


「まぁ、私は天才だから仕方ないじゃない。それにジョシュアはソルジャータイプ、私はウィザードタイプ。比べても仕方ないでしょ。ソルジャー首席として卒業して、技術開発局とはいえ小隊長に抜擢あんたを祝う気持ちはあるわよ」


 セシルは腰に手を当て、鼻で軽く笑う。ジョシュアは目を細め、少しだけ笑みを返した。


「そうか、悪かった。じゃあ素直に受け取ることにするよ、ありがとう。それでアデル知らないか?昨日から俺のバトルスーツ持ってどこか行きやがったんだけど」


「さぁ?また研究室に籠って何か作ってるんじゃない?あんたのバトルスーツにミサイルでも取り付けてるとか」


 そう言ってセシルはお腹を抱えて笑っていた。


「そんな事されてみろ。動きづらくてしょうがない」


 苦笑を浮かべるジョシュアを見ても、セシルはニヤニヤとした笑みを浮かべていた。

 二人は会話を続けながら、廊下のタイルを踏みしめ食堂へ向かう。


 ジョシュア、セシル、アデル。

 士官学校時代、三人とも“天才”と呼ばれた存在だった。

 

 •ジョシュアはソルジャーとして抜群の身体能力を誇り、在学中から実践に赴く。

 •セシルは風を操る魔法の達人で、特別遊撃隊入りが確実視されていた逸材。

 •アデルは技術開発局所属、座学でトップの成績を収めた頭脳の天才。将来は国の中枢を担うと言われていた。


 そんな時、ジョシュアの電話が鳴り響く。

 驚き画面を確認すると『着信アデル』の文字が表示されていた。


 ジョシュアは僅かに口角を上げ電話に出る。


「ああ、アデル。ちょうどセシルとお前の話題をしてた所だったんだ」


「ああセシルも一緒か。ちょうどいい。今から俺の部屋に来てくれないか?昨日預かったお前のバトルスーツ、改良してみたんだ」


 昨日自身のバトルスーツを勝手に持っていかれ、尚且つ改良までされたと聞かされたジョシュアは首を傾げる。


「アデルなんだったの?」


 セシルが不思議そうに覗き込み問いかける。

 ジョシュアは首を軽く振りながら苦笑した。


「いや、なんか俺のバトルスーツ改良したから今から来いってさ」


「へぇ、本当にミサイル付いてるんじゃないの?」


「そんな事なってたらあいつのセンス疑うぞ。セシルも一緒だって言ったら『ちょうどいい』とか言ってたぞ。お前も一緒に来るだろ?セシル」


「えっ、なんか面倒くさそう。でもあのアデルが改良を施したバトルスーツって少し興味あるかな」


 少し億劫そうにしながらも、セシルもジョシュアと一緒にアデルの部屋へと向かう事となった。

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