【ラジオ大賞投稿】極太赤縁眼鏡で三つ編みツインテールの女の子の恋日記
「ごめん。それは受け取れない」
2学期始まってそうそう、放課後の校舎外れにある樹木茂るベンチ脇で、極太赤縁眼鏡に三つ編みツインテールの女の子が、両手で手紙を持ち、俺に受け取って欲しいと頭を下げてきた。
名も知らぬ女の子だ。
俺は断りの言葉を告げてその場を立ち去るが、立ち去る時にその女の子の肩が震えていたのが見えて、俺はいたたまれなくなり胃が痛くなるのを感じた。
はぁ~、何で俺?
◆
校門を出た所で友達の金山健流が待っていた。
「愛の告白か?どうした?どうなった?」
金山は半年前の入学式から仲良くしている俺の数少ない友達だ。恋多き少年で、この半年間に出会いと別れを3回繰り返し、今はフリーだ。
「断ってきた」
「はぁ~?だってお前、彼女いない歴=年齢だろ?何でだ?」
「知らない娘だよ? 受け取って責任取れないだろ?」
「責任ってお前……、堅すぎだよ~桐芭は」
「お前みたいに軽くないのでね」
「しゃべってみないと分からない事の方が沢山あるぞ!
お互いに語って語って語り尽くして、それでもまだまだ語れるか、語れないかだ。
桐芭みたいに見切り&悟りで女の子見てたらオッサンになっちまうぞ」
「うぐっ」
金山の言う事も一理ある。人を知るにはお互いが話しをしない事にはお互いを知る事は出来ない。
だからと言って、見知らぬ女の子のラブレターを受け取る事と同義である筈もなく。
「桐芭は女の子からラブレター貰った事とかは有るのかなぁ~?(ニヤり)」
「わ、渡されそうになった事は、何度か有る……。全部断ってるけど……」
「はぁ~。桐芭は無駄にカッコいいだけに勿体無いよな~」
「お前の方が全然カッコいいよ(ムスッ)」
「そりゃ、そうだけどさ~」
肯定かよ。
「ヤッパ、夏に聞いたアレか?」
「い、いいだろ!別に!」
「はぁ~、初恋の君ね~。で君の名は?」
「知らない」
「スマホ持ってタイムスリップ出来る訳じゃ無いんだからさ~、2年も前の事は忘れろよ」
「…………」
2年前の冬、海で出会った女の子、話したのは数分、でも俺はあの子の涙を、別れ際に見せた切ない笑顔を忘れられない……。あの子は今…………生きているのだろうか……。
◆
Diary 9月3日
……お手紙は受け取って貰えなかった。桐芭君は女の子からの手紙を受け取らないって分かってた……。
女の子達はそんな桐芭君を、超硬派でクールなイケメンって言っているけど、私は違う。桐芭君は……。頑張れ芭月!