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 とある荒野。


「うぉぉぉぉぉぉっ!!」


 2メル超えの重戦士セレーヌが強烈な《威圧》を放った。


「グモッ!?」


 太さ1メル、体長10メルもの魔蟲——デスワームが前進を止めた。

 その数三体。

 すべてのデスワームが鎌首をもたげたまま硬直する。

 いや、一番大きな一体が動き出した。

 デスワームが狙うはセレーヌ。


「喰らいなさい――《氷弾(アイスバレット)》」


 魔術師リリエットがセレーヌの後ろで氷の魔術を展開した。


 ダン! ダン! ダン! ダン!


 小さな氷の弾がリリエットの手から次々に撃ち出される。


「グモッ!グモッ!グモォォ!」


 氷の弾は、動いていたデスワームへ次々と命中する。

 弾は着弾と同時に潰れ、そのエネルギーが打撃となり、巨大な体を後退させた。



 弓師イリスは目を閉じ、両手をダラリと下げたまま、深く息を吐いた。


「ふぅぅ……」


「い、イリスさん、まだですの!?」


 魔術《氷弾》を撃ち続けながらリリエットが余裕のない声で叫ぶ。


「見えたし!」


 イリスがカッと目を開くと、その瞳は白眼まで黒く染まっていた。


「行け――《影縫い》!!」


 タタタッ!


 一呼吸の間に放たれた数十もの矢が、軌道を急降下させ、デスワームの影に刺さる。


「ぐもっ!?」


 デスワームが完全に動きを止める。

 リリエットが魔術の放出を止め、地面にへたり込んだ。


「ハァハァ……後はお任せしましたわ、ヴォオラさん……」


「了解! 行くわよ!――《迅歩》!」


 ヴィオラが大地を蹴り、弾けるよう移動すると、デスワームの真下で槍を構えた。


「魔槍術――《桜華(おーが)》」


 ザンッ!


 槍を横薙ぎに払うと、切っ先の軌跡から魔力の残滓が花びらのように舞い散ってゆく。


「グ……グモォォ……」


 ズルッ……。

 デスワームの胴に浮かんだ線を境に、その体がズレていき――


 ゴシャッ


 巨体の上半分が地面に落ち、湿った音を出した。


「やった! でも後二匹は……」


「ゔぃ、ヴィオラちゃん! も、も、もう無理ですぅ!」


 セレーヌの放つ《威圧》が次第に弱くなっていき、止まっていたデスワーム二体が動き出した。


「私は魔力と気力が空っぽよ!」

「ウチもだし!」

「ふふふ、わたくしはとっくの昔に魔力切れで死にかけてますわ」


「「「「…………」」」」


 4人は顔を見合わせると、頷き、せーので叫んだ。


「「「「助けて、レイヴァリア様ぁっ!!」」」」


「……仕方ないのう」


 4人の前にパッと現れ、ヤレヤレと息を吐いたのは、レイヴァリアだった。

 ただし、その姿はどう見ても大人の女性だ。

 金色に輝く長い髪を靡かせ、レイヴァリアは疾走した。


 ゴッ! ゴッ!


 目に見えぬほどの蹴りとともに鈍い音が2つ聞こえると、デスワーム二体が吹っ飛び、30メルほど先に落下する。


「グモォォォォ!!」


 デスワームは叫び、レイヴァリアを一目見ると、クルリと背を向けた。

 ガガガと地面に頭から潜り、モコモコと土を盛り上がらせながら逃げ去っていく。


 レイヴァリアは2つに分断されたデスワームをチラリと見て——。


「ようやく及第点といったところじゃな」


 右手に纏った『気』を消し、後ろへ向き直った。

 視線の先には地面に倒れ込みゼェゼェと息を荒げる『スノーレギンス』4人の姿があった。


「も、もうダメ……」

「ね、燃費悪すぎるし……」

「で、でも一匹は倒せました……」

「は、初めて倒せましたわね。でも、もう限界ですわ……」



「ふむ。どうにか形にはなってきたが、課題はやはり魔力量と魔力操作じゃな。

 休んでる暇はないぞ――《魔力供給》」


 レイヴァリアの手から光が放たれ、4人の体を包み込むと、底をついていた4人の魔力が一瞬で満タンとなった。

 レイヴァリアはパンパンと手を叩きながら言った。


「ほれ、いつまで休んどる? 

 早く立たんと次が来るぞ?」


 モコモコと盛り上がる土が、大地を揺るがしながら再び迫ってきていた。

 その数5つ。


「「「「こここ、この悪魔ぁぁぁぁっ!!」」」」


 4人は叫ぶと、飛び起きて、戦闘体制を取った。


「カカカカ、叫ぶ元気があるうちは、まだまだ大丈夫じゃ。

 ほれ、がんばれがんばれ」


 カカカという笑い声と、4人娘の悲鳴が、長く荒野に響き続けた。



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