専属メイド
そのメイドも真っ白な縦長のタオルで前を隠している。艶やかな髪質。長くまとまった髪を結びつける水色のリボン。身長はレアハ王女と同じくらいだ。胸は僕より小さいが、はっきり主張している。顔立ちこそ整っているもののハァハァと息を切らし、目を見開いた変態のような残念な表情をしている。なんなんだこのメイド。
『レアハ様のお世話は専属メイドアリアなくして他にいないでしょう。』
勝手に語り出したが、自己紹介のおかげで名前を知ることができた。この状況だし、僕は健全な男子だから心臓バクンバクンだけど平静を装う。
『そ、そうね。アリア。じゃあ背中を流して貰えるかしら?』
『よろこんでえええええええええええ!』
『ぎゃあああああ!?』
メイドのアリアは鬼のような顔つきで飛びついてきた。その狂気に満ちた表情に思わず叫ぶ僕。なんだこのメイド。え?お城の専属メイドってこんななの?大丈夫なの?いいや、大丈夫じゃない。王女は僕の身体を奪うし、王子かっこいいし、メイド怖いし、パラダイス城おかしいよ。
『ど…どうして引っつくのよ!?』
『これも専属メイドの務めなのです。ぐへへへへへ。』
『気持ち悪い!』
『がーん!』
唾を垂らしながら襲いかかってくるアリアに抵抗してタオルで顔を塞ぐ。朝まで普通だったと思い込んでいたメイドが急変して敵になるなんて有り得るのか。わっ。こいつ僕の胸に顔当ててきた。
『やっ…!』
『うふふ。』
『ひぃっ…!』
恐怖を感じて、次第に僕の意識は遠くなっていった。女としてのトラウマを植え付けられること。早く元に戻りたいと別の意味で考えながら。レアハはいつもメイドのアリアにこんなことをされていたのだろうか。
『レアハ様お気を確かに…!』
『だ…れの…せいだよ…』
素の男口調が出る。最後の力を振り絞り想いをぶつけた。
『レアハ様!?レアハ様ー!!』
力尽きて腰からゆっくり倒れた。最後に覚えていたのは床の感触だった。心残りは、お風呂に入りたかったこと。