俺たちの冒険3
そこには、こんな文章から始まるスレッドが立っていた。
ねえ、知ってる?先月から行方不明になっている先輩の噂――。
――2年の先輩でしょ?大学生と付き合っているっていう。
その先輩。夜に学校に忍び込んで地縛霊を退治しようとしてさ、そのあと行方不明なんだって。
――どうして地縛霊を退治しようとしたのかな?
さあ、理由は分からない――。
――どこに行っちゃったんだろう?
地縛霊に連れられていっちゃったんだよ――。
俺はそっと画面を見つめるKの横顔を覗いたが、Kは気にせず画面を注視している。
「本当に俺たちも学校に忍び込むのか?」
「当然だ。決行する。」
「わかった。もう何も言うまい。せめて装備は整えていこう。」
こうして、現在に至るわけだ。
俺はアルカリの入った霧吹き片手に1Fから教室を見て回る。
しかし、夜の学校は不気味だ。昼間とは打って変わって人の気配がしない静かな廊下に、ペタペタと靴の音が響く。廊下は夜闇によって黒いカーテンが下され、遠くの消火栓の赤い光だけが廊下のタイルを反射して俺の顔を照らす。
(蒸し暑いな・・・)
と俺は思った。非日常な環境に置かれ、感覚が研ぎ澄まされているのかもしれない。
家を出たときも蒸し暑かったはずだが、ここまで不快感を感じなかった。
ズボンの中が蒸れて、太ももが汗ばんでいるのが分かる。
着て30分も時間がたっていないものの、もうすでに帰りたくなってきた。
早く地縛霊ってやつを退治して、早く帰るとしようーー。
俺は、見回り担当として割り当てられた教室の入り口扉に手をかけ、中を覗き込んだ。
(当然、何もない。)
中は変哲もない教室だ。この教室は移動教室であり、生徒の備品も机に入っていない、本当に伽藍洞の教室だ。俺は一応中に入り、何も異常がないか確認を行ったが、特に何も発見することは出来なかった。
(次の教室に行こう。)
そうして、教室を出ようとしたとき、ふとあることに気が付いた。