表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/67

64 レオン

 64話



「っ!?」


 レオンは激痛に目を覚ました。

 大声を出しそうになったが、歯を食いしばり、耐えた。

 怖かったけど、冷静に状況を確認する。


 周りは暗く、壁の上にある光取りの窓だけが明るい。


 体は……まったく動けない。


 暗闇に目が慣れ、よく見ると、両腕を後手で柱にくくりつけられていた。


 激痛の元である右親指を他の指で探る。

 だが、そこにはなにもなかった。


 しばらくして、切り落とされたのだと気付く。


 泣き叫びそうになった。

 だが声は出さない。

 無理やり呼吸を整え、周りを見渡す。

 首を後ろに回すと、ミリナとユリが、レオンと同じように柱へ縛られていた。

 二人は意識を失っているようだ。


 声をかけて起こそうとして、止めた。

 眠ったままなら、その方がいい。


 怖い思いをするのは自分だけで十分だ。

 レオンはそう判断した。



 古い建物だった。

 長い間誰も住んでいなかったのだろうと、たくさんの蜘蛛の巣や、厚く積もったホコリが、物語っている。


 レオンは気絶する前の記憶を思い起こす。



 _________________


 乱暴を働いた罰として、ギルは昼飯を抜かれたんだ。

 僕はパンを隠し持って、ギルを探していた。


 ギルは食事にうるさい。

 体を大きくして、冒険者になるためだ。

 僕はそのことを知っていたので、パンをこっそりあげようとしていたのだ。


 だが、どれだけ探しても、ギルの姿はどこにも見当たらない。

 昨日は夜遅くまで帰ってこなかったが、今にして思えば、この誘拐劇を誰かと計画していたんだろうな。


 そのとき外からミリナの叫び声が聞こえた。

 急いで駆けつけると、なんとギルがミリナを抱え、ナイフを突きつけてたんだ。

 ユリもいたが、どうしていいかわからないのか、立ったまま動けないでいた。

 僕はギルの暴挙を止めようとして……。


 __________________


 レオンの記憶はそこで途絶えていた。

 つまり、誰かに殴られたのだろう。

 後頭部の痛みがそれを証明している。



 これから僕達はどうなるの?

 ギルはどうしてこんな真似を?

 ここはいったいどこなの?


 そこまで考えると、レオンはあることを思い出す。

 もしかして『スノーレギンス』と『ブラッドハウンド』の決闘が関係しているのか?



 レオンがそのことを知ったのは偶然だった。

 レオンが夜中、トイレに起きたとき、台所から話し声が聞こえたのだ。

『大丈夫なの、ヴィオラ?』

『平気よ、私達すっごく強くなったんだから。クラリス姉さんは心配症ね』

『心配するに決まってるでしょ。相手は『ブラッドハウンド』なのよ?つい最近までAランクだった相手と決闘だなんて、無謀すぎるわ。——もしかして、孤児院のために無理してるんじゃない?』

『無理はしてないわ。でも、元はと言えば私のせいなんだし、ちょっとは力になりたいじゃない』

『あなたのせいって、ヴィオラ、それは——誰か、そこにいるの?』


 ここまで聞いて、レオンは聞き耳がバレてしまった。


 このときの会話で、ブラッドハウンドとヴィオラ達が決闘をすることを知った。

 決闘はいつなの?

 どうして決闘するの?


 クラリス院長にいくら聞いても、教えてもらえなかった。


 レオンの推測が正しければ、レオン達は『ブラッドハウンド』の連中によって人質となったのだ。


 他に考えられない。

 奴隷として売るのなら、親指を切り落とすなんて論外だもん。

 だって、親指のない奴隷の価値は激減するのだから。


 わざわざ商品の価値を落とすバカがいるのなら、話は別だけど。



 そういえば、ギルは『ブラッドハウンド』に憧れていたな。

 あ……つまりそういうことなのか。


 レオンの疑問は確信に変わった。


 ギル……バカなやつだ。

 どんなうまい話をされたのか知らないが、子供の指を平気で切り落とす奴が約束を守るはずないだろう。


 誘拐犯からすると、どう考えても、ギルを生かしておく理由がない。

 だが、ギルを生かさないってことは、レオン達も生かしておけないってことだ。


 特に、指を失い奴隷として価値の低いレオンは、もう終わりだろう。

 見た目が悪く、犯人の顔を知っているギルなんて、終わりじゃない理由があったら聞きたいくらいだ。


 だが、ミリナとユリは違う。

 売られる可能性がある。

 二人は見た目がいい。

 つまり商品価値が高い。

 奴隷として売られるのなら、最低でも生きてはいける。

 辛い目に遭うかもしれないが、死ぬよりはずっといい。


 レオンは光差す窓を見上げ、祈りを捧げた。


「女神アウレリア様、お願いします。

 どうかミリナとユリの命をお救いください。

 対価が必要ならば僕の命を捧げます。

 ソルディナの導きのもとに――この願いを託します」


 祈りを終え、レオンは目を閉じた。

 脳裏に浮かぶのは一人の少女の姿。


「最後にもう一度会いたかったな」


 そのとき窓の光がさっと遮られた。

 目を開けて、光のあった方を見上げる。


 窓の外になにかいる。


 あの輪郭は……猫?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ