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31.ハッピーエンド

 国の大乱から三ヶ月の月日が経った。

 あの後、やはり大きな話題となって国は荒れた。しかしレインクルトも何年も計画していたらしく、その後も動乱もすぐに収まった。

 上層部が行っていた不正が暴露され、姫騎士が騎士をやめ、王が変わった。しかし民の生活が変わる事はないと分かった事も大きいだろう。


 俺たちも、一つ屋根の下で一緒に暮らしていた。


「あ、グレイ。おはよう」


 庭で剣を振るう日課。それは結婚しても変わる事はなく、ただ環境だけが変わった。

 王都に家を買い、そこでハクアとの二人暮らし。その庭で剣を振るい、日が昇って家に入ればハクアの声と朝食の香りが出迎えてくれる。


「ご飯、できたよ」

「いつもありがとな」

「好きで、やってる事だから」


 大好きなお嫁さんと屋根の下で新婚生活。なかなか羨まれる生活だと思う。この幸せを掴むため、大変な道のりだった。

 しかし困難があったから今の生活があるとも思う。まあ結果良ければすべてよしだ。


「今日、お仕事お休み。だよね」

「ああ」


 俺の仕事も語っておこう。俺はハクアの代わりに騎士になった。とはいえまだ一般騎士だ。ハクアと結婚するための身分差も、騎士となって功績を積めば良く一石二鳥だ。

 レインクルト王は俺をハクアと同じ運用をする気はないらしく、一騎士として扱ってくれる。それはよかった。たった一人の戦力に頼る危うさを、彼は理解しているのだろう。


 ハクアは剣を捨て、いつも笑顔だ。最近は家庭菜園を始めて、庭が綺麗になっていく様子はさすがハクアとしか言いようがなかった。


「ん。じゃあ演劇見に行かない?」

「演劇? 何か面白そうなのがあったのか?」

「私たちの話が劇になったみたい」

「え?」


 聞いていない。


「私も最近知った」

「なるほどね。……まあ面白そうだな。行くか」

「うん。楽しみ」


 ハクアと気兼ねなくデートに行ける。それは素晴らしい事だ。とはいえまだ朝早く、出かけるのはお昼ごろになるだろうか。


「じゃあ出かけるまで、のんびりしてるか」

「そうだね」


 食器を片付けたり、やるべきことをやり終えてから二人そろってソファに座る。俺が仕事の時、ハクアはだいたいソファで過ごしているためか、ハクアの私物が一杯置いてあった。


「ん、く。グレイ、好き」

「俺も好き」


 ソファに座ればさっそくどこのバカップルだと突っ込まれるイチャイチャタイムが始まる。

 可愛い可愛いハクアが甘えてくるのはとても好きだが、今だ慣れない。一生慣れる気がしない。心臓はドキドキだ。


「もう、黙ってどこにも行かないでね」

「ああ。行くときは言うよ」

「もー。一か月以上ならついてく」

「嬉しい事言ってくれるな」


 結婚して平和な暮らしを手に入れても、ハクアの依存はあまり変わらない様だ。嬉しい事だが、これも少しずつ改善していくしかないだろう。

 何はともあれ可愛いので良し。


「また泉、行こう」

「だな。またハクアと行きたい」

「新しい水着買うから」

「…………」

「ふふ。心臓、鳴ってる」


 ハクアの水着姿を思い浮かべ、高鳴る心音はすぐさま見抜かれた。

 それにハクアはむふーと嬉しそうな顔をする。可愛い。


「グレイには……いつでも見せてあげる」

「っ……! なんと。女神様?」

「女神じゃない」


 俺の腕の中にいるのは女神様かと思った。いや。俺の女神様であり天使だから間違ってはいない。うん。


 ハクアとイチャイチャしつつ、ふと今の幸せを再確認する。長い道のりだった。結ばれない間だったはずなのに、困難をはねのけて俺たちは結ばれた。


「不思議だな」

「なにが……?」

「ハクアと結ばれる事は無理だって、思ってたのに。奇跡みたいだ」

「そうだね。私も諦めてた。どこか遠くへ逃げるしか、ないと思った」


 遠くへ逃げる。それもありかもしれない。だが掴んだのは、故郷で祝福されながらの生活だ。

 多分どっちでも良かった。ハクアと一緒なら幸せになれた。


「……幸せだな」

「うん」

「とりあえず……ハッピーエンドって事で良いか?」

「ん。いいとも」


 俺たちの人生はこれからだ。まだまだ困難はあるかもしれない。悩むことも、苦しむ事も。楽しい事も、幸せな事も。さまざまな未来の可能性がある。

 でもとりあえず、ハッピーエンドと締めたい。


「ハクアのためにも頑張るぞー」

「私も。がんばる」


 ハッピーエンドであるために、これからも頑張ろう。

 

「グレイ……好き」

「じゃあ俺は、大好きだ」




 姫騎士殺し[完]

●あとがき


 約十万文字でこれにて完結です! 初めての恋愛物という事で書いていて楽しかったし、反省点も見つかったしで書けて良かったです。

 妄想が暴走していつのまにか出来ていて今作、さまざまな人に楽しんでいただけた様でなによりでした。

 最後の方は駆け足気味だったかなと反省。

 後日談などはない“予定”です。(活動報告の方で1000文字程度のおまけSSは更新しています)

 最後になりますが、下部の評価ボタンより評価をいれていただけると今後のモチベーションに繋がりますのでぜひよろしければお願いします。

 では、ここまで読んでいただきありがとうございました。<m(__)m>


 天野雪人

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