1話 女神様が一兆円をくれた
川のゴミ掃除ボランティアをしていた時だった。
「何だろうこれは」
空き缶のそばに黒い皮みたいなのがあった。
手に取ってみると、財布だった。
これは大変だ。
きっと持ち主の人は困っているだろうな。
「おまわりさんに持って行こう」
僕は財布をおまわりさんにもっていった。
すると、おまわりさんが褒めてくれた。
「ありがとう太郎君。太郎君はいつも偉いね」
「どういたしまして」
「それに比べて君のお兄ちゃんの次郎三郎君ときたら……いつも遊んでばかりで、遊んでないかと思ったら悪い事してばかりで困ったもんだ」
「ごめんなさい。でも兄もいい所はあるんです」
「そうかい。太郎君は優しいね」
「ありがとうございます」
僕は複雑な気持ちになりながら、家に帰った。
家にはお兄ちゃんがいて、リビングのテレビでエッチなゲームをしていた。
「太郎。どこにいってたんだ」
「川に掃除しに行ってたよ」
「それにしちゃずいぶん遅かったな」
「掃除してる時財布を拾ったから、おまわりさんに届けに行ったんだよ」
「馬鹿だなあお前は。盗んじゃえばよかったのに」
「盗むなんて良くないよ」
「うるせえ。そんな事より一兆円くれ」
「そんなに持ってないよ」
「うるせーなあ持ってんだろお?」
「持ってないって」
「嘘つけ。財布をサツに届けるなんて馬鹿な真似できるってことが、お前が一兆円持ってるっつー何よりの証拠じゃねえか。正直に言えよ。一兆円持ってるんだろお? なあ……くれよお一兆円」
「ごめん。本当に一兆円なんて持ってないんだよ」
「ドケチ野郎」
「ごめん」
テレビの画面では、可愛い女の子がエッチな姿で微笑んでいた。
僕はドキッとして二階の自分の部屋に行った。
そしたら女の人がいた。
僕はびっくりした。
とても綺麗な女の人だった。
神々しい感じの白い服を着ていたので、女神様みたいだと思った。
「やあ、太郎」
「こんにちは。あなたは誰ですか?」
「私は女神だ」
やっぱり女神様だった。
「女神様。僕に何か御用でしょうか」
「太郎。まずはお礼をいわせてくれ。私の財布を拾ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
そうか。あの財布は女神様のだったのか。
女神様は笑っていた。
「太郎。お前はとてもいい奴だな」
「ありがとうございます」
「そんな太郎には一兆円をあげよう」
「え? 本当にいいんですか?」
「いいよ」
太っ腹な女神様だなあ。
でも……
「そんなに貰ったら悪いです」
「大丈夫。私は一兆円の女神だから、人に一兆円をあげるのが好きなんだ」
「そうなんですか」
「君のようないい人が一兆円を貰ってくれたら、私はとても嬉しい。是非もらってくれ」
迷ったけど、女神様が喜んでくれるなら貰った方がいいのかもしれない。
「じゃあ頂きます」
「うむ。この通帳を受け取れ」
通帳を捲ってみると、0がいっぱいあった。
「いちじゅうひゃくせん……」
数えてみると、本当に一兆円あった。
「すごいですね」
「うむ。自由に使いといい」
「わかりました。本当にありがとうございます」
僕は通帳を持って、一階におりていった。
「お兄ちゃん。一兆円貰えたよ」
でもお兄ちゃんはいなかった。
またパチンコをしに行ったんだろうか。
僕は、どうしようかな。
一兆円があるし、ラーメンでも食べに行こうかな。