プロジェクト
あぁそうそう…。
私が壊れた原因で欠かせない存在が横山以外にもあった。
それを紹介しなければ。
その存在を知ったのは横山がきっかけ。
私はその日、他の子達と先輩に呼ばれており暇を持て余していた。
校内を適当に見て回ろうとした4月。
彼女はプロジェクトに所属していたようで、ツナギ姿で現れた。
「あ!悠歌、暇なの?」
「用事がね、4時くらいからだから。」
「ふ〜ん。」
この時はまだ多少仲が良かった。
彼女はちょっと考える素振りをしてにっこりこちらを見て笑った。
「じゃあプロジェクト見においでよ!!」
「…いや、急に行くのは」
「人手足りないみたいだからさ!」
彼女はグイグイ私の手を引っ張り、プロジェクトの部屋まで連れてきた。
彼女は自分が凄いということを自慢したかっただけだろうが、これが横山の地位転落の原因になる。
「…横山、誰それ。」
「前話した森田さんですよ〜」
「あぁ髪の毛の。」
私の話は既に色んなところに広まっていたようだ。
さすがに一切関わっていなかった2年生も知っていたのには面食らったが。
そのプロジェクトは先輩が怖いと言われていた。
1番上は2年生しかいないのだが、なんとも怖い。
しかも我が機械電子工学科の管轄プロジェクトではなく電気工学科管轄プロジェクト。
うちの学科と電気科は仲が悪い。
なにかと難癖つけている。
それも相まってとても怖い。
私は緊張を鎮めるためにポケットに手を伸ばした。
ゴツゴツとしものが手にあたる。
出してみると、ナイフだった。
部室(プロジェクトの部屋)は部外者立ち入り禁止なので入口にいた。
その入口でナイフを見ている。
そのカオスな光景。
「…ちょっ今年の1年こわ。」
こう言われるのも無理はない。
私は横山を受け入れる環境に多少なりと嫌悪感があったので株を落とすことにした。
「えー、普通ですよー。」
「違うよ怖いよ。」
部長と呼ばれた人は私から目をそらす。
顔はぶっちゃけ好みだと思った。
「髪の毛が好きとかも理解できないし。」
「ごめんちょっとどいて」
後ろから声がしたので慌てて避ける。
…良い言い方をして恰幅のいい、悪くてめっちゃ丸い人がいた。
「お、中山じゃん。コイツあの髪の毛の子だって」
「…俺触られるの嫌だから却下で。」
「おら、触られろよ!」
「やめろクソ!」
押さえつけられたが触る気はなかった。
仲良くなりたい人ではなかったし。
まあ付き合い程度に触っといたが。
その行動は正解だったらしく、その後名前を書いてと頼んだらすんなり書いてくれた。
…他にも2年生に書いてもらったが正直覚えていない。
興味は一切なかったし、仲がいい先輩なんて暫くは5年と3年くらいで十分だと思っていたから。
「ありがとうございます!」
ちょっと人懐っこい笑顔を浮かべておいた。
先輩は気を良くしたのか、プロジェクトの参加申請書を持ち出してきた。
「興味あったらこれ書いておいで。」
私は受け取ったが、お断りだと思った。
あまりいい環境ではないのが目で見えてわかったから。
…関わらないと思っていたが。
この時点でもう遅かったのだ。
「お世話になることがあったら、よろしくお願いします。」
「おう。…お前意外と普通なんだな。」
「まあ、ぶっちゃけキャラですし。」
「マジかよ、本気にしちゃったじゃん。」
「まあマジでやらないとバレちゃうので。」
「へー、そういや名前は?」
この時、なにも名乗らなきゃ良かった。
ただの学科が違う後輩ですって。
「森田 悠歌です。」
これが私の敗因でもあるだろう。