私の人生を壊した人物その1。
先輩達と話したその日、私は女性の先輩…継元先輩と連絡先を交換した。
私はアプリを開いてはニヤけた。
初めての先輩、しかも数少ない同性の綺麗な。
とても嬉しかったのを今でも覚えている。
「悠歌ちゃん、顔ニヤけてるよ?」
「アハハ〜、ごめんね。」
同じクラスの子より、先輩と仲良くなる方が早かった気がする。
そのくらい、結構研究室に押しかけに行ってた。
今考えたら申し訳ないが、とても楽しかった。
が、当然それを利用しようとする人も出てくる。
なぜだかわからない。
でも、私の元にそのような人が多く来た。
「悠歌!おはよう!」
…横山香織も、そうだった。
同じ学科の女子。
この子は早い段階から私に話しかけてきていた。
最初は気さくな子だなと思っていたが…。
後の私は、彼女に利用されていたのだと知る。
この時私はとある先輩とかなり仲良くなっていた。
一番最初に誘われたイベントから話すようになった。
おわかりだろうが、私はかなり変わっている。
でもそれには理由があるのだ。
詳しくは言わないが、友達との話し方がわからない。
どうすればいいのかがわからない。
いわゆるコミュ障と言うやつだ。
だから、本当に頭がおかしい行動をとっていた。
イベントの前準備をしていたときに、その行動を起こした。
「先輩…。」
「ん?」
「髪の毛…触らせてくれませんか?」
「ちょっと待てお前どうした。」
私は髪の毛を撫でることでコミュニケーションをとっていた。
これで中学を乗り切れたから。
私はそれ以外の方法がわからなかった。
頭がおかしいでしょう?
嫌われてもおかしくない。
でも、この時は少し上手くいったのだ。
私が話しかけた山崎奏汰先輩はよくからかわれたり、イジられたりするキャラだったらしく周りから
「触らせてやれよ。」
「後輩の頼みは聞きな。」
と、助け舟は出されなかった。
「しょうがねぇなぁ!!!」
やけくそになった先輩は私が触りやすいように屈んでくれたのだ。
可哀想に、本科の最高学年の五年生が入りたての一年生に頭を撫でられるというカオスな状況になってしまったのだ。
その五年の先輩は周りからとても笑われていた。
みんな写真と動画を撮り始め、先輩は少し恥ずかしそうに笑っていた。
一方私は…
「(凄い、なにこの髪の毛…柔らかくて気持ちいい)」
と密かに喜んでいた。
この時から髪の毛を触るためにちょくちょく先輩のもとに通ったものだ。
…話が横道に逸れてしまったから元に戻そう。
横山香織は先輩と仲良くしていると必ず来る子だった。
「悠歌〜!今日は先輩のところ行かないの?」
「え?あぁ行く予定だけど。」
「一緒に行っていい?」
「まあ、いいけど。」
最初の方は快く了承していた。
しかし、学校生活に慣れてくると相談したいこともあり一人で行きたいことが多くなった。
それに先輩たちは卒業研究がある。
機嫌がいい日と悪い日もあって、そういうのを色々考えて行く日は決めていた。
卒業研究がちょっと立て込んでるから来ないでと言われる日も少なくはない。
それでも…
「悠歌、今日もいい?」
「え、今日は先輩達がちょっと…」
「えー、いいから行こうよ!」
「だから…!」
「ほら、行こうよ!」
と、強引に行って先輩たちを困らせる日が少し多くなった。
これでは私が悪く言われてしまう、先輩達に迷惑をかけてしまうと思った。
折角仲良くなったのに、これじゃダメだと。
だから、行くのを控えようと考えた。
「先輩、私ちょっと来るの控えますね〜。」
「あらら、まあそのフェチ治すのもいいんじゃない?」
「考えます…。」
「悠歌ちゃん無理しなくてもコイツの首から上持ってっていいからね。」
「継元姉さん怖いよ!」
「うるさい奏ちゃん大人しく触らさせてなさい!」
「うぃっす…。」
先輩たち本当に優しいなあって思った瞬間である。
仲良くなりたければ、自分から行けばいいのに。
でも、横山はそうしようとしなかった。
なにかにつけて私についてこようとするし、私から先輩の連絡先を無理矢理送らせようとした。
話に割り込んでくるのも多々あった。
なにより一番困ったのは…
「ねぇ、行こうよ!」
「先輩達も卒研忙しいから。」
「もう…じゃあいいよ、スマホ貸して!」
「えっちょっ」
勝手に連絡することだった。
彼女は私からスマホをもぎ取り、あたかも私から連絡したようにみせかけるのだ。
「もう連絡したもんね〜!」
そう言って返してきたスマホには先輩からの了承する意味として捉えられる一文があった。
私は急いで自分が送ったものでは無いということ、謝罪の言葉を送った。
すぐに返信がきて
【大丈夫だよ、実験だけだから。】
ときていた。
私はこの日から、彼女への強い不信感を持ち始めた。
優しさに漬け込んで、忙しい先輩に…。
もちろん、止められない私もいけないのだが。
それでも彼女に不信感を抱かずにはいられなかった。
だがまだここまでは私の許容範囲だった。
彼女はここから先も暴走していく。