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00.プロローグ

鮮やかな夕日に強く目を奪われた。

こんな状況じゃなければきっと「綺麗だな」と語りかけ、隣に寄り添う彼女は「そうですね」と微笑むだろう。

グッと奥歯を噛みしめ覚悟を決めて振り向くと、想像していた微笑みを浮かべて立っていた。


「何故だ」


突然の出来事に思考が働かず、やっと出た言葉に相手…自分の妻は戦場に似合わない穏やかな笑みを浮かべたまま一歩近づくと、剣を握る手に緊張が走る。

頼むから何も言わないでくれ。

そう願った。彼女が自分が想像していた言葉を発しようとしていたからだ。


「ごめんなさい、アレス様」

「やめてくれ」

「貴方と結婚して一度も貴方を愛したことはないの」

「やめてくれ…」

「それに元々貴方とではなく、ロキ皇太子と結婚する予定だったの」

「やめろ」

「それなのに適正の令嬢がいなかったというだけで…。何故私が貴方のような怪物と結婚なんて…」

「やめろ、シルフレイヤ」

「私、昔から貴方のこと大嫌いなんです。だから―――」

「止めろッ!」


これ以上彼女の口から聞きたくなかった。

だからあの夕日のように彼女を真っ赤に染めてしまった。





「―――っやあああ!!」

「シルッ! シルフレイヤ!」

「…っあ……ああああ…!」

「大丈夫かい、シルフレイヤ。酷くうなされていたようだけど…」

「…せ、セティおにいさま…?」

「シル大丈夫か!?」

「テュ…ルおにいさまも……うっ…」

「唸り声が聞こえて来たんだが…大丈夫か? すっげぇ汗だぞ」

「水を持って来よう」

「それより…わたし、たすかったのですか…?」

「助かった?」

「だって……くっ…首を…くび……! そうだ、お腹もいたくて…!」

「セティ兄さん…」

「大丈夫だよ、シルフレイヤ。それは夢だ」

「だって! だって…あの人が私をっ…! くび、首が熱いのっ…!」

「落ち着けってシル! お前はなぁんにも怪我なんてしてねぇし、さっきのショックでそんな悪夢見ただけだろ」

「はぁ…はぁ…! ううう…!」

「大丈夫。大丈夫だよシルフレイヤ。ほら、水でも飲んで落ち着いて」

「だって私! 私そんなこと思ってないのに! 言ってないのに!!」

「シルフレイヤ…」

「大丈夫だって! ほら、俺が一緒に寝てやるから安心しろって。な?」

「でも……」


私はそんなこと言ってないのに、どうして殺されないといけないの…?


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