王国の秘密
嵐は突然の出来事だろうが、龍神族であればあまり驚くこともない。彼らは嵐を起こす前触れと云われ、実際に嵐を起こす者も居る。それが、リュウの知らない龍神族で、彼はとても怒りっぽい。
「あんた!同じドラゴンの癖に俺に喧嘩売ってくるなよ!」
「・・・何か気に障ることでも?」
「それだよ!その態度!俺が子供だからって、そんな風なものの言い方されたら俺だって文句言うだろう?」
「・・・。何か気に触ったというなら、はっきり言ってほしい。」
彼はずっと謝罪を求めるが、その謝罪に意味を持たせるのに、とても苦労している様子。
「いいか!俺は・・・。うーん、なんだか眠いなぁ。」
嵐は唐突に収まった。彼が眠そうに大きなあくびをした。それもそうだろう。二時間はリュウの前で怒りを爆発させていたのだから。
「なぁ、もう、俺は眠い。眠らせてもらうよ。」
彼はあくびをしながら、ようやく嵐を鎮めた。そうして、深い眠りについた。リュウは相手が成獣まであと少しだと理解していた。そして、明日には成獣になっている。美しい姿が見れるのだろう。
「ドラゴンが羽ばたく前日は嵐になるのが世の常。」
リュウはそう呟くと、彼の側に腰を下ろした。
翌日、彼は身体をほぐしていた。
「よく眠れたか?」
「あれ?まだいたの?」
彼は驚いてリュウを見た。
「あぁ。成獣したんだね。あめでとう。」
「・・・あんた俺の・・・。いや・・・。」
彼は何かを云おうとして口ごもった。」
「俺は君の兄だ。間違いないよ。」
「えっ?」
「お前は俺の母親であり、青竜と呼ばれる青き麗人のラーヴァンだ。母は子を成すために幾人かと番いになった。お前の父親との間に生まれたお前は俺の弟となる。そうだろう?」
「う、うん。兄ちゃんって呼んでもいいか?」
「好きにしてくれ。それで、お前も姉であるゼノロワの女王を追っているんだな?」
「うん。そうだよ。成獣して、ようやく駆けるんだ。」
「そうか。・・・共に来るか?」
「うーん。兄ちゃんがいいって言うなら。俺が一人で生きるには人間がまだ怖いんだ。」
そうして、彼は穏やかに幸せそうに、今までのことを語った。
この地に住む人間が父親を殺そうとしたこと。父は自分を隠してドラゴンとなって駆けていったこと。そのあとすぐに父がどこかでみつかってしまい、焼き殺されたこと。それによって彼自身が怒りにまみれ、人間を異能の力で焼き殺したこと。それ以来、人間が寄りつかなくなったこと。
「炎の異能か・・・。」
リュウは弟をじっと見つめた。炎の異能は異能としてはよくある力だ。だが、異能の片鱗をゼノロワの民以外が持つと、恐ろしいことになる。異能の片鱗とは、火、水、土、風、光、闇の六大属性のことを指す。六大属性は本来ならゼノロワの王族の血筋が取り扱うのだ。王族の血筋と関係ない者がその力を持つことはない。つまり、弟はゼノロワの王族の血を受け継いだ王子、ということ。血筋を正ことを今はできないが、もし継承権をもつ王子が兄弟間に居た場合、そのどちらかは意図的に異能を持たされたとも言える。普通なら持っていない王族の異能を持たされると云うことをできないわけではない、ということ。これは、リュウが知る情報の中でも、秘匿することだ。
リュウは、弟を弟としてみることにした。それは、今後、王家が集まるときまで誰にも話さないと決めた。リュウが知りうる情報は時として、国を覆すことにもなり得る。
彼はまだ、真実というものが範疇を超えてしまうことに気がついていない。
「では、そろそろ駆けるとしようか。」
リュウが弟に声をかけた。
「あぁ!兄ちゃんと冒険するのが楽しみだ!」
弟はまぶしい笑顔でそういう。ドラゴンの姿が青竜と呼ばれる母に似たのは、おそらく勘違いではない。
『・・・そうだな。』
はしゃぐ弟が、いずれ帰る国の玉座に座っているかもと考えながらリュウは共に空を駆けるのだ。
王国の秘密 終り




