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第3話 宿確保

 俺はショック過ぎて、その場にへたり込んでしまった。俺がプレイしているときに、HR999に到達したプレイヤーは数百名いた。ソロプレイヤーでHR999に達したのは俺と、俺より先に「オーバーロード」の称号を手にした「ジェネシス」だけであり、残りの全員はギルドマスターであった。どのギルドマスターも、大規模なギルドを組織しており、狩猟難度の高いクリーチャーを数の暴力で圧倒していた記憶がある。ちなみに、狩猟後、獲得できるハンターポイントは、ソロプレイヤーであれば全てプレイヤー個人に入るが、ギルドでクリアした際は、ギルドマスターにハンターポイントの半分が入り、残りをギルドメンバー全員に均等配分される。


 ソロプレイヤー以外のHR999なんて案外いると思っていたが、今のこの世界だと、俺以外いないようだ。ということは、他のプレイヤーも俺と同様に閉じ込められている可能性は低くなったと言えよう。


 ・・・あんまり目立ちたくないんだけどなぁ・・・。「第二の人生」はスローライフというか、自由気ままな生活を謳歌したいのに。


 「だ、大丈夫ですか?」


 ノエルが心配そうに受付台を乗り越えて、俺を見ている。果たして、どうしたものか・・・。


 「あの、ノエルさん・・・。」

 「はい、何でしょう?」

 「口頭で伝えるのは・・・」

 「正確な数値を登録しなければなりませんので、ステータスを見せていただけると助かります。」

 「そこを何とか・・・」

 「正確な数値を登録しなければなりませんので。」


 さすが、ハンター活動を統括しているハンターズユニオンの受付嬢。絶対に譲れないところは、弁えている。


 「・・・分かりました。では、今からHRをお見せします。ただし、ノエルさんにお願いがあります。」

 「えっ、な、何ですか?」


 俺の声のトーンが急に低くなったため、ノエルも急に緊張し始めたようだ。


 「俺のHRを見ても、絶対に大きな声を出さないでください。恐らく、驚くと思うのですが、絶対に騒がないでください。」

 「またまた、ルシファーさん!そんなにハードルを上げて大丈夫ですか?」


 ノエルは冗談だと思ったのだろう、「このこの~」と言いながら、肘で俺の腕をつついてきた。ちくしょう、めちゃくちゃ可愛い!!!だが、今はそんなことより大事なことがある。


 「ノエルさん、冗談ではないです。いいですか、絶対に大声を発しないでください。」

 「ルシファーさん、もう分かりましたって!早くHRを見せてください!」


 ノエルは、俺が本気で言っていると思ってないのだろう。この雰囲気であれば、何度言っても同じような結果になるに違いない。ここは腹をくくり、ノエルにステータスを見せるか。


 「では、どうぞ・・・。」


 俺は、右手を翳して表示されたステータスをゆっくりと、ノエルの方に向けた。そして、ノエルはHR欄を見た瞬間、両目を歌舞伎役者のように大きく開いて、そのまま意識を失った。


 ・・・えっ、立ったまま気絶してる?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 数分後、何とか意識を取り戻したノエルは、慌てふためき、俺を質問攻めしてきた。とりあえず、他大陸の超有名なギルドに所属しており、そこでHR999まで上げることに成功したが、色々あって追放されたということにした。


 「ルシファーさん、最強じゃないですか・・・。」


 ノエルは放心状態で、目が少しうつろになっている。


 「周囲に騒がれると嫌なので、他言無用でお願いします。」

 「わ、分かりました。ただ、ハンター登録には記入しないといけませんので、ご了承ください。」

 「り、了解です。」


 正直、そこも改竄してほしいところだが、無理に決まっている。ここは甘んじて受け入れるしかない。


 「それでは、HR500以上と判明しましたので、宿舎の契約に移ります。何日借りられますか?」


 宿舎の内装を見ていないので何とも言えないが、追放されたハンターが特例で住める部屋である。あのブラック会社の社宅よりも綺麗ではないのだろう。


 ・・・今日から「第二の人生」が始まったことだし、ソロプレイにこだわらず、早めにギルドを創設して、住みやすい拠点づくりでも頑張ってみるか!


 「とりあえず、2日間借りたいと思います。もしかしたら、早めに契約を解除するかもしれませんが、大丈夫ですか?」

 「はい、大丈夫ですよ。ただ、家賃は前払いとなりますので、2日目より前に退去してしまうと、その分損をしてしまうので、ご了承ください。」

 「分かりました。」


 その後、ノエルから宿舎を借りる際の細かな説明があった。賃貸住宅を借りるときに近い感じだ。個人的に一番驚いたのは、光熱費や水道代である。プレイしているときは全然気にしていなかったが、この世界は現実世界と同様に、電気や水道というものがあり、ライフラインがしっかり整えられている。そして、HR700を超えているハンターについては、宿舎の光熱費や水道代が無料になるらしい。そもそも、そこまでの高ランクハンターはギルドに所属しているので、意味を持たない規定だったが、俺の登場で初めてその規定が適用されるようだ。


 こうして、2日間の家賃代5000yを払い、ハンターズユニオンのすぐ裏にある、年季の入った宿舎の鍵を手に入れた。俺以外に借りている人はいないようなので、好きな部屋番号を選ぶことができ、俺は悩んだ末、102号室にした。理由は単純である。俺の誕生日が、10月2日だからだ。


 なお、所持金については、ゲームをプレイしている時と同様にアイテムボックスに入っており、スムーズに取り出すことができた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 スペリオル近郊の地底洞窟にて・・・。


 ボロボロの衣服に身を包み、痩せこけた少女はふらふらとした足取りで、洞窟の出口を目指していた。


 「おい、遅ぇぞ!早くしろ!」

 「きゃっ!!」


 後ろから強い力で蹴られた少女は、そのまま前に突っ伏した。


 「ったく、コイツはもう使い物にならねぇな。」

 「役に立たないガキだ。」

 「ようやく欲しかった素材も手に入ったんだ、用済みでいいだろ。帰ったら、ギルドから除籍だな。」

 「「「ハハハハハ!!」」」


 疲労と栄養失調で、身動きが取れなくなった少女を屈強な男性ハンター3人が見下す。そして、彼らはそのまま地底洞窟に少女を置き去りにし、街へと戻っていった。



 ・・・どうして、私ばっかり。


 少女は自分の人生を、自分の運命を呪った。そのとき、急に洞窟内が激しく揺れ始めた。


 ・・・ま、まさか!?


 クエストを受ける際、ハンターズユニオンの受付嬢にこの地底洞窟には、狩猟難度Cの『巌鎧獣アルマフェルゼン』が出現することが稀にあるので気をつけるよう、注意を受けた。恐らく、その『アルマフェルゼン』が近づいてきているのだろう。


 ・・・な、なのに、か、体が全然動かない。


 多くのクリーチャーの解体による疲労と、所持金不足による栄養失調で、少女の体は限界を迎えた。


 ・・・だ、誰か、助けて!!


 少女は、声にならない声をあげた。しかし、誰の耳にも届かない。地底洞窟に一人取り残された少女は、自分の死を悟り、絶望しながら、これまでの人生を回顧した。


 ・・・そういえば、ママが昔言っていた人って誰だったんだろう。


 少女はうろ覚えの記憶を辿り、かつての母親の言葉を思い出した。


 『アリアは、とても器用だし、勉強もできるから、きっとパパやママよりも素晴らしい解体者になれるわ。色んなギルドから、スカウトが来るんじゃないかしら。』

 『えっ、ホントに!?』

 『えぇ、本当よ。でも・・・、もしアリアがこの先の人生で、出逢うことができたら、ママは彼のギルドに入ってほしいの。』

 『彼?』

 『ママも一度しかその姿を見たことがないから、名前も覚えていないけど、ママとパパを救ってくれた恩人で・・・・・・』


 ・・・「真っ黒なコートに身を包んだ最強のハンター」だったっけ?


 少女はそこで意識を失った・・・。そして、『アルマフェルゼン』が少女を発見し、捕食しようとした瞬間、『アルマフェルゼン』の胴体は見事に真っ二つに分かれ、絶命した。

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