それはもう変態
その後の事はよく覚えていない。お城に戻りレアハ王女の部屋で涙を零していた。すっかりドレスは雨に降られたかのようにぐしょぐしょに濡れてしまっている。リルを取られた悲しみで胸が苦しい。胸も重いけど。この巨乳取り外せないかな。一生このままなのだろうか。女の子の身体で生きていくなんて僕にはできない。あの女のせいで。今は僕が女だけど。そうこうしているうちにメイドが中に入ってきた。
『レアハ様お加減は如何ですか?』
『えっ!?えっと…あ、あまりよくありませんわ。』
『おいたわしや。学校は欠席なさいますか?』
『がっ…学校…?』
そうだ。僕としたことがすっかり忘れていた。レアハ王女はパラダイス令嬢学園に通う花の女子高生だ。パラダイス令嬢学園こと通称パラ嬢はパラダイス王国に住む名家のお嬢様が集う女子校である。王国一の明哲と容姿端麗さから男子たちには禁男の天国と名付けられている。今まで、あの地に足を踏み入れようとした挑戦者は星の数ほどいるが、誰一人侵入できた者は居ない。見つかるとお¦煎餅のような色になるまで醤油漬けになるという噂も耳にしたことがある。それほど危険な絶壁の楽園なのだ。
『あの〜…レアハ様?』
メイドが僕の顔を心配そうにまじまじと見つめている。まるで灰の入ったお茶を一気に飲み干した人を見る表情だ。いけないいけない。うっかりしていた。僕は今レアハ王女なんだ。一国の王女が学校を休む訳には行かない。
『なんでもありません。学校に出席しますわ。』
『無理をなさらないで下さいね…?はい。こちらお召し物です。』
そう言ってブレザーやブラウス、リボンにラクダ色のセーター、スカートなど女子校の制服を手渡された。メイドは扉を閉めて部屋の外へ。え?僕、女子の制服着て登校するの?着替えなきゃ?いや、待て。男に二言はないけど、人生に一度ピンチがあるとしたら今かもしれない。男が女の子の身体で制服着て女子校行くなんて、それはもう変態だよ。