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初陣⑤


「ふぅ……」

 

 左手に銃、右手に両刃のダガーを逆手に握り、ジョシュアは深く息をついた。

 

 銃、ダガー、そして魔法。何がこの怪物に通じる――?

 

 初めて対峙する人狼に、ジョシュアは迷いながら構える。


「へへへ、どうした? ビビってるのか?」

 

 ガルフが大きな口から舌を出し、挑発する。


「はっ、誰が。どう料理してやろうかと考えて……」


 その言葉の途端、ガルフの鋭い爪が眼前に迫った。

 前髪数本を散らし、体勢を崩しながらも上体を反らす。空気を切り裂く音が耳を打ち、眼前を爪が掠めるが、ジョシュアはかろうじて攻撃を躱す。


 だがガルフは攻撃を緩めることなく、研ぎ澄まされた左右の爪で追撃する。

 防戦一方のジョシュアは必死に躱し続けるが、爪の切っ先が徐々に間合い詰め始める。


 その時、後方から銃声が響き、空気を切り裂く一発がガルフへ迫った。

 ジョシュアの背後、エイトリッチが放った弾丸だ。

 だがガルフは微動だにせず、身をひるがえして弾丸を躱す。


「フン。援軍か」

 

 ガルフは煩わしそうに後方に視線をやる。

 弾丸は命中しなかったが、防戦に追われていたジョシュアには十分な援護となった。


「いい加減、俺のターンだ」

 

 右手を下げ構えると、不自然に微風が吹きはじめ、足元に砂塵が舞う。


「なんだ?」

 

 ガルフが半身で構え、怪訝な表情を浮かべる。


「全開でいくぞ。『風の刃に刻まれよ切り裂く風(ウィンドカッター)』!」

 

 ジョシュアが唱え、右手を振り上げると、魔力を纏った三筋の鋭い疾風が地面を滑るようにガルフに迫った。

 咄嗟に腕をクロスさせて防御するガルフだが、腕や足に切創を負う。


「魔法も使えるのか……ハイブリッドか?いや、そのスーツのおかげか」

 

 血が滴る腕の間から、ガルフはジョシュアを睨むように呟いた。


 ガルフはすぐさま反転し、もう一人の人狼に向かって叫ぶ。

 

「シャルザーク!女を一人こっちによこせ!そろそろ時間だ!!」


 受け取った女性を片手で掲げ、ジョシュアに見せつけるガルフ。

 巨大な手に掴まれた女性は苦悶の表情を浮かべていた。


「……た、助けて……」


 女性は消え入りそうなか細い声で呟き、虚ろな目でジョシュアを見つめた。

 思わずジョシュアも力が入り、奥歯を強く噛み締める。


「おい。その人を離せ。人質取るなんて卑怯だろ」

 

「ははは、本当ならもう少し戦ってもいいが、あいつらが帰ってくると面倒だ。ここらで退散だ。ちゃんと受け取れよ、助けたいんだろ?」


 ガルフが女性を揺さぶり大きく口を開けて笑う。女性が苦痛に顔を歪める中、突然ガルフは無造作に女性を放り投げた。玩具の人形のように女性は宙を舞い、ジョシュアは目で追い舌打ちした。


「くそっ!野郎!!」

 

 ジョシュアは、慌てて放り投げられ落下する女性に駆け寄り、地面へ落下する寸前に滑り込むようにして抱き止めた。


「あの野郎!!」

 

 体勢を整え振り返るが、そこにはもうガルフの姿はなかった。


「少尉、駄目だ。逃げられた」

 

 後方で全てを見ていたエイトリッチが通信越しに告げる。


「俺も終始、同じように相手が人質を脇に抱えてたから攻撃もできなかった」

 

 バスケスも首を振りつつ歩み寄る。


 救助した女性を腕に抱え、ジョシュアは小さく舌打ちした。


 決定打は欠いたが、人質二人を救助出来た事はせめてもの成果だった。

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