3 転生したは良いけれど
「ベレニケ様!ベレニケ様ッ!起きてください!」
「んん〜優香先輩…先輩の言うことを無視してゴメンナサイ…」
「ベレニケ様ッ!ご主人様がお呼びです!」
「んぉ………?」
目が覚めると、彫りの深いお顔立ちをした女性が水瓶を持って私の横に立っていた。
「んん…?あれ?あなた誰ですか……」
「ベレニケお嬢様、私をお忘れですか!?メデイアです!あなたにお仕えするようご主人様から言いつかっているメデイアです!」
メデイア…?古代ギリシアの悲劇に出てくる魔女の名前だ。
それにしても、眠すぎて全然目が開かないし、頭もガンガンして調子が良くない。
「はじめまして、私は白鳥杏奈です…」
「シラトリアンナ…??お嬢様、夜更かしはよろしいですが、異国の物語を読むのはほどほどにしてくださいませ!メデイアがご主人様に叱られてしまいます。」
余りにもメデイアさんの声が悲痛なので、何とかして起きようという気持ちにもなる。
目をゴシゴシとこすってみた。
「だから、ご主人様って誰なの??」
「お嬢様の実のお父上、メガス様でございます!」
おっ、お父さん!?!?
思わずあんなに開かなかった目を見開いた。
「メデイア、ベレニケはまだ起きないの?父様はもう待ちきれないみたいだよ。」
声がする方へ目を向けると、黒髪で透き通った茶色の目をした少年が、部屋へ入ってくるのが見えた。
「ナディアス様、申し訳ありません。お嬢様は少々寝ぼけてらっしゃるようで…」
「僕が起こしてあげようか?」
「起きてます、起きてます!!!」
少年がスタスタと歩いてきて、怯む私を軽々と持ち上げた。
そんなはずは…!最近ついつい食べ過ぎて55キロの大台へ乗ってしまったのに…!
と思った矢先、自分の体のサイズが小さな子どもくらいしかないことに気がついた。
「何言ってるんだベレニケ、お前は食事も惜しんで本を読むせいでガリガリじゃないか。まぁそんなところも可愛いけどなぁ」
ナディアスは私の髪を優しく撫でた。
私……本当に転生しちゃったんだ…!
「ベレニケ、お父様がお待ちだよ。父様も母様も、明日の誕生日パーティーの準備でてんやわんやさ。お前が本以外に欲しいものを言わないから、父様も今年こそは本以外のプレゼントを用意しようと意地になってる。」
どうやら、私の今世の兄らしいナディアスが私のほっぺをむにむにしてくる。
「プ…プレジェント?」
「お前の誕生日プレゼントさ!毎年お前が本ばかりねだるから、僕にもベレニケの欲しいものを探ってこい!なんてお達しがあったんだ。」
ナディアスはむにむにするだけでは飽き足らず、ほっぺたをツンツンしはじめた。
鬱陶しいわお兄様!
「私もご主人様からそのことばかり責められてまいってしまいます。ベレニケ様、この際ですから本当に欲しくなくてもいいのですわ、年頃の女の子が欲しがるものをねだってくださいませ。」
寝起きにいろんな情報を詰め込まれて、私の小さな脳はショートを起こしてしまった。
「えっとえっと!とりあえず、もっかい寝ます!アッ!あとプレゼントはミイラが良いです!メデイア、お兄様、お父様にそう言っておいて!」
混乱しすぎて思わずミイラをねだってしまったが、布団を被った私は意地でもここから動かないという意思表示をした。
……私に整理する時間をください…
「ミイラッ!?ベレニケ様何をおっしゃっているんですか!?」
可愛い妹の言うことでも、さすがにお兄様もミイラをねだる私にびっくりしたようだ。
「ベレニケ、昨日また異国の物語を読んだんだね?まだ夢の中にいるんだろう、お父様にはうまく言っておくから、もう少し寝ておいで。」
ナディアスは、布団をポンポンと叩くと、部屋を出て行った。
メデイアも、ミイラをくれと意味不明なことを言う私を起こすのを諦めて、部屋を出たようだった。
あぁ、私の転生人生どうなるの…?
ナディアスは黒髪、茶色の目、少し暗い肌の男の子。
典型的ギリシア人。15歳の設定
メデイアは17歳の女性。栗色のウェーブがかった髪に、白い肌。ベレニケ付きの侍女
ベレニケは、ヴェロニカに通じる名前です。




