初陣④
パーティー会場での惨劇から十数分後、基地内で待機していたカストロ中隊に命令が下された。
「政治家達が開いていたパーティー会場が何者かによって襲撃された。カストロ中隊はただちに会場へ行き、敵の殲滅、及び負傷者の救助を行え」
司令を聞いた隊員達が一気に立ち上がると、カストロが大声で指示を出す。
「いいか、テロ事件が起こり、部隊が出払った影響で我々にも出撃命令が出た。非武装の政治家達を狙うような卑劣な奴らに後れを取るなよ」
「了解!」
カストロの掛け声に全員が声を貼り上げ応える。
そんな中、更に通信が入った。
「緊急!基地から東二キロの地点で女性の悲鳴が聞こえたとの通報あり。近くにいた警官が向かったものの、警官とは連絡が途絶えた。先の襲撃事件との関連も疑われる。近くの者は向かえ」
通信を聞き、全員が顔を見合わせる中、ジョシュアがすぐに声を上げた。
「自分に行かせてください」
力強く言い切るジョシュアを見て、カストロが静かに頷いた。
「……よし、わかった。だが一人では行かせられない。バスケス、エイトリッチと三人一組で動け」
「了解!」
三人は声を揃え、バトルスーツを装備して街中を駆け抜ける。
改造型の新型バトルスーツに身を包んだジョシュアとバスケス、そして援護特化型のエイトリッチ。速度差を考慮しながら隊列を維持する。
通報地点に差し掛かると、バスケスが遠方を高速で移動する二つの影を発見した。
「少尉、あの人影……一般人の動きとは思えないんだが」
「距離を詰めたいが……エイトリッチ伍長、追いつけるか?」
隊列の乱れは三人一組の意味を失わせる――。
悩むジョシュアに、エイトリッチはにこやかに応える。
「とりあえず今は敵の脚を止めるのが先決かと。お先にどうぞ。すぐに追いつく」
三人は力強く頷き、距離を詰めにかかる。
射程に入った瞬間、影は反転し、ジョシュアへ石のような物を投げつけてきた。
咄嗟に身を翻し間一髪で避ける。
近づくとその人影は人ではなく、人狼だと気付く。
濃い体毛に覆われた体躯、三メートル近い身長。顔は狼そのもの。
ジョシュアは思わず呟く。
「……狼男……人狼ってやつか」
「はっはっは、よく避けたな。ガルフ様の攻撃を避けるとはやるじゃねぇか」
「何が攻撃だ。単に石を投げただけだろう」
「はっはっは、その石だって当たれば痛いんだぜ」
「……まぁ、当たればな」
鋭い視線で睨み合うジョシュアとガルフ。
その横ではバスケスともう一人の人狼も対峙していた。
「ガルフさん、どうしますか? こいつら」
「他で暴れるなとアナベルから言われてるが……仕方ない。お前が『女二人ぐらい拐って行こう』とか言うから、追いつかれたんだろう」
ガルフと相棒は、ニタニタと笑いながら会話する。
ガルフの方が明らかに上の立場だと窺える口ぶりだった。
ジョシュアの表情は一変し、鋭い視線をガルフに向ける。
ガルフは変わらずニヤつき、対峙する二人の間に張り詰めた空気が広がった。




