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27 報酬の話

 27話



「おぇぇぇぇぇっ!! オロロロッ!」


 弓娘が盛大に吐き戻した。

 ワシの眼の前で……勘弁してほしいものじゃ。


「なんじゃなんじゃ、弓娘よ、なんとも、なさけないのう」


 《無限収納》から水筒を取り出し、手渡す。


 ルクセルティアを出発して一刻強。

 目的地直前で、弓娘に限界が来たのじゃった。


「弓娘言うなし。ウチの名前はイリスだし。——ゴクゴク、プハァ」


「さっさと立つのじゃ、イリス。すぐに出発するぞ」


「すぐに出発?アンタ何いってんの?後ろ見てみろし」


「後ろ?」


 振り返る。

 なるほど?

 残りの三人娘が大の字に伸びておる。

 なんとも貧弱な娘共じゃ。


 巨大な魔獣と戦う場合、獲物の背で長時間の戦闘を続けることもよくあることじゃ。

 そんなときに、いちいち体調を崩しておったら、命がいくつあっても足りぬぞ?


「ほれ、さっさと立たんか、小娘共」


「こ、小娘じゃないわよ。ちゃんとヴィオラって呼びなさいよ……ハァハァ」

「わ、わたしもセレーヌって呼んでほしいです……おぇっ!」

「わたくしの名はリリエットでしてよ?……うっぷ」


「ヴィオラに、イリスに、セレーヌに、リリエットや。——お主等、これから先、アビーに乗るのと、歩くのは、どちらが良い?」

「「「「この状況でそれ聞く?」」」」


 結果、満場一致で『アビーに乗るなら死んだほうがまし』となった。


 ここまで乗せてもらっておいて、なんという言いぐさじゃ。

 見てみろ。

 アビーが尻尾を垂らして、落ち込んでおるではないか。

 子猫サイズになってトボトボ歩くアビーを抱き上げると、これでもかと撫でくりまわしてやった。

 よく頑張った。

 えらいぞ、アビー。


 次に、ヨロヨロと立ち上がるヴィオラ達の背中をバシバシと叩き——


「シャンとせぬか!」


 と全員に気合を入れてやった。


「痛っ!——そんな根性論でなんとかなるわけ……へ?」

「ん?吐き気が……収まったし!マジラッキー!」

「あ、あれれ?さっきまで死にたいほど頭が痛かったのに、どうして?」

「それどころか、いまだかつてないほど調子がいいですわ!」


「よかったではないか。では先を急ぐぞ?」


 歩き出したワシの背中に、ヴィオラ達の戸惑いの視線が突き刺さる。

 ふん。

 気合と一緒に、こっそり治癒魔法をかけてやったのじゃ。

 感謝するがよい。



 ‡



 元気の有り余る娘たちと一刻ほど歩くと、すぐに集落の外壁が見えてきた。

 ほう。

 思ったより大きい村じゃな。

 道中に杖娘リリエットから聞いた話によると、今見えているイースティア村は、国内に流通する鉱物の3割を採掘していたらしい。

 していた、というのは過去の話だからじゃ。


 今では最盛期の半分以下に落ち込んでおるとのこと。

 原因はフレイムゴーレム。

 最も採掘量の見込める『ブラックミスト坑道』が、この魔物のせいで使えなくなったからじゃ。

 このゴーレムが現れたのは一年ほど前らしいのう。


 何組かの冒険者が討伐に挑んだらしいのじゃが、ことごとく失敗に終わったようじゃ。

 いったいなにをしておるのやら、じゃな。


 ワシの住んでいた森では、フレイムゴーレムなど魔獣どものオモチャじゃったぞ?

 集団で行動するエルダーコボルトにいたっては、何体ものフレイムゴレーレムを寒い季節の暖房として飼っておったくらいじゃ。


 かくいうワシも白雪の季にはお世話になったものじゃ。

 当然、花咲の季には粉々にしてやったがのう。カカカ。


 残酷ではないか、と思うかもしれんが、そもそもゴーレムは生物ではない。

 やつらは鉱物に指向性の魔力が宿っただけの魔鉱体じゃ。

 なので粉々にしても罪悪感など微塵も感じる必要がない。


「ねぇちょっといいかしら?」


 村まであと数十メルってところで、ヴィオラが声をかけてきた。


「どうしたのじゃ?そろそろアビーが恋しく——」


「それだけは絶対にありえないから。じゃなくて、村に入る前に確認したいんだけど、今回のクエストの、えっと……」


「報酬を、どうすんのってことだし」

「わ、わたし達も、他のクエストを放棄してここに来てるから、その……」

「もらう物をもらわないと生活ができない、ってことですわ」



「カカカ。安心するがよい。報酬はキッチリ五等分じゃよ」


「クエストに失敗したときは?」


「その時はワシがお主たちに成功報酬分を払う」


「は?そんなことして、あんたになんのメリットがあるのよ?」


「カカカ。それだけ自信があるということじゃよ」


「……信じていいのね?」


「無論じゃ。お主達は金の使い方でも考ておくがよい」


 ワシの言葉に、四人娘は飛び跳ねながら喜んだ。

 当然じゃな。

 クエストに成功しようと失敗しようと金が入ると言われたのじゃから。


「どうしよう!何買おうかしら!」

「あれと、あれと、あれを買って……。ヤバタン!マジテンションブチ上がるぅ!」

「た、食べ放題に行き放題……ムフフ。ジュル」

「ホホホ!そろそろ新しい杖が欲しかったところですわ!」


 ふむ?

 たしか報酬は300万ZLじゃったか。

 五等分じゃと、一人60万ZLじゃな。

 なんと焼き菓子屋の給料100日分以上じゃ。

 小娘共がはしゃぐのも無理はない金額じゃな。


 さて、ワシはどうするかの。

 女将様は断るじゃろうが、今までの宿賃も受け取ってもらおう。

 それ以上のものをワシは受け取っておるからな。


 残った金で贅沢するのもよいのう。

 菓子を全種類大人買いして、女将様たちと一緒に食べるのじゃ。


 そんなことを考えていたら腹が減ってきたのう。


 アビーのお陰で昼前に到着できたし、村で弁当でも食べるとするか。



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