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手紙のかなた  作者: あおぞら えす


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最短の出会い

「ここは・・・」

 リュウは白い息を吐いた。闇の世界は光を失った世界。音も何もかもが闇に吸い込まれていく。

ーここには死すらないな。俺の聞いていた世界とは違う・・・


 リュウが辿り着いた闇の世界。そこに『神』が今でも眠り続けると聞いた。その神によってゼノロワの王国がひどい状態になった。その話が嘘か真かを知りたくてこの地までやってきた。だが、真実が嘘だとすぐに理解した。そこは死を漂わせていない。今も生きる存在がそこかしこからリュウを見つめた。

『存在』の狭間と呼ばれる闇に近い道がある。それはこの世界に通じていた。この世界が何故、『闇』と呼ばれたか。

 ここは、闇を受け持つ者達が連なる世界。光とは逆であり、世界の裏とも言える場所。そこに、神などいない。正道とはちがう裏道。そこに居る者達を遙か昔から制御していたのは。


「おや、道を間違えられたのかしら?」

シルクハットの帽子がトレードマーク。死後の世界へと誘う男。彼らは皆正当な理由があって人に声をかける。死ぬ道を教えてくれる。

「ここに死神が現れるとは聞いていない。」

リュウはその存在をよく知っていた。第一世界に量産された存在。

「・・・。おや、あなたはリュウ様ですか?」

「・・・そうなる、な。」

その存在はしげしげと眺め、呟く。

「見目が変わられていて気づかなかったですよ。うーん・・・。」

「お前の主である『博士』は第一世界から早々に連れ出されているはず。」

「・・・。ええ。まぁ。ですが、あなたさまがこちらに来られるとは思ってもおらず。いけませんよ。この先はあなたが向かう場所ではない。」

「・・・お前達がそれを指図するとは。」

「それはそうです。この先は死界。実際に死ななければなりません。」

その存在は引き留めるために現れたということだ。

「・・・死ぬな、と?」

「えぇ。生きなければならない人は引き留めます。」

「・・・。俺が聞いている場所ではないのか?」

「何を聞いたのか、お尋ねしても?」

その存在に、情報をいくつか出した。ゼノロワの王国が消え去る必要はないが、このまま想いを殺して生きることはできない。

「そうですか・・・。ゼノロワの神・・・。そのような神はいなかったとは言えません。何故なら、過去に神様と呼ばれた存在は多数おりました。我が主も『神』と呼ばれて殺されかけた存在。主の力も知能も優れております。ただ・・・。神ではありません。普通の人間。これは今も変わらず。もしも、あの方が神だったら、それこそ愚かな者に罰を与えます。」

その存在は悲しそうに笑った。リュウにもそれはよく分かっていた。だが、何故ゼノロワには神の遺伝子が存在し、それから産まれた女性を王にするのか。その王が何故同じ弟を、家族を殺すのか。少なくとも姉は弟の死を悲しんでいた。そのようなことを今後しないと言った。だが、呪いのようにそれ以外の老人達は繰り返そうとする。まるで、そのシステムがなければ、ゼノロワの国は続かないのだというかのように。

「もしかしたら、神の継承をゼノロワの国は行っているのかもしれませんね。」

「・・・?」

「むかし、あったと聞きます。王の命と引き換えに、神から子供を授かり、その子供と血を紡ぐ儀式。ですが、その儀式は『神』がいれば成立しますが、神のような存在、という風に置き換え、その儀式を成立させた。それを『楔の結婚』と言われたそうです。神は曖昧な存在。その存在を人間の女性と置き換えその指定された子供から生まれた女児のみが時期女王となる。ヒルワン女王がもし、その最初の神におきかえられた女性ならば・・・。」

「・・・なるほど。・・・。お前がここに現れたのは、博士から言われたのか?」

「え?いいえ・・・?」

「あいつは誰にでもお節介をかけるのだな。」

「・・・。まあ、主はそういう方です。あなたのことを、真剣に心配されているのかと。」

「・・・死界を守り続けるのだな。」

「・・・。主がその道を歩むと決めた、と。」

「そうか。邪魔をした。」

リュウは自分にはっきりと伝わる視線を感じて、会話を早々に終わらせる。

「・・・リュウ様。最後に一つだけ。」

「・・・。」

「そのお姿では、これからの旅に無理が生じます。封印を解かせてもらっても?」

「断る。」

「・・・そうですか。残念です。主の指示があればあなたのその命、運ばせてもらいます。」

その存在がお辞儀して、持っていた黒いステッキを一振りすると、瞬く間に消え失せた。

 死神の使い。その存在はそう呼ばれている。そして、リュウを見つめていた視線がその瞬間に消えたことにも、意味があるのだろう。死神の使いとは関係ない眼光。それがこの闇の世界に潜んでいる。リュウを追っている者。リュウが玉座のそばを離れてから、ずっと追いかけてくるもの。


 リュウは闇の世界を去った。その世界が光を拒むのは死者を管理する者がその場所にいるから。リュウが知りたかった情報も手に入った。神の遺伝子を抹消するために、リュウは自分を追いかけている者を突き止めることにした。そのために、リュウが向かったのは嵐の祭壇だ。

 そこには龍神族の住んでいた住処が残されているはずだった。龍神族の朱玉が奉納されているため、龍神族しか出入りできない。


 世界の裏側に足を踏む入れたリュウは想いもよらない副産物を手に入れた。彼は存在の狭間に出入りできるようになっていた。存在の狭間は死ぬこともない、生きることもない者が出入りして、交流できる道だ。そこを潜り別の場所へと抜ける。道を覚えなければ帰ることはない。リュウが通った道は次に入るとき、全く別の道となっている。交わることがない道。狭間の道を自由に通ることはかなり困難だが、覚えれば大変面白い。役に立つわけではない。

 リュウが世界を自由に歩こうと考えるきっかけにはなった。もうしばらく、あの博士に会う必要はないだろう。


 


最短の出会い   終り

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