シエラ②
基地に戻ったジョシュアはしっかりとカストロに報告していた。
「なるほどな。被害者シエラ・モスさんはたまたま自宅を出た所、突然人狼共に拐われたと」
「はい。悲鳴を上げて抵抗したそうですが、あの化け物共です。女性がいくら抵抗してもどうにもならなかったようですね」
ジョシュアの報告を聞き、カストロは何度も頷いていた。
「なるほど、よくわかった。少尉席に付け。そして全員こっちを向け」
カストロが隊全員を見渡しながら声をかけると、全員が表情を引き締めてカストロに視線を向ける。
全員の視線を集め、カストロがゆっくりと口を開いた。
「全員よく聞け。我々カストロ中隊に明日一日、特別休暇が与えられた。日頃の疲れを癒し、今後予想される作戦に向けて英気を養ってくれ」
カストロの言葉を聞き、ジョシュアは戸惑いながらも顔を綻ばせていた。
だが、そんなジョシュアを見て、先輩であるマーカスがそっと囁く。
「うかれんなよジョシュア。こういう特別な休暇ってのは、後に大事な作戦が控えてる事が多い。しかも危険な作戦である場合がほとんどだ」
普段は軽口を叩く事も多いマーカスの言葉に、ジョシュアは唾を飲み表情を引き締め直す。
その後、普段通り訓練を行い自宅に戻ったジョシュアは早めに就寝する。
翌日。
早くに目覚めたジョシュアが通信端末を手に取ると、新しいメッセージが来ている事に気付いた。
指先で軽くタップすると、それは昨日連絡先を交換したシエラからだった。
『こんにちはジョシュア。もしよかったら今度ご飯でも食べに行きませんか?ゆっくりお話しましょう』
短いながらもシエラの明るく誠実な人柄が感じられるメッセージを見て、ジョシュアも思わず笑みがこぼれる。
『こんにちはシエラ。実は今日、ちょうど休みになったんだ。よかったら今日のお昼どこかで食べようか』
ジョシュアが返信すると、すぐにシエラから電話がかかってきた。
「はい、シエラか?」
「はい。今日休みになったんだ。じゃあランチに行きましょうよ」
「OK。じゃあシエラの家に迎えに行くよ」
そう言って電話を切ると、ジョシュアは急いで支度をしていく。
女の子とランチ行くなんて滅多にないからどんな服で行くべきだ?いや変に意識しない方がいいか?それに相手は事件の被害者だしな。いやでもシエラの方から誘ってくれたんだし――。
少し戸惑いながらも、そうして支度を終えたジョシュアがシエラの自宅を訪ねると、黒のワンピースに身を包んだシエラが満面の笑みで迎えてくれた。
「早いね。私、あんまりよそ行きの服とか持ってないから普段着だけど、これで大丈夫かな?」
少し上目遣いで尋ねるシエラを見つめ、ジョシュアは照れたように頭を搔いた。
「全然いいって。ランチ行くだけなんだからいつものシエラでいいよ」
照れながら視線を逸らすジョシュアを見て、シエラが笑みを浮かべる。
「ふふ、さぁ行きましょう。今日は仕事じゃなくて普通にデートだよね?」
ジョシュアの心の乱れを見透かしたようにシエラは笑い、ジョシュアの手を引いて歩き出した。
傍から見れば幸せそうな二人が、笑みを浮かべながら街の雑踏へと歩いて行く。




