初めての登校
一人の女の子が部屋で吐息を漏らす。白く透き通った肌でピンク色のドレスを思い切り脱ぐ。露になったのは年頃の少女の可愛い下着だった。僕はレアハ王女なんだ。女が自分の裸を見て何が悪い。鏡を正面にしてそう言い聞かせるも、心は正直で段々と息遣いが荒くなる。だいたい何故僕がこんな女の子の身体で学校に行かなければならないのだろうか。これまでのことを思うと少しずつムカついてきた。もう全部見てやる。顔を下に向けると二つの大きなお山が主張している。それを覆う水色のブラジャー。あるべきはずのものがない下半身を不安気に守る水色のショーツ。どうして男の僕がこんなものを履いているのだろうと溜め息をついた。顔を赤くしながらブラジャーとショーツを外して全裸になった。自分じゃなければ物凄く魅力的な女性の身体だとつくづく思う。恐る恐る自分の胸を触る。はうううう...とても柔らかい。おっぱいは雛鳥のような健かさも感じる。時計の音が鳴り、ふと我に返る。もう時間だ。いけない。身支度をしていたつもりが、いつ間にか王女の身体に洗脳されていた。緊張を解しつつ、ゆっくり制服を手に取り着替えた。わからないことだらけだけど、ブラジャーやショーツを装着。制服のリボンを結び、スカートもどうにか履けて完成。鏡を見るとブレザーの似合う王女が映っていた。美しいと感じるが、どうにも恥ずかしさがある。所謂羞恥心だ。慣れないスカート姿だろうか。足元の肌が空気に直接触れてスースーする。スカートを押さえて赤面している王女だが、それはさておき学校へ登校することにした。決意を胸に制服という名の正装に着替えた勇気があれば何も怖くない。メイドを呼び、お城から高級な車に乗車し、学校へ向かった。六歳も年下の女の子になってもう一度、高校生をやり直すことになるなんて思ってもみなかった。辿り着いた先で僕は驚愕する。そこは現実の天国だ。全てが美女。周りを見渡すと容姿も言葉も綺麗なお嬢様ばかりだった。スクールバッグを抱えながら王族の車を降車して最初に抱いた感想がこれだった。レアハ王女は一国の王女なので送迎の車や見張りのSPは必ず付く。もしかしたらレアハ王女は一人になれる時間が無い?大変なことに気づいた。これが嫌だったのだろうか。自由とは言えないこの環境に愛想を尽かしたのかもしれない。だとしても僕を王女にしていい理由にはならないよ。けれど、今はそんなことよりも目の前の天国と向き合おうと心に決めた。どの子もみんな遠めの距離から礼儀正しくお辞儀をしてくれる。
『レアハ王女ご機嫌よう。』
『ご、ご機嫌よー!』
慣れていないから早口で声が上ずる。ああ恥ずかしい。歩いているだけで視線を感じる。周囲の女の子たちが何やらヒソヒソ囁いている。
『レアハ王女綺麗ね。』
『ご友人になれるかしら?』
『パーティーでも気品が違いましたもの。』
『あんな風になりたいですわ。』
僕はなりたくてなったわけじゃないんだけどな。お嬢様学校だし、言葉遣いも気をつけなきゃ。学生証があって助かった。1年桃組と記されている。昇降口で王女の上履きを履いて歩き方に注意を払いながら教室へ向かう。