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30.話(シルフレイヤ視点)

「ねぇリサ。恋とか愛ってなんだと思う?」

「それを先月恋人と別れた私に聞きます?」

「でもリサは私より大人でしょう?」

「そうですけど大したことは言えませんよ」

「いいのいいの、何でもいいから教えてほしいな」

「……。よかった、シルお嬢様がちゃんと子供で」

「どういう意味?」

「シルお嬢様って昔から天才だー!とか、大人顔負けの気品さを持ってる!とかって言われてたじゃないですか。だから14歳らしい発言が聞けてよかったって意味です」

「なにそれ…。私はまだちゃんと子供よ」

「そうは見えないから言われるんですって。で、恋話ですか? アレス様に何か言われたのですか?」

「……」

「やっぱりあの方と婚約破棄したほうがいいと思うんですが…。あ、こんなこと言うと不敬罪になっちゃうんでしたっけ!?」

「聞かなかったことにするわ」

「で、何があったんですか?」

「恋とか愛とか…。好きとか愛してるってよく解らないの。でもアレス様の力にはなりたいと思う…。この気持ちって同情しているから? でも私みたいな子供に同情されるのって……なんか失礼じゃない? だとしたらこれは恋でも愛でもないような?」

「そんなことありません。って、私も大した経験がないので偉そうなこと言えませんが…。うーん……それが恋の始まりなのでは?」

「恋のはじまり?」

「きっかけですよ! このきっかけは人によって様々ですが、シルお嬢様にとっては「力になりたい」って気持ちは同情ではなく恋の始まりです。……あまり自信がありませんけどね」

「なるほど?」

「助けたいと思うほど彼のことを考えている。それは好きな相手じゃないとできないことなのです! 勿論、本当にただの同情かもしれません。そこは私の口からは言えません」

「うーん」

「…。あの方のことを考えるとシルお嬢様はどんな気持ちになりますか?」

「………助けてあげたい?」

「他には?」

「うーん…!」

「因みに私は彼と付き合う前までは「彼に私を見てほしい」「笑顔を見せてほしい」「彼に触れたい」「抱きしめたい」って思ってました!」

「だきっ!? な、……なるほどぉ…」

「よく手を繋いでいるようですがどんな気持ちになりますか?」

「嫌じゃないよ。でも落ち着かない感じになるかも」

「恥ずかしいとか、でも手が離れると寂しいとか?」

「ど、どうしてわかるの!?」

「誰もが通る道だからです」

「リサも私と同じ気持ちになった!?」

「ええ勿論! 手を繋ぐだけで世界一幸せ!って感じました。シルお嬢様は?」

「……穏やかな気持ちにはなれるかな?」

「ええええ!? 年頃の女の子なのに何でそんな達観した答えが?! そこはキュンキュンします!とか、胸が苦しくなるー!とかじゃないんですか!?」

「えー、なにそれ。声を聞くと安心するし、手を繋げば心が落ち着くよ。ちょっと恥ずかしいけどね。それにね、笑顔を見ると私まで笑顔になっちゃうの」

「まぁ確かに見た目は芸術品ですよね。最初は人形みたいに整いすぎて怖かったけど今は慣れたし目の保養になってます」

「目の保養って…。言い方が悪いわ」

「でも一番はお嬢様の顔を見ることが私の癒しですからご安心下さい!」

「ふふふっ。でもそうね、言い方は悪いけどアレス様は目の保養になるね」

「昔は美少年って言われていましたが、今は年齢や経験を得てからワイルド系美青年ですよね。基本無表情で近づき難いお方ですけど、あの顔立ちだからかご令嬢には人気みたいですし」

「へー…。そんなに?」

「そうですよ! 最近ずっと帝都のタウンハウスにいるからあの美貌を一目見ようと必死になってるらしいですよ。招待状も大量に届いているとか!」

「気持ちはわかるわ。アレス様はとても格好いいもの」

「……気にならないんですか?」

「なんで? アレス様が格好いいのはリサも認めたじゃない」

「普通は「他の女にとられちゃう!」って嫉妬するところですよ!」

「あっ! それって前に読んだ小説のように嫉妬して相手を貶めようとしたあの…?」

「それです。好きな人はとられたくありませんからね」

「うーん…」

「まぁシルお嬢様がそのようなことをしないと信用しています」

「気を付けないとね」

「でもっ! きっとお嬢様にも解るときがきますよ。そのときがきたら今日のこの会話を思い出して下さいね」

「あははっ。そんなことはしないわ。でも気を付けるね」

「信じています。他に素敵だなぁと思うところはありますか?」

「赤い目がルビーみたいで綺麗よね。私と反対の色だから余計に惹かれてしまうの」

「言われてみればそうですね、髪色だって銀髪と黒髪で反対だし、目の色だって…。あ、髪の毛と言えば少し伸ばされたあの髪の毛もキラキラ光って綺麗ですよね」

「本当にね。なんで伸ばしているのかな。いつかお許し頂けたら髪を結わせてほしいな」

「お嬢様に負けないぐらいサラサラしてそうですよね。でも短くしてもきっと色気抜群なんでしょうね! 野性味が増してもっと格好よくなるかもしれません」

「リサったら興奮しすぎよ。でもそうね、あの色気は………」

「どうかしましたか?」

「なんでも! 長くても短くても大人っぽくて素敵だと思うわ。(たまにその色気?を含ませる目と声は苦手なのよね)」

「色々と噂している内容とは違って、思ってた以上に紳士的でよかったです」

「ふふっ。本当のアレス様は口が少し悪いのよ」

「え、本当ですか!? やっぱりあの方はワイルド系なんですね…。お嬢様はワイルド系はお好きですか?」

「そういうのはまだ解らなくて…。アレス様が笑顔でいてくれるなら何でもいいの」

「でも優しくなかったらそう思っていなかったかもしれませんよ?」

「…そうかもね。あの性格だから助けてあげたいって思ったわけだし」

「いいですか。恋人になるにもっとも大切なのは優しくて自分を大切にしてくれるかどうかです!」

「じゃあ安心ね。今のアレス様は優しいし大事にしてくれてるわ」

「そりゃあ過去のことがあるから当たり前ですよ。……はぁ。なんかお嬢様と話してると恋人が欲しくなってきました…」

「リサにならすぐできるに決まってるわ。だってとっても優しくて可愛いもの!」

「シルお嬢様…! 絶対一緒に大公家にいきますからね、ずっと一緒ですからね! お嬢様のお世話をするのは私なんですからね!」

「そうしてくれると私も嬉しいわ。きっとリサならレイとも仲良くできるから嫌だって言っても連れていくからね」

「ありがとうございます!」

「あ、ところでリサ。今日本屋さんに行ったら例の小説の新作が出ていたから明日買って来てほしいの」

「あら。では明後日は寝坊確定ですね」

「読み終わったら貸してあげるね」

「楽しみにしてまーす!」

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