25
25話
再び会議室に戻ると、まるで葬式のような空気が漂っておった。
「どうすんのよ、これ……」
反抗期娘ヴィオラが、頭を抱えておる。
「一ヶ月って。無理に決まってんじゃん……」
弓娘が机に突っ伏したまま、ボソリと呟いた。
「わ、わたし、どうなっちゃうのかな?」
巨漢の盾娘がオロオロしておる。
「セレーヌさん、『わたし』じゃなくて『わたくし達』ですわ。おそらく、わたくし達全員アイツラに弄ばれて、良くてアイツラの奴隷。最悪、売られて奴隷、ですわね。ホホホ……」
杖娘が乾いた笑いをこぼす。
「カカカ。なんじゃなんじゃ、お主達。負けることばかり考えおって」
「は?あんたが勝手なことするから、こんなことになってんでしょ!どう責任取るつもりなのよ?」
「勝てばよかろう?——ギデオンよ、今残ってるクエストで一番難易度の高いやつはどれじゃ?」
「イースティア村の鉱山クエストだが……。」
「それを受けよう。出発は明日の朝じゃ。——おい、小娘共、食料を三日分用意しておくのじゃ。当然ワシとアビーの分もじゃぞ?あ、カボチャは苦手じゃから、そのつもりでの」
「はぁ!? み、三日ってどういうことよ!?」
「仕方なかろう。月巡の日には焼き菓子屋の仕事があるのじゃから」
「いやいやいや!ツッコミどころが多すぎて何を言っていいかわかんないから!焼き菓子屋の仕事がそんなに高給なわけ!?」
「日当5000ZLじゃな」
「バババ、バッカじゃないの!鉱山クエストの報酬は300万ZLよ!?そんな安い仕事なんか放っておきなさいよ!」
「これこれ、あまりワガママを言うでない。ワシはお主のお母さんではないぞ?」
「ワガママはどっちよ!——はぁ、なんか頭痛くなって来ちゃった」
「む?それはいかんのう。明日から忙しくなるというのに、困ったものじゃ」
「いや、あんたのせいだから……。ねぇ、これからどうするの?あんたの頭の中がどうなってんのかチンプンカンプンなのよ」
「ふむ。——お主達は、ワシを信じられるか?」
「……んなわけないでしょ」
「どうやってさ?信じられるわけないじゃん……」
「わ、わたしも信じられません」
「右に同じ、ですわ」
「じゃろ?じゃから、まずは今回のクエストで、ワシの力を見せる。お主達は、ワシに付いてきて、ただ見てるだけでよい」
「「「「はぁっ!?」」」」
全員が立ち上がった。
ヴィオラが言う。
「あんた、わかってんの?鉱山に居座ってるのは『フレイムゴーレム』よ!?20メル以上の燃え盛る岩の塊に、あんたみたいな子供一人でどうするってんのよ!」
「それを見せるために行くのじゃ。達成したら、お主ら四人、ワシの言う事に従ってもらうぞ?」
「いいわ。もしあんたが一人でクエストをクリアできたら、なんでも言うこと聞いてやるわよ」
「……リョ」
「わ、わたしも、言うことを聞きます!」
「わたくしも、お約束いたしますわ」
「話はまとまったな。待ち合わせは、明日の1鐘の刻、場所はワシ達が戦った空き地じゃ——ほれ、さっさと買い出しに行かんか。店が閉まってしまうぞ?」
「…………」
なにか言いたげだったスノーレギンスの娘たちは、エルミナ殿にだけ挨拶をすると、部屋から出ていった。
「師匠……」
エルミナ殿がアビーを膝に乗せたまま、申し訳無さそうな顔をしておった。
「すまない……。師匠が普通の生活を望んでいるとわかっていながら、私は……」
「気にせずともよい。師匠は弟子のワガママを聞くものじゃ。まぁワシの師匠はワガママどころか、話すら聞かなかったがのう。カカカ」
「いつか、その話も聞かせてもらえるだろうか……」
「本気のワシから一本取れたらな」
「ふふ、そんな日が来るとは思えんが。——師匠、あいつらのこと、よろしく頼む」
「安心するがよい。悪いようにはせんよ」
そうしてワシは、ようやく宿へ帰ることができたのじゃった。
クエストは——まぁ、どうとでもなるじゃろう。




