土曜日
土曜日。
今日は休みというのにも関わらず、午前中は部活がある。はじめのほうこそ楽しかった部活も、今では休日を潰す面倒臭いものに変わり果ててしまっていた。
「今日、顧問の先生休みだって」
「まじ!?」
先生が休みという朗報を受け取り、私は思わず声が上ずった。昨日は学校が早く終わって、今日は先生が休み。……これだけ幸運が続くと、いつか反動で不幸が降りかかりそうで少し怖い。
適当に部活をこなし、無事にお昼を迎えることができた。夢と二人で歩く部活帰り。ふと楽し気な声が耳に飛び込んできた。どうやら、近くの公園で遊んでいるようだ、複数の子供の姿が見える。
自分も小学生のころああやって遊んでたな……なんて少し感傷的なことを考え、とあることを思いついた。
今日は土曜日。天気もいい。
――たまには少し、寄り道してみるのもいいかもしれない。
「ね、夢。帰りにアイス買おうよ!」
「え、アイス?」
まだ初夏で梅雨の真っ只中とはいえ、今日は晴れており日差しは強く、少し暑い。そろそろ夏だということを嫌でも実感させられる。私の提案に夢は少し戸惑ってはいたけど、しばらく熟考した後、二人で近くの駄菓子屋さんへ行くことになった。
中学校から少し歩いた近所に、小さな駄菓子屋さんがある。小学校のころから定期的に利用している、お気に入りの店だ。
店内に入り、真っ先にアイスが売っている冷凍庫へ足を向ける。ガラス越しに見える中身は、種類は少なくはあるが色とりどりのアイスが並んでいた。少し悩んでしまう。
「あれ、夢。珍しいね。バニラ選ぶなんて。」
と、抹茶が好きな夢が手に取ったアイスをのぞき込み、バニラカップだったことに驚きの声を上げる。。
「え? ま、まあね。今日はちょっと冒険してみようかなって」
えへへ、とどこか恥ずかしそうに笑みを浮かべながら、夢が手に取ったアイスのカップに視線を落とす。ジワジワジワジワ、と心なしか先週よりも激しくなったセミの鳴き声が私の思考をかき乱す。
はっと我に返ったのは、冷凍庫から取り出したアイスの表面に結露した水滴が、手のひらから地面へ落ちた時だった。
じわり、と嫌な感触が手のひらに残る。
「あ、アイス溶けちゃうから早く買おう?」
数秒、たった数秒の沈黙だったと思う。私と夢との間に漂っていたその沈黙は、夢の提案でかき消された。
二人でレジに向かい、代金を払ってからアイスと小さなスプーンを受け取る。どこで食べるか少し迷ったけど、駄菓子屋の前にある、木陰のベンチで食べることとなった。
私は早速、選んだチョコレートクッキーが入ったアイスにスプーンを突き刺す。冷蔵庫から取り出して時間が経ってしまったか、気温が少し高いせいかどちらかはわからないが、少し柔らかかった。木でできたスプーンでアイスを掬い、口に運ぶ。甘いチョコの味とアイスクリームの冷たさ、口の中にまろやかな後味が残る。
久しぶりに食べたけど、案外チョコアイスもおいしいんだな。
お昼前ということもあり、空腹もあってかあっという間に中身はなくなり、手のひらに軽くなった空のカップが残る。昼食前という少しの背徳感もあってか、精神的にも肉体的にも満たされた気がした。
横に顔を向けると、ちょうど夢も食べ終わったところだった。満足そうな表情で最後の一口を頬張っている。
その後しばらく二人で他愛のない会話を続け、十二時を知らせるチャイムを合図に今日は解散となった。




