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シークレットサバイバー  作者: ツキグマ
第1部
6/7

6.遭遇

遅くなりました!

しばらくはこの速度かもです…

早めに書くように努力するので気長に待っていただけると幸いです。

「…」


(どうしてこうなった…)



颯はツタに絡まった状態で呆れた表情をして思った。



「お、重い」


「ごめん。花のせいで…」



ツタには、下から尚也、颯、花の順番のだんご状態で引っかかり、ぶら下がっていた。




時は遡り、数分前。



広場を拠点とした颯達は天使から能力をもらい、使い方を覚えていた。覚えると言っても難しいことは特になく、実際はどんな能力かを試しているだけである。

颯は広場の端で、模造刀を振っていた。



「すご…」



颯は落ちてきた枝をまじまじと見る。その枝は自然に落下した物ではなく、たった今、颯が模造刀で切り落とした物だ。断面は平たく、とても模造刀で斬った様には見えなかった。それもそのはず、颯の持つ模造刀は新品の真剣の様に鋭い刃がついていた。



(これなら、一応戦えるか…)



颯は刀を見て考える。



(切れ味良すぎだろ…。少し振るだけで腕とか切り落とせそう。能力を使ってるせいか、刀の重さもあんまり感じないし。)



恒一の言っていた『能力を発動している間は身体が軽くなる』を颯は身をもって体験していた。

基本身体能力の向上、能力を発動するだけで人間では到底不可能なこともできてしまう。例えば、ジャンプするだけで家などは軽く飛び越えることができる。



(グローブガンも50メートルは伸びるし、バットは…まだよくわからないけど、強度とか上がってるんだろうなぁ…)



一通り持っている武器の性能を試した颯だが、金属バットに関しては変化を感じることができなかった。



「はぁ…能力はイメージしたことが反映されるって天使は言ってたけど、多分コツがあるんだろうなぁ」



颯はため息をつきながら能力について考える。



「みんな、どんな感じだろう?」



広場の端から、颯はバラけて能力を試しているメンバーを見る。




「…はぁ!」



両手を前にかざし、花は掛け声を発する。


ポン



「…」



一瞬だけの小さな爆発。爆発と言うより弾けると言った方が正しいだろう。それほど迫力の無い、残念な不発弾だった。



「はぁ…」



花はため息をつきながら右手の中指にはめている指輪を見る。

指輪の見た目は、黄色のリングに青く光る宝石が小さく添えられている。

もちろん、花が最初から身に着けていた物ではなく、能力開発時の装備品だ。

数分前の出来事を花は思い出す。




「武器?」



花は首をかしげる。



「そう。その子みたいにすでに武器を持っている子はともかく、あなた達は武器がないでしょ?」



そう言って天使は颯を指差す。



「大抵はイメージした通りの能力が備わるけど、武器をメインとした能力は、その武器が無いと力を発揮できないわ」


「え?じゃあ、武器が無くなったり、手放したりしたら俺はどうすれば…」


「詰みね」


「うせやん…」


颯の質問に対して天使は素っ気なく答える。



「素手でも戦えるけど、威力は最初に能力をあげた子より劣るわ。素手に特化している能力じゃないからね。だ・か・ら」



そう言って天使は手を叩く。パン!と音が鳴り、天使を隣に扉が現れる。



「この扉は貴方たちの部屋に繋がってるわ。自分の部屋から武器になりそうな物、武器として使いたい物を持ってきて。それから能力を授けるわ」


「扉は1つしかないけど、どうやって自分の部屋にいくの?」



和輝が天使に質問する。それもそのはず、1つしかない扉で違う人の部屋に行く可能性もあるからだ。



「あ、それは大丈夫。扉を開けた人の部屋に自動で繋がるから」


「わーお、便利」



ご都合主義の扉の仕様に和輝も気の抜けた声がでる。



「俺は素手だし別にいいかな」


「俺も武器あるしやめとく」



既に能力をもらっている恒一と颯は一歩引く。



「…じゃあ花からいく!」



そう言って花は扉の前に立つ。



「貴方の使いたい物を選んで来るといいわ。じゃあ行ってらっしゃい♪︎」



ドアノブをひねり、花は扉の中へ足を踏み出した。





目を疑った。でも、なんとなく解ってた。



「荒れてる…」



言葉の通り、部屋はボロボロで、強盗に入られたのかって言うくらいの状態だった。幸い、何かが壊れていたりとかはないけど、悪魔がここに来たことはあんまり賢くない花でも解った。



「?」



視界の端で何かが光った。散らかった物の中から、それを拾い上げる。



「これ…」





自分の中指に嵌めている(はめている)、先程部屋で拾った指輪を眺めながら花は考える。



「颯ならどう、するんだろ?」



昔からあまり器用ではない花は、解らなければ誰かに訊く(きく)ということが習慣になっていた。しかし、今回は同じ状況ではあるが、立場が違っていた。颯の能力は武器を活用して戦うのが主体で、対して花の能力は魔法系。火を出したり、水を出したり、そういったことをイメージした結果の能力だった。

使う能力が違うことから、花は颯に訊くことを諦め『颯なら』ということを考えた。



「…実践あるのみ、か~」



教科書も無く、自分しか解らないこともあり、颯ならそう言うだろうという考えに花は至った。



「ふー…」



花はもう一度両手を前にかざし考える。



(よくよく考えれば火は危ないよね?もっと安全な…風が吹くくらいのイメージで…)


「はっ!!!」



意識を両手に集中させ、声を発したそのときだった。



「え?」



そよ風が吹いたかと思えば、花の体は一瞬フワッと浮き上がり、後方にものすごい速度で吹き飛ばされていた。



「わーーーーー!!!」


「ん?」



声がする方向に尚也が顔を向ける。そこには、花が叫びながら、ものすごい速度で飛んで来ていた。



「え?…うっ!」



尚也が理解する間もなく、花は尚也に直撃し、勢いが衰えること無く尚也にもろとも吹き飛んで行く。



「颯退いてーーー!!!」


「ん?」



花の声が聞こえ、尚也同様、颯も声のする方に顔を向ける。そこには、もつれた状態の花と尚也がものすごい速度で飛んで来ていた。



「ちょいちょいちょい待て待て待て待て!!!…ぐぇ!」



避ける間もなく、2人は颯に直撃。



「わーーーーー!!!!!」



3人は森の中に吹き飛ばされて行った。





ということがあり、現在3人はもつれた状態でツタに絡まっていた。



「花、これでツタ切ってくれる?」


「うん…わかった」



そう言って颯は花に刀を預け、花はツタを切ろうとする。



「え?ちょっと!」



尚也が待ったをかけたが既に遅く、花はツタを切ってしまった。



「うぐっ!」



ツタを切ったことにより、3人は落下した。しかし、尚也が一番下だったことで上に乗る颯と花の体重が掛かってしまった。



「ごめん…体重掛かるの忘れてた…」


「忘れないでほしかった…」


「本当に…花のせいでごめん…」



立ち上がる颯と花とは対照に尚也はうつ伏せになりながら答える。



「だいぶ遠くに飛ばされてない?これ」



尚也が立ち上がり周囲を見渡す。



「うーん、広場が見えないから多分そうかな?」



颯が周囲を見渡しても、前後左右木が生い茂っている光景ばかりで、かなりの大きさのあった広場は3人からは見えなかった。



「飛ばされて来たのはあっちだから、歩いたら戻れるかも」


「じゃあ、戻るか」



花が指を指す方向に尚也が足を踏み出す。花と颯も歩き出そうとしたときだった。



「音がしたから、もしやとは思ったが、本当にいたとはな…」


「!?」



背後からする声に3人が振り向くとそこには悪魔が笑みを浮かべながら佇んでいた。



「あっ…」


「悪魔…」


(2人とも、動揺してる。それもそうか…)



颯と違い、花と尚也は目の前で悪魔と対面するのは初めてである。故に、それ相応の恐怖があって当然だろう。



「…尚也、花を連れて戻ってくれる?」


「え、颯は?」


「俺はいいから、早く」


「…」


「わっ!」



颯の言葉を聞き、尚也は無言で花を抱き抱え、広場のある方向に走り出した。



「逃げてもすぐ殺すんだけどな。まずはお前からだな」


「簡単に殺されるつもりはないぞ」



颯は能力を解放し、刀を構える。



(!?…こいつ今どこから…。天使の仕業か?足止めしきれなかったのか?)



一瞬悪魔が驚いた様子を見せるが、それもすぐになくなる。



「まぁいい、殺せば問題ないからな」



悪魔と颯は臨戦態勢に入る。しかし。



「?」



悪魔と颯が眉をひそめる。何か音が聞こえるが、どこから聞こえるのか、何の音なのかは解らなかった。

音は徐々に大きくなっていき、それは上から、しかも人の声だと解る。



「わーーーーー!!!」



颯の目の前にそれは落ちてきた。かなりの速度で落下してきたのか、衝撃で砂煙が巻き上がっている。



「うぅ…」



砂煙が晴れ、それが正体を現す。颯の目に入ってきたのは結芽だった。



「あれ?生きてる?」


「生きてるよ…」



いきなりの出来事に颯は気の抜けた声色になってしまう。

結芽の下には悪魔が下敷きになっており、衝撃をあまり受けなかったのだろう。能力を解放していることもあり、結芽の体には傷1つなかった。



「あれ?尾月?」



今、颯に気づいた様で、結芽は不思議そうに颯を見上げる。



「!?」



危険を感じた颯は即座に結芽を抱き抱え、悪魔と距離をとる。悪魔のそばに立っていた木はギシギシと音を立てて倒れる。木には熊でも付けることができないような爪痕が付けられており、爪痕を境に木は倒れていた。



「コロシテヤル…!」



いつの間にか立ち上がっている悪魔が怒気を孕んだ声で颯と結芽を睨み付けた。

読んでいただきありがとうございます!


次回も楽しみにしていてください。

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